2015年後半に発売が開始されたラムのスペシャルモデル。
それにしても、ラムには過激なフォルムがよく似合う。過去、ラムベースで様々なスペシャルモデルが登場したが、そのどれもがストリートでの走りを高めたものばかりだった。V10エンジン搭載のラムは記憶に新しいだろう。
だが今回試取材たラムレベルは、まるでラプター追従モデルかのように、オフの走りを意識したものである。
メッキパーツを一切使用しないブラックアウトされた大型フロントグリル、パウダーコートされたシルバーのスキッドプレートがオフロード走行の過激さを如実に物語る。
くわえて、専用チューニングのビルシュタイン製ダンパーが装着され、約1インチのリフトアップ、ステアリングのギア比はスローになり、リアスタビライザーはソフトになっているという。
ベースモデルに装備されるエアサスはそのまま生かされ、タイヤは285/70R17インチのオールテレーンタイヤが装着される。
だが、驚きなのはこうしたオフ的装備を満載しているにもかかわらず、一般道での走行にあまり支障を感じさせないことである。
専用ギア比が与えられているというが、特に意識させることもなく(若干ステアリングの切り増しが多くなる気もしたが)、またパワー的な部分での不満等もなく、乗り心地的にも70タイヤのおかげだろうか、路面からの当たりが柔らかく、あえて街中専用としてもレベルに乗れるだけの資質は感じさせる。
車高は1インチアップされているが、専用チューンのビルシュタインショックがいい働きをしているおかげもあって、予想外のふらつきなどを誘発することもない。もちろん、ブレーキング時においても同様であり、その点においても安心感は高いと言えるだろう。
街中を試乗させてもらったが、ベースとなるラム自体の出来の良さ、さらには内装等の豪華さがまるでピックアップトラックであることを忘れさせ、レベルでも一切変わらずに豪華なSUVのごとく快適かつ面白い。
言い忘れたが、ラムレベルにはオリジナルラム1500と同様の2種類のエンジンが用意されている。3.6リッターV6DOHCの305hpモデルと5.7リッターV8OHVの395hpモデルであり、両車ともに8速ATが組み合わされている。
今回試乗したモデルはもちろん後者のV8エンジン+8速ATである。この8速ATの出来は白眉であり、エンジンとミッションと両方で重量級のラムを軽々走らせている感じが伝わってくる。
一方インテリアは、赤く縁どられたコンソールメーター、センターコンソールが特徴であり、シートはエンボス模様入りのファブリックとビニールのコンビシートが採用され、汚れたままでも車内に乗り込めるよう、あえて素材感にこだわったものである。
とはいえ、前述したが、基本となるラム自体の質感が高く、簡素なオフ仕様にはまったく見えないのは嬉しい誤算だろう。
今回試乗しているモデルはV8だけあって、エンジンの咆哮が気持ちいいし、専用チューンに足回りとともにオーナーを十分に満足させるのは間違いない。また、ラムの走りを一段以上レベルアップさせているのも間違いないし(ロールが少ないのがいい)、なにより日本上陸の台数が限られる(であろう)モデルだけに、所有する喜びもひとしおだろう。
最後に。試乗を終え、「ラプターと互角の走りをしているか?」と問われれば、それにはノーと答えざるを得ない。
ラプターといえばF150をベースにしているが、フェンダーを含めた足回り一式がまさにレーシングカーのような専用の作りをしており、そういったモデルに対し足のチューニングのみで超えることは正直不可能である。
ただ、トヨタからタンドラベースでTRDプロが登場しており(まさにラムレベルのライバルだろう)、そういったライバル群の中ではかなりいい線行っていると言えるだろう。
今回は、一般道以外を走ることは叶わなかったが、車高アップも含め、アプローチアングルの確保も効いているから、速度関係を調整すれば、多少のガレ場でもまったく苦にすることなく走破可能であることは想像に難くない。トラクションに関する不安もなく、躊躇することなくガンガン走らせることが可能だろう。
とはいえ、それがラングラーのような感覚で走れるものではないが、それでも普通のセダン等では絶対に走れないような地域を走破できるだけに、扱いやすいオフ車としても人気を博す可能性は高いといえるだろう。
撮影させていただいたBCDには現在、ラム以外にもタンドラやシルバラード等のフルサイズピックアップが数多く揃っており、これまでにもV10ラムSRTも複数扱っているだけに、ピックアップの勘所を押さえていると言っても過言ではないのである。
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