2010年にリリースされたフォード F150 SVT ラプターは、フォードのベストセラートラックである「F150」をベースに、フォードの特殊車両開発チーム「SVT(スペシャル・ヴィークル・チーム)」が設計したオフロード向け(デザートレース)のスペシャルモデル。
足回りやパワーユニットは専用強化され、サスペンションにはフォックスレーシングのショックアブソーバーが採用(市販車として初めて)されている。
エンジンは6.2リッターV8スーパーチャージャーが搭載、マックスパワー411hp、これに6速ATを組み合わせピックアップトラックとは思えない強烈な走りを可能にするのである。
ボディは、ベースとなるF150よりも7インチワイド化されアグレッシブなスタイリングとなり、アプローチアングルは30度、デパーチャーアングルは22.7度といったクリアランスを誇る。
そしてボディバリエーションは2011年から「スーパーキャブ」と4ドアの「スーパークルー」の2種類となっている。
取材した2012年モデルでは、フロントに改良型のトルセンデフを採用し、フロントビューカメラを新たに装備されている。
とまぁ、広報資料的な要素を並べれば以上がラプターの概要となる。
だがこのクルマ、聞けば聞くほど興味がわき、見れば見るほど圧倒され、乗れば乗るほど欲しくなる、スペック表からでは伝わらない魅力がギッシリの高貴なるトラックだった。
アメリカが誇るF-22戦闘機と同じ「RAPTOR」を名乗るこのクルマは、「オフロードを高速で駆け抜ける」ことを目的としたレーシングカー。だからF150をベースにしながらもサスペンションを全面的に変更し、アルミ製大型ロアアームを採用するなどしてロングトラベルのサスに改良。数値的にはフロント11.2インチ、リア12.1インチ拡大されている。さらに上記の地上高クリアランス。
その上名門フォックスレーシングのショックアブソーバーを装着して、起伏の激しいオフロードを走破するためのストローク量拡大とバネ下重量の軽減を図っているのである。
で、だからこそのブリスターフェンダー、F150比7インチのワイドボディとなっているののである。単なる見せかけだけの迫力アップを目的としたボディではなく、機能優先からのワイドボディ構造(まさにレーシングカーとしての成り立ち)こそ、ラプターの最大の特徴なのである。
搭載されるエンジンは、6.2リッターV8スーパーチャージド。シェルビーGT500にも搭載しているスーパーチャージャーはSVTにとってはお手の物、と言わんばかりに411hpを発生させる。このエンジンはすでにBAJA1000でも性能が実証されているお墨付きのエンジンであり、低速から圧倒的なパワー&トルクを発生させる。
これに組み合わされる6速ATはセレクトシフト付き。個人的にはMTが欲しいと思わせるほど、魅力的なパワーユニットである。
センターマーカーの付いたステアリングを有するインテリアも一種独特のムードに包まれた専用品だった。
トランスファースイッチやトレーラーブレーキコントローラー等、機能スイッチが豊富に並べられており、インパネ内のメーターにも計器類がずっしり並べられている。センターコンソールの大型モニターには、フロントビューカメラからの映像が映し出され(2012年モデルから)、視界不良時のフロントビューを補ってくれる等、オフローダーとして先進的な機能をも持ち合わせているのである。
一方で、成り立ちはレースカーなれど、基本市販車ということでサンルーフやオーディオ等はフル装備されており、室内のノイズリダクション、吸音機能等も充実しており、マイカーとして使用する際の快適装備にも留意されている。
いろいろ話を聞き、その後ラプターとの対面を果たしたのだが、このクルマの雰囲気、何かに似ていると思った。そう、それは旧スカイラインGTR。
GTRとは、スカイラインという単なる4ドアセダンをベースとした、サーキットにて常勝を目指した機能的なクルマ。一方でラプターは、単なるピックアップトラックをベースとした、オフロードで勝てるクルマを目指した機能的なトラック。
ということで、カタチや目指した場所は違えど、両車の「志」は同じと言っても過言ではないかと瞬間的に思った次第である(レースフィールドを思わせるオーラがある)。そして実際に乗ってみて、改めてアメリカンピックアップトラックの奥深さを知るのである。
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