更新日:2011.05.27
文/田中享 写真/
ここからは中古車の種類について解説しますが、先の新車の解説ほど詳しくは書きません。中古車購入については、注意ポイントが多く、またそれらが複雑に関連しているので、一気に説明しようとすると膨大な文章量になってしまうからです。
中古車購入時の重要ポイントについては、回を変えて項目ごとに解説していく予定なので、今しばらくお待ちください。
A:新車
(Aー1_正規輸入車)
(Aー2_並行輸入車)
B:中古車
(Bー1_正規輸入車の中古車)
(Bー2_新車並行輸入車の中古車)
(Bー3_中古並行輸入車)
(Bー4_中古並行輸入車の中古車)
(Bー1_正規輸入車の中古車)
これは先に解説したAー1の正規輸入車が日本で中古車となったものです。
高年式の車両であれば保証期間が残っているものもありますし、履歴のはっきりした個体が多いので、感覚的には普通の国産の中古車と大差ありません。その分、価格はアメ車の中古車の中では最も高くなりますが、アメ車の場合は一部の車種を除いて、中古車になってからの値落ちの速度が早いので、相対的に見ると欧州車や国産車の中古車よりも買い得感はずっと高いと言えます。
平均的な程度と価格のバランスを考えると、アメ車を初めて買う初心者に最もオススメできるのは、この正規輸入車の中古車と言えるかもしれません。
(Bー2_新車並行輸入車の中古車)
これは先に解説したAー2の新車並行輸入車が日本で中古車となったものです。
Bー1ほどではありませんが、これまた履歴がはっきりした個体が多く、程度もそれなりの状態を保った個体が多いので、比較的安心して購入できる中古車と言えます。
唯一注意しなければならないのが、ごく稀ですが、中古並行車であるにも関らず、新車並行車の中古車として販売される車両が存在する場合があるということです。
アメリカの場合、年度の途中で翌年モデルの新車が販売されますが、その環境を悪用し、アメリカ国内で半年から1年くらい使用された中古車のメーターを巻き戻し、それを新車並行車と偽って日本に輸入する悪徳業者も存在します。そういった偽りの新車並行車は、カーファックスやオートチェック(この2つはまた改めて解説します)の存在が日本でもポピュラーになったお陰で最近は減っているとは聞いていますが、完全に消滅したわけではありません。そして、それらの偽りの新車並行車が日本で中古車となった場合、走行距離の割に調子が悪いとか、オルタネーターやタイミングベルト、ウォーターポンプやフューエルポンプといった「そんなに早く壊れる?」といった部品が早々と壊れてしまう個体も存在します。
運悪くそういった個体に当たってまう確率は相当低いと思われるので、それほど気にする必要はないかもしれませんが、一応知識としてそういった個体も存在するということは覚えておいてもいいでしょう。
(Bー3_中古並行輸入車)
アメリカで販売され、アメリカで使われていた中古車を日本に輸入してきたのが中古並行輸入車です。
かつて「アメ車は壊れる」という悪評が広まったのは、この中古並行輸入車が原因と言っても過言ではないでしょう。
1980年代の後半から1990年代にかけて、カプリス、アストロ、C1500、サバーバン、トーラスワゴンといったアメ車が日本で流行したことがありましたが、当時はアメリカで30万kmも40万kmも走行した中古車のメーターを巻き戻し、ろくな整備もしないまま日本で販売した業者が数多くいました。
当然ながらそれらのクルマはユーザーの手に渡って間もなく壊れることになり、そういった悲惨な体験をしたオーナー達が「アメ車はすぐに壊れる」と言ってクルマを手放したのが先の悪評の大きな原因となったのです。
もちろん、中古並行輸入車の全てが壊れるわけではありません。それどころか、中古並行輸入車の中にも極上車は存在します。例えば、アメリカでマニアが大切に保管していたクルマを良心的な日本の業者が買付け、しっかりと整備をしてから販売したような車両は、下手な正規輸入車の中古車よりもよっぽど程度が良かったりします。とくに旧車の世界では、そういった極上中古並行輸入車も少なくありません。また、そこまでいかなくても、真面目なアメ車ショップが日本に輸入して販売する中古並行車は、年式相応、価格相応の程度は普通に期待できます。
要するに「アメ車だから壊れる」「中古並行輸入車は危ない」というのは完全な誤解であり、壊れるのが当然のような粗悪な中古並行輸入車を販売していた悪徳店がかつて存在した。そして、そんなクルマをそうと知らずに値段に釣られて買ってしまった不勉強なユーザーが存在した、というのが正解なのです。
もっとも、だからといって中古並行輸入車に全く問題がないとも言えません。アメリカには日本の車検に該当する制度がないので、クルマの修理やメンテナンスはユーザーの自己責任において行われます。
現在では所有権証明書(ピンクスリップ)を確認したり、カーファックスやオートチェックなどのサービスを利用することで、中古並行輸入車でもアメリカ時代の履歴をある程度確認できるようになりましたが、そのクルマがどういった環境でどのように使用されていたかを100%正確に知ることはできません。
また先にも書いた不正なメーターの巻き戻しを行うような悪徳業者が完全に絶滅したわけでもありません。当たり外れという意味では、正規輸入車の中古車よりも外れを引いてしまう確率が高いのは確かでしょう。
アメ車に限ったことではありませんが、中古車購入において「良いものを安く買う」というのはユーザーの理想かもしれませんが、現実的ではありません。「良いものは高いし、安いものは安いなり」これが現実であり、中には「高いのに悪い」ものだって存在します。
私の個人的な見解になりますが、中古並行輸入車にはごく稀に『超お買い得』といった車両に出会える『夢』がある代わりに、外れを引いてしまうリスクは覚悟しなければならない。→ただし、そのリスクは優良なショップに依頼することで軽減できる。→しかし、初心者にはショップの良し悪しを判断することはできない。→ということは、ある程度の知識と経験があるベテランにとっては美味しいけど、初心者には少しハードルが高い。中古並行輸入車というのはそんなイメージになります。
(Bー4_中古並行輸入車の中古車)
ここで言う中古並行輸入車の中古車とは、中古並行輸入された車両を最初のオーナーが手放し、それがまたアメ車ショップの店頭に並んだものを指します。
基本的にはBー3で解説した中古並行輸入車の流れにあるものですから、本来であれば中古車の分類はBー3までで十分です。それを何故わざわざこのBー4を付け加えたかというと、ごく少数ではありますが、このBー4に分類される車両の中に、かなりお買い得な車両が存在するからです。それはどういうものか?
