まず我々の目を引いたのは、その佇まいの美しさだ。
昨今のビンテージ・アメリカン、特にホットロッドやマッスルカーの世界では、ド派手な外装モディファイや現代的な大径ホイールを履かせたモダンスタイルも人気だが、このグランプリのアプローチは真逆、かつ極めて知的である。
1963年に縦型4灯式ヘッドライトを採用して完全に人気を定着させ、翌64年にさらなる洗練を遂げた初代グランプリ。その象徴とも言えるシャープな縦目マスクや、伸びやかでエッジの効いたフルサイズ・クーペならではのボディラインは、当時のオリジナルスタイルが完璧に維持されている。一見すると「極上のサバイバー(当時モノ)」と見紛うほどの美しさだ。
しかし、ひとたび中身に目を向ければ、現代の日本のストリートをストレスなく、かつ最高にエキサイティングに駆け抜けるためのアップデート=レストモッドが惜しみなく施されている。
心臓部に鎮座するのは、NASCAR由来の血統を持つ389立方インチ(約6.4リッター)V8エンジン。そこに、マニア垂涎の「トライパワー(2バレル×3機)」キャブレターをドッキングし、330馬力仕様へとスープアップ。メカニカルな吸気音とともに、踏み込んだ瞬間に湧き上がる極上のトルク感を味わえる仕様となっている。
さらに驚くべきはドライブトレインの近代化だ。
ミッドセンチュリー感あふれるウッドパネルやスケルトン・ステアリング、独立したタコメーターが並ぶリッチなコックピット。そのセンターに生えるコンソールシフトは、オリジナルの4速マニュアルから、現代の定番であるTremec製TKX 5速マニュアルトランスミッションへとコンバートされている。
クラッチには踏力と繋がりを両立した遠心タイプのCenterforce製を採用し、リアエンドには4.10:1のファイナルギアをセット。これによって、フルサイズ巨体をものともしないダイレクトな加速感と、高速巡航時の静粛性・信頼性を高次元で両立させているのだ。
オリジナルへの深いリスペクトをベースに、走りの要所だけを確実に引き締める。この絶妙な塩梅こそが、大人のアメ車乗りに向けたレストモッドの最適解と言えるだろう。

そして、この原稿を執筆するうえで、どうしても声を大にして言わなければならないポイントがある。それが、この車両の「価格設定」だ。
これだけ隙のないレストモッドが施され、内外装ともにショーカークオリティを維持している個体でありながら、提示されたプライスは車両本体価格998万円、支払総額1028.5万円。
カスタム内容だけでも、Tremec 5速ミッションへの換装やトライパワーのセットアップ、足元を飾る希少な純正オプションの8ラグアルミホイール(冷却効果を高める革新的な設計とルックスを両立したレアパーツ)の装着など、個別に手を入れていけばそれだけで莫大な費用と時間が吹き飛ぶメニューばかりだ。
昨今の世界的なビンテージ・アメリカン相場の高騰、および為替の影響を鑑みれば、このクオリティの車両が支払総額1000万円強で手に入るというのは、ハッキリ言って破格、バーゲンセール以外の何物でもない。
「アメ車を文化として日本に定着させたい」というインポーターの意気込みと良心が、この非の打ち所がないプライシングに表れており、我々メディアとしても一人のファンとしても、この姿勢に最大の敬意を表してアワードを進呈したかったのである。

最後の理由は、このクルマの「キャラクター」そのものにある。
日本でビンテージ・アメリカンといえば、どうしてもマスタングやカマロ、あるいは同じポンティアックであればGTOやトランザムといった「超メジャーどころ」に人気が集中しがちだ。もちろんそれらも素晴らしい車たちだが、その陰で、こうしたニッチで最高にクールなフルサイズ・クーペが国内で見過ごされてしまうのはあまりにも惜しい。
マッスルカーほどの荒々しさはなく、ラグジュアリーカーほど大人しくもない。当時、目の肥えた大人がこぞって愛した“紳士のGTカー”こそが初代グランプリである。
点灯して初めてそれと分かるリアの「ヒドゥンテールランプ」に代表されるような、1960年代のGMデザインの黄金期を体現したディテールは、今見ても息をのむほどスタイリッシュだ。
このような、国内にはほとんど輸入されていない希少モデルを本国からハントし、完璧なコンディションに仕上げて日本のファンに提示する。そのセレクトの妙、そしてベテランホットロッダーたちを唸らせるニッチな存在感。これこそが、今回このグランプリがアメ車ワールド賞に輝いた最大の理由である。

派手なカラーリングや、一目でわかるリフトアップといった分かりやすいカスタム車が並ぶ中、この1964年型ポンティアック・グランプリが放つオーラは独特だった。
本物のスタイルを知り、走りの楽しさを諦めず、それでいて手の届く現実的なプライスで夢を見せてくれる。まさに古くからのアメ車ファンの理念をそのまま形にしたような、奇跡的なバランスの上に成り立つ1台だ。
現在、この車両はBUBU横浜にて展示中だが、日本のアメ車シーンの底深さを証明してくれるようなこの名車、我こそはという「分かっている」オーナーの元へ嫁ぐことを、切に願ってやまない。
110,000円
EXTERIOR
ガレージダイバン
110,000円
ELECTLICAL
ガレージダイバン
20,000円
EXTERIOR
ANNIVERSARY(株式会社ARK)
2,000円
EXTERIOR
ANNIVERSARY(株式会社ARK)