この型のシルバラードは、2007年に登場し、2010年からわずか1年のみ、三井物産が正規車両として扱い始めたモデル。当時のシルバラードは「LS エクステンドキャブ4WD」の4.8リッターV8搭載モデル(6人乗車の4速AT)が輸入されていた。
だが今回取材したモデルは、2ドアレギュラーキャブの3人乗りで、5.3リッターV8搭載(6速AT)の2WDモデル。つまり、一番小さいボディにオプションとなる大排気量エンジンを搭載した、レアなホットモデルということになる。
ちなみにこの型のシルバラードには、4.3リッターV6、4.8リッターV8(ここまで4速AT)、5.3リッターV8、6リッターV8(ここまで6速AT)、6.6リッターV8ターボディーゼルの5種類のエンジンが搭載される。
シボレーシルバラードは、1999年に登場した2000年モデルのC/Kシリーズの後継モデルとして登場した。デザイン自体はC/Kシリーズのイメージを引き継いだ物となったが、ボディは丸みを帯び、ベースプラットフォームはT800系だった(右写真赤いトラック)。
この時代のシルバラードは、丸みを帯びたデザインが災いしてか、日本ではパッとしない印象だ。この時代の後期型として2005年から登場する、いわれるツリ目型にマイナーチェンジされたモデルには「SS」が設定されるなど、パフォーマンスに関しては目覚ましい向上を見せたが、日本での人気は意外にも低迷していたと言わざるを得ない。
2007年のモデルチェンジで登場したこの現行型シルバラードは、タホやサバーバン同様にプラットフォームがT900系に進化している。また見た目のデザインが、原点回帰ほどではないにせよ、「再びC/K時代!」を彷彿とさせるような角張ったスタイルになっている。
クオリティが格段に上がり、C/K時代の雰囲気を若干取り戻した、新世代のGM製トラックは、果たしていかに?
その昔、いわゆるC/Kシリーズやタホ、アストロなどが日本で全盛だった時代には、かなりのC1500に乗せていただいた。基本的にはカスタムされたものがほとんどだったのだが、中でも走り系のチューニングが施されたトラックにはかなりの興味を持った。リアが荷台のトラックなのに、なぜ走りが楽しいのだろう?
一方で、アメリカ的な使い方を主とするオーナーさんにも、かなりの数出くわした。荷台に物が乗せられる気楽さ、そしてアメリカ製トラックの雰囲気と耐久性。そんな魅力に取り付かれたオーナーさんたちは、今でもC1500を愛しているというから、すごい。
だがその後に登場する丸みを帯びたシルバラードからは、日本での状況も一変した。ぱったりと見なくなった。単純にデザインから惹き付ける魅力が乏しくなったのが原因だと思われるが(しかも高価だった)、クルマ自体の性能は年々向上していただけに残念でならない…。
今回試乗した2010年型のシルバラードの第一印象は、これまでの旧シルバラードとはまったく異なる、非常に良い物だった。C/K時代ほどの気兼ねなさみたいなものがないのはちょっと残念だが、逆にトラックらしからぬ高級オーラを発し、外装の質感も高く、ボディパネルのチリも完璧で、タホに似た角張ったフロントマスクが非常に好感。昔なじみの無骨で男らしい雰囲気とはいかずとも、ちょっとサッパリ系だが、かなり硬質で硬派な印象を醸し出す。
正直、旧C/Kシリーズの直後にコイツが登場していれば、時代は変わっていたかもしれないなぁ、そんな気がするほどカッコいい。
しかもコイツは2ドアのレギュラーキャブという、見た目のバランスが一番いいモデル。グレードがLTなので、インテリア装備がそれほどでもないが、それでも個人的にはベストバランス! と断言したい。しかもオプションの5.3リッターエンジン&6速AT搭載モデルである。
●全長×全幅×全高:5222×2029×1867ミリ
●ホイールベース:3023ミリ
●搭載エンジン:5.3リッターV8(326hp、トルク348lb-ft)
基本的にはフルノーマルに近い状態を維持しているが、この撮影のためにFOOSE 22インチアルミを装着してくれた(ノーマルホイールもあり)。トノカバーは巻き上げ式のものとなっており、それ以外はノーマルのまま。走行距離は4万1000キロ弱。シートやステアリングなどに使用感はまったくなく、驚くほどキレイな車両である。
スペックなどの数字を見ると結構デカイなぁという印象だが、実際に乗ってみるとそれほど苦になるようなことはない。ドライバーの視線からフロントの両隅がはっきりと確認できるので、かなり扱いやすいのだ。さらにリアも両隅が確認できるから、5メートルを超えるという数字ほどの大きさは感じない。
私事だがここ数ヶ月、タンドラやセコイアに乗る機会がかなりあり、アチラはドライバーに、見た目通りの大きさを感じさせる車両であったがために、余計に扱いやすさが際立ったのだろう。
インテリアは、同じく2007年に登場したタホに通じる物であり、グレードによる差異はあれど、ステアリングからシフト、その他コントロール系の操作に至るまで、すべてのタッチと質感が向上しており、安っぽさが微塵もないのが特徴である。さらにベンチシート&コラムシフトが、往年のアメリカ系トラックの雰囲気を醸し出す。
エンジンを始動させ、いざ発進。走り出して気付くのが、以前のようなトラック的な緩さや曖昧さがまったくないことだ。逆にシッカリ感が増した感じで、非常に骨太な乗り味。ここ最近乗った比較対象としてタンドラを取り上げるならば、もちろん彼らの出来の良さを分かった上で、全体的な骨太感は、やはり本場の本物に一日の長があると感じる(単なる剛性感では、タンドラの方が上回っている感じもするのだが…)。
エンジンも300hp以上のパワーを有し、低速からのトルクも豊富。もともとハンドリングなどにこだわる車両ではないにせよ、一般道や高速道路を主とする普段使いに関しては、まったく違和感はないし、かなり軽快。
過去に体験した、三井取り扱いのエクステンドキャブでは、ここまでの軽快さを感じたことはなかっただけに、レギュラーキャブのホイールベースの短さが効いているのかもしれないし、もっと言えば、現行タホに通じる、欧州SUVに匹敵する現代風の走りが体感できる。さらにこれをベースにいじれば、もの凄いマシンが出来るはずだ!
正直、過去のC/Kシリーズに通じる味はほとんどなく、逆に良過ぎて、高級過ぎて面食らうほどの走りが体感でき、気楽に物を放り込むのを躊躇わせるような雰囲気すら感じさせる高尚な現行シルバラード。だが、ラダーフレームに大きなボディを載せ、エンジンを縦に置き、V8をドロドロ言わせることがまだ叶う時代の最後の産物として(そろそろ末期に違いでしょう)コイツを手に入れて、C/K時代さながらの使い方をしてみたい、そう思わせるほどの魅力を十分に備えている。
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