旧車関連の取材をしていると必ずや聞く「シェベル」というネーミング。だが、筆者的にはこれまでに一度も取材した経験がなく、過去にイベントの展示車としてSS396を見た程度。
だから「シェベルに乗りたい」とインタビュー取材中によく聞くも、その魅力については???であった。
一方で、アメリカ映画を見ていると結構出くわす確率が多いのもシェベルであった。例えば、映画『アウトロー』でのワンシーン。もしくは『JOHNWICK』や『ワイルドスピード』etcにおいても。
要するにメジャーな主人公の愛車やカーチェイスで使われるハードなマシンとして度々重要なシーンでの一役としてスクリーンに登場してくるのだ。
そんなシェベルを初めて取材。個体は1969年型シェベルSS。搭載エンジンは327のV8に3速ATの組み合わせ。
まずはシェベルであるが、1964年に初代モデルが登場。そして1968年に二代目へモデルチェンジしている。
で、取材個体は69年型であるが、とにかくデザインが素晴らしい。丸目4灯ヘッドライトに逆スラントにカットが入ったフロントマスク、わずかに峰の立ったボンネットフード中央部分、そしてリアにかけての抑揚の強いデザインとフェンダーの美しさが際立っている。
旧車で丸目4灯といえばダッジチャレンジャーを連想するが、個人的にはシェベルの圧勝である。とにかく美しく品がある。
過去に見たSS396にはレーシングストライプが入っていたし、映画で見たシェベルにもレーシングストライプが入っていたが、この日見たボディラインの美しさを知ってしまうと、あえてそんなにハードな仕様にしなくても十分に魅力が伝わるのになと思ってしまったのだが、いかがだろう。
ちなみに、71年型からヘッドライトが丸目2灯にフェイスリフトしてしまうから、デザインやパフォーマンスを含め、市場では68、69、70年型の人気が非常に高いのだという。
くわえてダークグリーンのボディカラー。聞けば純正カラーというから、これまた素晴らしい。そしてよく似合う。
この個体のオーナーさんによれば、お父様が69年型マスタングを所有していたらしく、その時のドロドロとしたV8サウンドがずっと記憶にあったという。その影響によりシェベルを探され、純正カラー&327エンジン搭載モデルを探し、アメリカから輸入したのだと。
ちなみに、搭載エンジンにビッグブロックではなく、あえてスモールブロックを選んだのは、発熱をできるだけ抑えオーバーヒートを気にせず走れるようにしたかったためということだ。
要するに、憧れを実現すると同時に、日本において「ちゃんと乗れる」ことを前提条件として実践可能な個体を選んだという。
そして購入後すでに7年以上が経つが、その間にヴィンテージエアー(エアコン)、ダコタデジタルメーター、リモート開閉鍵、3点式シートベルト4席分、バックセンサーアラート、ブルートゥースオーディオ等を新たに装備。
タイヤもBFグッドリッチではなく、ミシュランの最新モデルに換えるなど、ヴィンテージカーとしての雰囲気だけでなく、移動の道具としても不自由さを感じることなく、また搭乗者の安全にも配慮しながら普段の足として使えるクルマになっている。
また大型ラジエーター、電動ファン、エンジンルームの中のファンカバーを取り付けるなど、冷却にもかなり手を入れ、気温35度の真夏に東京の渋滞でエアコンを最大にしてもオーバーヒートせずに走れるマッスルカーである。
こうした整備は2年ちょい前くらいからエイブルにて行われ、走る曲がる止まるといった基本性能の維持もエイブルにて行い、結果この7年で路上や自宅で動けなくなったことは一度もなかったというから流石である。
ちなみに、エイブルの原さん曰く「かなりの上玉ですよ。ボディもキレイだし、メカニカルな部分での死角もないですし」
と言うことで、軽くだが取材&試乗が許された。冒頭にも書いたが、とにかくデザインが美しい。旧時代のアメ車といえば、馬鹿でかい直線基調のデザインが多いという認識だが、この時代のシェベルに関していえば、全く異なる。
とにかく流麗で、ボディラインの抑揚があり、いわゆるコークボトルラインのセミファストバックスタイルが絶品である。
くわえて適度な車高とアメリカンレーシングホイールが非常に良くマッチしており、同時にボディ各部のコンディションがこれまた絶品だから、そしてマフラーサウンドが絶妙で(野蛮ではない適度なアメリカンV8サウンドを奏でる)、本当に上品なクーペであるから、これ以上の言葉が出ない。
撮影していても道行く多くの方々に声をかけられたから、筆者と同じように、一瞬にして「素敵だな」という印象を抱いたに違いない。
で、実際の走りだが、これまた絶妙な印象だった。ステアリングは旧車特有の軽々したものだが、ブレーキはフロントディスクブレーキになっており想定以上によく効き、ダンピングもしっかり調整されているから、よほど無理なハンドルさばきをしなければ、全く普通に走る。
特筆だったのがインテリアで、各部にきしみ音が全くせず、驚くほどしっかりがっちりしていたから、これまた旧車の趣を全く感じることなく楽しめた。
エンジンも一発で始動し、まるでインジェクションかと思わすほど安定しており、旧時代のキャブレター車に乗っているという緊張感が全くない。その際、ウインドーを開けて走っていると快音が聞こえてくるから、「これぞアメ車」を感じながら悦に浸ることが可能であった。
恐らく、この状態まで持って行き、それを維持している時点で相当な額の出費をしていると思われる。が、同時に「適切な個体に必要十分な整備を注ぎ込めば、ここまで普通に走り安定し、そして楽しい」ということをこの個体は教えてくれるのである。
ということで、初のシェベル取材は、ある意味最高レベルの個体であったと言っても過言ではないのである。
なお、この個体、オーナーさんが家族構成の変化により乗り換えを検討しているらしく、もしかしたら売却されるかもしれない、ということだから、興味ある方がいたらエイブルに問い合わせてみるのも良いかもしれない。
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