意外かもしれないが、戦前から戦後にかけてのクライスラーは技術主導型のメーカーだった。34年にはいち早くデザインに空力を取り入れた“エアフロー”を送り出しているし、油圧パワステも彼らが世界で初めて51年に商品化した。
同じ頃クライスラーが、先進テクノロジーとして世に送り出したのが“ヘミ”だった。
ヘミとはヘミスフェリカル・コンバスション・チャンバーの略で、日本語では半円球燃焼室となる。それは理想的な燃焼を実現するとされたカタチだが、このカタチにするにはDOHCか、少なくともSOHCでなければ無理というのが当時の常識だった。欧州車でもBMWが3シリーズの祖先“1500”用の直4SOHCで、やっと60年代に入って市販化しているくらいだ。にもかかわらずクライスラーは、凝った動弁系設計によって、OHVにもかかわらずそれを実現したのである。
このヘミは60年代中盤には7リッターの究極版まで登場して、ダッジ・チャージャーなどの中型車に乗せられ、マッスルカー全盛時代の立役者となっていく。
そんな伝説のヘミの現代版が、このSRT8用の6.1リッターV8である。マッスルカーの一般的イメージや、6.1リッターV8OHVというフォーマットからして、大概のひとはアクセルを踏み込んだとたんにケツを蹴飛ばされるようにダッシュする様を思い浮かべるかもしれない。しかしSRT8の発進は意外にも穏やかだ。それが2500rpmくらいを境に、溢れるようなトルクの洪水に変わっていく。車速はそのあたりから本格的に伸びだして、永遠に思えるほどの加速感をドライバーは味わって陶然となる。ご存知のとおり300Cのシャシーは先代Eクラスのものを使う。ベンツ史上随一のハンドリング志向だったそれが、6.1リッターヘミの加速力を受け止める。
往年のマッスルカーは200km/hオーバーの領域に棲んでいた。SRT8は、いまや忘れられたその事実を現代人に教えてくれる。
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