先に紹介したXLTエコブーストでは「実は試乗前にはあまり期待はしていなかった」という話をしたが、V6の方は全くの逆。乗る前から「かなり良いだろうな」という予感があった。というのも、先に2リッターのエコブーストに試乗した際に、ボディ剛性やサスペンション、ブレーキといったエンジン以外のクルマの根幹部分の出来の良さや、パワステなどの操作系の洗練されたフィールを体験していたからである。要するに「2リッターであれだけ良かったんだから、V6の方が悪いわけはない」と思ったわけである。
果たして実際に初めてV6モデルに試乗した際の感想は「やっぱりいいな」というものであったし、今回XLTエコブーストとV6リミテッドを交互に乗り比べて改めて感じたのは、「それぞれに良さがあるけど、どちらかと言えばV6の方が好みかな」というものだった。
言わずもがなであるが、これはあくまでも個人的な好みの話。両者の性能を相対評価して優劣を付けたわけではない。というか、2リッター直列4気筒直噴式インタークーラー付ターボ&2WDのXLTエコブーストと、3.5リッターV型6気筒&4WDのV6リミテッドでは、外観的にはほとんど同じであっても、クルマとしての方向性はかなり違うので、同一線上で比較するのはナンセンスなのではないかと思う。
XLTエコブーストの試乗の際にも感じたことだが、V6リミテッドの方でも走り始める前からとくに感心したのがボディ剛性の高さ。ボディ自体は同じなのだから当然と言えば当然だが、とにかく現行エクスプローラーのボディはガッチリ感が強いというか緩さが全く感じられないのである。言うまでもなくこれはシリーズ初となる新設計の『ユニボディ』の効果。
ちなみにユニボディというのはボディ構造の一形態で、フレーム構造を持たないフレームレスボディのこと。いわゆるモノコックボディと同義だが、アメリカの場合はフランス語の『monocoque』よりも『unibody』を使用するのが一般的のようだ。
フォードジャパン公式ホームペジの解説には「骨格の60%以上を高張力鋼板や、さらに軽量かつ高強度な超高張力鋼板で構成し、軽量化をはかりながら、ボディ剛性をいちだんと高めることに成功」とあるが、軽量&高強度のユニボディによってもたらされた室内の静粛性や快適性は間違いなくクラストップレベル。歴代エクスプローラーとは一線を画する仕上がりとなっている。
筆者も含め、アメリカンSUVとの付き合いが長いユーザーの中には、SUV=ボディ・オン・フレーム(ラダーフレーム)といったイメージを持っている人も多いと思う。また、「フレームボディの方がモノコックよりも頑丈」といった認識の人も多いと思うが、技術の進歩というのは日進月歩。世界的にみても現代のSUVはモノコックボディが主流となっているし、クロスカントリーなどのハードなオフロード走行を目的とする車両でもなければ、フレームボディにこだわる必要はほとんどないと言えるだろう。
これまでのアメリカンSUVの概念を覆すXLTエコブーストの2リッター直列4気筒直噴式インタークーラー付ターボが衝撃的過ぎて忘れられがちだが、実は現行エクスプローラーに搭載される3.5リッターV型6気筒ユニットも新開発されたエンジンである。
『Ti-VCT(Twin Independent Valiable Camshaft Timing)』と呼ばれる吸排気独立可変バルブタイミング機構を採用したこの新ユニットのカタログスペックは、最高出力216kW(294ps)/6,500rpm、最大トルク345N-m(35.2kg-m)/4,000rpm。先代エクスプローラーに搭載されていた4リッターV6ユニットが157kW(213ps)/5,100rpm&344N-m(35.1kg-m)/3,700rpm、4.6リッターV8ユニットが218kW(296ps)/5,750rpm&407N-m(41.5kg-m)/4,000rpmであったことを考えると、今回のエンジンがいかに進化したユニットであるかが分かるだろう。
しかも今回のユニットには、アクセルを戻した際に燃料供給を自動的にカットするADFSO(Aggressive Deceleration Fuel Shut-off)と呼ばれる減速時燃料遮断機構も搭載。パワーアップと同時に従来の4リッターV6ユニットと比べて約20%も燃費性能を向上させることに成功しており、スペック的にもフィーリング的にも、間違いなく歴代エクスプローラー最強にして最高のV6エンジンとなっている。
また、この新ユニットには、通常のATモードに加え、よりスポーティな走りを愉しめるマニュアルモードを搭載した6速SST(Select Shift automatic Transmission)と呼ばれる電子制御式トランスミッションが組み合わされており、これはXLTエコブーストにはないV6モデル限定のアドバンテージとなっている。
リミテッドとXLTのV6モデルの駆動方式は、エクスプローラーの伝統とも言うべき4WDだが、現行エクスプローラーでは、4WDシステムも大きく進化している。
通常はほぼ100%のトルクを前輪に伝え、タイヤのスリップや空転を感知すると瞬時に後輪に適切なトルクを配分する『インテリジェント4WD』の完成度も素晴らしいが、この先進の4WDシステムを制御する『テレイン・マネージメント・システム』がまた秀逸。
『ノーマル』、『泥道(MUD&RUTS)』、『砂地(SAND)』、『雪道(SNOW)』という4つの走行モードをセレクト出来るテレイン・マネージメント・システムは、走行シーンに応じてセンターコンソールに設置されたダイヤルを回すだけで、特別なスキルのない人でもエクスプローラー本来の実力を発揮出来るのである。
さらには、滑り易い舗装路を低速で下る際に、ABSを自動制御して車速をコントロールする『ヒル・ディセント・コントロール(HILL DESCENT CONTROL)』や、傾斜角5度以上の登り斜面での発進時に安全にスタートするための『ヒル・スタート・アシスト(HILL START ASSIST)』といった機能まで備えた現行V6モデルの4WD&マネージメント・システムは、単に歴代エクスプローラー最強というだけでなく、ジープやランクルといった強力なライバルにも引けを取らない駆動システムと言えるだろう。
オフドードや雪道というのは、いくら優秀な4WDシステムを装備しているクルマでも、走行経験のない人だと怖くて運転する気にならなかったり、逆に4WDを過信して無茶な運転をした結果、事故などのトラブルに見舞われたりする事も少なくない。ドライバーの未熟さをコンピューターのプログラミングがカバーするという現行エクスプローラーの方式は、これからのSUV界のスタンダードになっていくのではないかと思う。
V6リミテッドとXLTの車両本体価格には92万円の差(取材日時点)があるが、これはほぼ装備の違いとなる。
「エンジンやミッション、タイヤ&ホイールを含む足回りといったクルマの根幹部分が同じなのに92万円も違うの?」と疑問に思われる人もいるかもしれないが、両者の装備の違いをひとつずつ検証していくと、「なるほど」と納得するのではないかと思う。
ここでは細かい違いは省略するが、リミテッド専用装備の中で筆者的に大きいと思えるのは、『デュアルパネルサンルーフ』、『シートヒーター&シートクーラー』、『運転席シートメモリー』、『電動アジャスタブルペダル』、『ウッド調トリムアクセント』、『灰皿&シガーライター』、『12スピーカー390Wプレミアムオーディオ』、『パワーリフトゲート』、『3列目パワーフォールディングシート』、『エンジンリモートスタート』など。いずれの装備もXLTではチョイス出来ないので、これらの豪華装備が欲しい人は、自動的に選択肢はリミテッドだけとなる。
>> フォード エクスプローラー 徹底検証 1
>> フォード エクスプローラー 徹底検証 2
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES