1990年代後半から2000年前半にかけて起こったアメリカンSUVの大革命。それまでアメリカ特有の乗り物だったSUVが、欧州車にも飛び火し、各メーカーから矢継ぎ早にニューモデルが登場した。
それによって、アメリカンSUVにも好影響がもたらされ、そして洗練され、それがまた新たな魅力となってラグジュアリーSUVといったニューカテゴリーを生むまでに一気に成長した時代である。エスカレードやナビゲーターの登場である。
そうした流れの中からデビューしたミドルクラスSUV、ダッジデュランゴもこれまでの常識をことごとく覆し、ある種の革命をもたらした。それによって、日本でも一大ブームが巻き起こったのである。
そんな初代デュランゴは2003年まで生産され(98〜03年型までの6年間生産されたモデル)、04年から2代目モデルに生まれ変わったが、日本ではいまだに初代の人気が高い。
生産終了してすでに約18年が経ち、初代デュランゴのメインマーケットとなった2000年、2001年あたりの年式だとすでに20年以上前のモデルになっているにもかかわらずだ。
その理由のひとつが、いまだに当時のコンセプトを越えるSUVがあまり登場していないことがあげられる。
日本の道路事情にマッチしたミディアムボディに、固有のアメリカンV8を搭載、さらにダッジ特有のイカツさを備えたスタイル等…。すなわち、アメ車に求める理想像のすべてが詰まったSUVこそ、初代デュランゴだったわけである。
さらにもうひとつ。初代デュランゴが登場した1998年当時のアメリカンSUVとは、まだ直線基調の無骨なデザインが主流を占めていた時代であって、丸みと抑揚あるラインを引っ提げて登場した流麗なるデュランゴのデザインは、まさしくマッスルそのものであり、当時の感性では「二世代ほど先を行っている」と業界中から賞賛されていたのである。
だから二世代先を行っていたからこそ、20年経った今見ても、ついに時代が追いついた(?)からか、あまり古臭さを感じることがないのである。
たとえば、角張ったボディの90年代タホスポーツなんかは、今見るとある種の郷愁を覚えるほどの古さを感じさせるが(良い意味で)、デュランゴは今見てもあまり古さが感じられないのは、そうした登場時の先進性によるものなのだろう。
だからこそ、いまだにデュランゴに乗りたいと思っているオーナーがいることと、また長く乗っても古くならず、しかも豊富なアフターパーツで少しずつ手を加えることで維持が可能というわけである。
そうした初代デュランゴでありながらも、キャロルシェルビー氏が開発に加わったSP360仕様となっている取材車両は、かなりのレア車ということになる。
取材したデュランゴSP360は2001年モデル。5.9リッターV8エンジンを搭載しているモデルがベースとなっているが、K&Nの吸気システムやビッグスロットルボディを組み合わせ、その後へダースを装着して濃密なるV8サウンドとスポーティカーのような吹け上がりを実現している。
目指すは、アメリカンSUVからマッスルSUVへの進化である。
もともと245hp程度のV8だったが、生まれ変わったレスポンス良好なエンジンは、思い通りの加速力を見せつけ、SP360仕様の程良く引き締まった足回りはロールを抑え、常に安定した挙動姿勢を保ってくれる。
トータルな走行性能が高い分、いかなる状況下においても、思い切ってアクセルを踏み込むことができるのが魅力である。SUVだからといってフラストレーションが溜まることがないが非常に嬉しい。
最近さまざまな最新アメリカンマッスルを取材して思うが、「刺激的なマシンかつ利便性を兼ね備えた理想的なアメ車」を考えるならば、アメリカンSUVに行き着くような気がしてならない。
すなわち、最低5人の大人が快適に乗れて、搭載エンジンは、元をたどればスポーティカーと同一系統。しかもパフォーマンスを上げようと思えば、いくらでもアフターパーツが存在する。
2人、4人乗りのスポーティクーぺも楽しいのは間違いないが、1台で全てをまかなわなきゃいけないオヤジには、最高のベースマシンではないかと考える(ヴォクシー煌に乗っている場合ではない笑)。
もちろん余裕があれば、マスタング、カマロ、チャレンジャーを買えばいい。だが、人生においてそういう買い物が許されない時期っていうのが絶対にあるはず(生涯独身を貫かれる方はその限りではないが…)。
乗っていじって楽しいアメ車、そして刺激的。でもって人と荷物をたくさん乗せられる…。そんなワガママな要求を高い次元で実現させてくれる初代デュランゴは、理想的なアメリカンSUVの1台ではないかと思うのである。
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