クワッドドライブを訪ねるとリンカーンナビゲーター、コルベットC8、ダッジデュランゴSRTヘルキャット、ダッジチャレンジャーヘルキャット、そしてテスラモデルXが修理や整備、改善を待っていた。
いや、正確にはテスラモデルXはクワッドドライブ代表林氏のクルマであり修理対象車ではないのだが(取材日5日前に納車されたばかりであったから後日改めて取材となった)、全体的に「最新車両が増えたな」という大きな変化を感じ取った。
すなわち、その日に工場内にあった車両たちは、今人気の最新車両ばかりであり、そうした最新車両を扱うことが昨年末から非常に増えたということであり=整備に対する意識の変化や作業内容の変化が求められるという。
それは年々複雑化しているシステムやエンジンルーム内が完全にブラックボックスと化していること、さらにエンジンの構造自体も複雑化し、それ以外に様々な機能が装着され、部品点数も膨大になっているから。
だから2015年型キャデラックエスカレードの整備対応ができたからといって2021年型エスカレードの対応ができるとは限らないし、もっと言えばコルベットC8の整備は非常に困難を極める。
それは診断時に使用する電子デバイスの情報処理量が増え、表示される無数の数字から事の真相(トラブルの原因)を暴かないといけないからである。
逆にデュランゴSRTヘルキャットは、電子デバイスのデジタル処理が追いつけなくてその数字自体が読み込めないというからまた別の意味で難解を極めるわけである。
だから2020年以降に発売された新型車の修理には、小手先のテクニックは通用せず、いわゆる勘に頼った修理や経験値の高さだけでは対応不可能であり、正確なデータに基づいた精度の高い作業が必要になるということである。
そこでクワッドドライブが日頃実践している「非分解修理」について聞いてみた。非分解修理とは、文字通り非分解で修理を行うこと。正確には、7割から8割がたトラブルの原因であろう部分を見極めるまで分解せずに対応するというもの。
というか、これ、普通に聞けば「当たり前なんでは」と思うかもしれない。
だが、修理業界では、例えばエンジンがかからなくなったからといって、即座に「コンピューターが原因だわ」と過去の経験値とやらで即座に対応し、十数万円もするコンピューターを換えてしまうという事例が後を絶たない。
だが、実際にはそれが原因でなくともエンジンがかからない症状は確実に起こるわけだから、当然、コンピューターを換えても治らないわけである。で、これまた当然だがその治らなかったコンピューター代はユーザー持ち。
この場合、過去の経験やらで即座に「コンピューターが原因」と判断したメカニックが最大のガンであり、そもそもエンジンが始動しない他の理由を知らない能力のなさも伴い、こうした人間が勤めるショップにクルマを持ち込んだ方は本当に気の毒としか言えないのだが、上記の非分解修理を行えば、こうした事例が起きることはまずないのである。
「最新の車両と言いますか、年式が新しくなればなるほど非分解の修理が必要になると考えています。というのも、症状がはっきりと出ず、一瞬出たりするだけの場合もあり、故障診断をする前に症状の確認すら難しい場合もありますから、そんな時点で分解交換作業をしてしまえば、正確な理由もわからず作業することと一緒ですのでギャンブル的であり、ありえないわけです。また迂闊に触ってしまったことで、症状を消してしまうこともありますから最大の注意が必要です」
だからクワッドドライブでは、まずは症状を確認し、故障診断を行いデータを確認する。そしてそのデータの解析から机上で7割がた診断しシナリオを何パターンか作成する。トラブルの症状によりけりだが、多くて10パターンくらいか。
ちなみにシナリオ立てだが、それは言葉でいうほど簡単なものではない。その車両の配線図を用意し確認しながら、電子デバイスのデータを精査し、それらひとつひとつを分解せずに理解&確認しつつ、「どこでどんなトラブルが起きているのだろう」ということをイメージしながら進めていくのである。
その中には当然、誤診断を防ぐための「騙し」をも考慮しており、シナリオ立てが終わった後にそのシナリオに則った残り3割の実作業に入るわけである。
「非分解ということで手間がかかりそうに思うかもしれません。ですが、実際にはこの手法が最も効率的な診断方法であり、複雑にコンピュータ制御された車両はこの手法でなければ修理することができないと考えます。と同時に、最終的な原因特定には部分的な分解が必要ですが、確実な修理箇所の特定に至るまでの無駄な作業を最小限に抑えることができのです。
くわえて、弊社では部品検索ソフト(EPC)を全メーカー完備しており、部品構成の理解を深めたり、最新品番、対策品番を調べて故障診断の確度を高めています。同時に部品の取り寄せや問い合わせは直接本国メーカーとやり取りしているのでリアルタイムの情報を入手することができ、メーカーリコールやTSB(Technical Service Bulletin)もメーカーオンラインで取得できるので的確な修理が可能になります」
要するに、シナリオ立てすることで理論的な根拠をベースに診断を行っているから見逃しや誤診断がなく、上記のような不必要なパーツ交換や作業がなく、それに伴い無駄な部品交換が起きないからそれによる費用やトラブルが発生することがなく、結果的に作業時間が短縮され工賃も安くなる。一ヶ月以上工場入りし、それでも治らず、でも費用だけは請求されるというようなことが決して起きることがないということである。プラスしてパーツ面からも故障診断の確度を高めるために理解度を深めているということである。
「最新車両のように、クルマが良くなれば当然制御が複雑になります。制御が複雑になれば、それはもう昔のようなアナログ的な診断では修理不可能と言えるのです。逆にそういった作業によって人災ともいえる二次的トラブルを起こすこともありますから注意が必要なのです」
クルマを販売する側からすれば、2020年以前も以後も同じクルマに変わりなく、ただただ輸入し販売すれば良いのかもしれない。だが、修理する側からすれば、2020年前後では天と地の差があるということである。
だから、そうした年代の車両に乗っている方は、そうした事実に向き合い対応している工場にクルマを持ち込むのが最善の策であると言えるのである。
183,250円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
272,800円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
3,553円
MAINTENANCE
6DEGREES
1,881円
MAINTENANCE
6DEGREES