SRTとは「Street and Racing Technology」の略で、クライスラーのロードカーとしては最高峰に位置するモデルに与えられたもの。メルセデスベンツとAMGの関係に近い存在といえばいいだろうか。ダッジラムやダッジバイパーに搭載されるV10エンジンと、今回紹介するダッジマグナムやクライスラー300Cに搭載されるV8エンジンの2種類にSRTが設定される。
エンジンパワーの大幅アップに伴い足回りやブレーキにも強化品が奢られており、いわば自動車メーカー純正のチューニングカーである。パフォーマンスアップもさることながら、大メーカーが膨大な費用と労力を費やして煮詰められたクルマだけに、極めて高い信頼性を誇るところも大きな魅力となっている。
半球形の燃焼室を持つことが名前の由来となった5.7リッター「HEMI」エンジンの排気量を6.1リッターまで拡大。425馬力を得るに至った最強のアメリカン・V8エンジンのひとつ。
ノーマルのHEMIエンジンでも怒濤の加速力と絹のような滑らかな回転フィールを味わえるのだが、上には上があるという言葉の見本のようなエンジンだ。アイドリング領域では高級サルーンのユニットのように静かに回り、ひとたびスロットルを踏み込めばドラッグレースカーのような爆発力を発散させてボディをワープさせるかのような加速感を約束してくれる。エンジンだけでも数百万円の価値があると思わせるほどだ。
SRT8-を運転しながら「日本はなんて狭いんだ!」という憤りを禁じ得なかった。巨大なフルサイズSUVに乗っている時よりもはるかに日本の道路が狭く感じさせられたのだ。
わずか数秒でとんでもない速度域に到達してしまうのだが、驚くべきことに、これほどのパワーをもってしてもシャシーの容量にはまだまだ余裕があることを感じさせられる。暴力的な加速力をしっかりと受け止め、それを余すことなく路面に伝える足腰の強靱さたるや、もはや異次元の世界である。
インテリアは基本的にオリジナルの状態をキープ。ただし、フロントシートだけは特別製のレザー・バケットシートが奢られる。サーキットレベルの走行にも十分タイプできるホールド性を備えており、装飾品を多用して見ための変化をつけることよりも、「走行性能重視」の姿勢を強く感じさせる。そんなところもSRTシリーズの大きな特徴だ。
また後席空間や荷室のユーテリティ機能などは標準車のまま活かされているので、ワゴンとしての実用性はなんら犠牲になっていないところも嬉しい。普段はシレッと道具的に使いながら、イザという時はスーパースポーツカー並みの走りを披露すれば、招かれたゲストは肝をつぶすだろう。乗り心地は驚くほど良好なので、ジェントルな運転にも応えてくれる懐の深さも備える。
20インチホイールのメーカー純正採用はジャガーのXKRに次ぐ採用で、当時では極めて稀な存在。路面からの当りは多少強くなったが、存外に快適な乗り心地を提供してくれる。
控えめなマフラーは、スロットルペダルを踏み込むと高周波を伴ったズ太いアメリカン・サウンドをまき散らす。ガソリンが続く限り未来永劫いつまでも踏み続けていたくなるような刺激的なサウンドである。
フロントのチンスポイラーやグリルは専用品に交換されているが、 インテリアと同様に外装の変更点はごくわずかに止まる。これも「走行性能重視」の現れであり、20インチのホイールやその奥に光るブレンボ社製の4ポッドキャリパーが高性能さを雄弁に物語っている。世界最速ワゴンの一台である。
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