先のBー3の所で解説した通り、中古並行輸入車の中には不正にメーターを巻き戻した粗悪な車両も存在します。そしてそれら粗悪車の多くは、何かトラブルが起こっても、完全に修理されることはなく、その場しのぎの応急手当でごまかしながら乗られたあげく、最終的には廃車処分される運命にあります。普通の人は、安く手に入れたクルマに高い修理代は出さないからです。
しかし世の中には我慢強く、かつクルマに愛情を持って接する人間も存在します。明らかに程度に問題があると思われる中古並行輸入車を購入したにも関らず、どこかに問題が発生する度に、信頼できるアメ車ショップで辛抱強く修理を続け、それを繰り返すうちに悪い部分が全て改善されてしまったというパターンのクルマが、ごく稀に存在するのです。
私の知っている例で言えば、車両本体価格158万円、総支払額約250万円という中古並行の1996年型アストロ・ローライダーを購入した某オーナーさんは、エアコンから始まり、足回りのガタつき、マフラーの排気漏れ、触媒、O2センサー、パワーウインドーモーター、フューエルポンプ、プラグコード、デスビ、ヒーター、エンジンのオイル漏れ、ミッション滑り、etc。次から次へと襲ってくるトラブルにもめげず、足掛け5年、総額200万円を超える修理代を払いながら愛車に乗り続けた結果、愛車は見違えるように調子が良くなり、私が知っている限り最も程度が良い部類のアストロに変貌を遂げさせることに成功しました。
その方は数年前にそのアストロを下取りに出してキャデラック・エスカレードに乗り換えたのですが、その際の下取り価格は35万円でした。いくら調子が良くても、走行不明扱いの中古並行輸入車ですし、当時のアストロの中古車の市場価格を考えれば、その35万円という金額は決して安いわけではありません。しかし、彼がそのアストロにかけた金額とその時のクルマの程度を考えれば、爆安価格と言っても差し支えないでしょう。おそらく、そのアストロを買い取ったお店は60万円前後のプライスで販売したと思うのですが、このアストロを60万円+諸経費で買った次のオーナーは、素晴らしくお得な買い物をしたということになると思います。
今の例は少し極端ですが、実は現在の中古車マーケットには、とりあえず壊れるところは全部壊れて、一通りの修理が終わっているという個体。これを業界用語では「一巡した」というのですが、そういった「走行不明で元は粗悪な中古並行輸入車だけど、現時点の程度は決して悪くない」といった車両が、かなりお買い得なプライスタグを付けて販売されていることもあるのです。
もちろんこの中古並行輸入車の中古車の中には、安いだけで程度は最悪とか、値段相応とか、そういった個体の方が圧倒的に多いのですが、時間を十分にかけて、足も使って数少ないお買い得車を探す価値は十分にあると思います。
【中古車のまとめ】
アメ車の中古車と一口に言っても、様々なパターンが存在することが分かっていただけたと思います。それぞれに一長一短ありますし、予算や時間といった問題は人それぞれ違いますから、どれが一番といったことは一概には言えません。ただ一つ言えるのは、中古車というのは新車と違って、同一年式の同一車種でも1台1台全部程度が異なるということです。程度が違えば値段が違うのは当然だし、逆に値段が同じだからといって程度が同じとは限りません。
また、中古車の場合、整備費用や納車費用、保証などのアフターサービスの内容は販売店によって千差万別です。広告に掲載されている車両本体価格が同じくらいでも、総支払額が大きく違う場合もあります。中古車を購入する場合、それが正規輸入車の中古車であれ、中古並行輸入車であれ、とにかく数多くの台数を見て比較検討すること。これが重要になってきます。
この企画の性質上、とりあえず知識として中古車の種類を解説しましたが、実際に中古車を購入する場合、重要なのはそういった種類などではなく、その個体の程度であるということを忘れないようにしてください。
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