更新日:2015.01.28
文/椙内洋輔 写真/シボレー
現地時間2015年1月12日に開幕したデトロイトモーターショーにおいては、フォードGTとホンダNSXが注目の的だったことは間違いない。さらにフォードにおいては、マスタングシェルビー350Rやラプターの新型モデルを発表するなど、他メーカーにとっては正直「やられた感」いっぱいのモーターショーだったに違いない(笑)。
とはいえ、若干地~味に見えた他メーカーの出展車だったとはいえ、すべてが底の浅いものばかりだったとは限らない。たとえばシボレーボルト(VOLT)。2010年に発表されたこのレンジエクステンダーPHVは、デビューから5年、シボレーブースの主役を務めるに至ったのである。
ちなみにPHVとは、EV(電気自動車)と従来のHV(ハイブリッド)の長所を併せ持つクルマのことである。加えてレンジエクステンダーとはいわゆるエンジン動力のことである。
新型ボルトは、新しくなったパワートレインを搭載することで航続距離を伸ばし、同時に軽量化も果たしていることで燃費が一段と向上しているという。
発電用と駆動用に搭載されている2つのモーター(PHVシステム)は、いずれも効率化が図られ、現行比で電費効率を約12%引き上げた。同時に45kgの軽量化も図った。それによる加速性能は、現行比で20%以上アップしたというから全くの別物だろう。
さらに、発電用のレンジエクステンダー(直列4気筒ガソリンエンジン)は、排気量が1.4リッターから1.5リッターに拡大され新開発の直噴ユニットとなっている。
これらによる効果はてきめんで、バッテリーだけでのEV航続可能距離は、旧型の約56キロから約80キロへと伸び、燃料・充電満タン状態からの航続可能距離は420マイル(約650キロ)に及ぶという。
今回、デザイン面でも大幅な改良が施された2代目は、一段と強めたシボレーマスクがポイントであるが、同時に性能向上を果たしたことで、世界中で爆発的ヒット巻き起こしているBMW i3や日本で言うところの三菱アウトランダーPHVと互角以上の戦いが可能になるのかもしれない(日本に導入されることはまずないだろうが)。
一方、同時に登場したもう一台のボルト(BOLT)も興味深い1台だった。こちらはまだコンセプトだが完全EVの小型モデルである。上記のレンジエクステンダーPHVのVOLTに対して完全EVがBOLTと命名されているのが面白い。
鮮やかなオレンジカラーが目を引く5ドアハッチバックたるBOLTは、アルミ、マグネシウム、カーボンファイバーなどの素材が随所に用いられ軽量化が図られている(BMW i3を意識したのだろう)。
搭載されるEVのパワートレインに関しては公表されていないが、「手頃な価格帯で長距離走行可能を目標としたEVになる」と発表されている。具体的には3万ドル前後の価格で、200マイル(約308キロ)以上の航続可距離を目標に開発しているという。
余談だが、GMはすでにスパークという小型ハッチバック車を開発しており、そのEVがすでに発売されているが、EVパワートレインは、GMが独自開発したものである。モーターは最大出力130ps、最大トルク55.3kg-mを引き出すというからかなり強力である。ちなみに、0-96km/h加速は8秒以下の実力で、GMによると加速性能はクラス最高レベルという。
GMにはそういった独自パワートレインがあるだけに、BOLTの登場は間違いないといったところだろう。
ビッグボディ&ハイパワーなアメ車が復活と大きく喧伝された今回のデトロイトモーターショーだったが、それとは好対照な燃料電池車、ハイブリッドカー、レンジエクステンダーPHVといった次世代環境対策車も、着実に進化していることを知っていて損はないだろう。
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