ラグジュアリーSUVという概念を作り上げた先駆者・リンカーンナビゲーター。日本で一大ブームとなったのは2003年に登場した2代目ナビゲーターであり、この二代目は2017年となった今現在でも中古車として販売されているほど知名度や人気が抜群である。
で、そんなナビゲーターの三代目として登場したのがコチラ。同時に2008年から日本正規導入も始まり、一気に販売力を上げている。この三代目は、女性デザイナーが手がけたモデルというのが非常に興味深いが、実際の話、三代目は二代目ほどの人気を得ることはなかったといっていい。
だが、中古車となれば話は違ってくる。モノがあればの話だが、この三代目はディーラー車が存在することともに、そういったディーラー車は法人契約をする方が多く、丁寧に扱われたモノが数多く存在する。二代目のようにカスタマイズされた粗雑なモノが流通していることがほとんどない。
さらに、排気量減少に伴う軽快なSUVが増えるなか、時代錯誤的なフルサイズSUVの中古車がどんどん減っている現状において、コテコテの甘美なるアメリカンラグジュアリーテイストを持つリンカーンの世界観はアメ車ファンにとって最後の砦ともいうべき存在である。
ということで紹介しよう。全長5295mm、全幅全幅2035mmという、ただでさえ大きなサイズを目一杯使ったスクエアなフォルム、クロームメッキを多用した印象的なフロンマスク、そしてインテリアは、他のどのクルマにも似ていない贅沢な雰囲気を持ち合わせた独特なもの。リンカーンナビゲーターを前にすると、それらすべての個性に圧倒される。
ドアを開けた瞬間、すうっと出てきたパワーランニングボードに導かれて運転席にたどりつくと、そこにはエレガントさが光る上質なラグジュアリー空間が。
たっぷりとしたサイズのレザーシートに加え、クラシカルなデザインのメーターパネルや美しく輝くアルミ調のパネル&アナログ時計、さらに端正な模様の本木目パネルなど、ドライバーが安らぐための演出がずらり。いわゆるモダンリッチと呼ばれる非常に独特な空間こそが、リンカーンブランドの世界観である。
シートは3列8人乗りで、2列目のシートは40:20:40の分割可倒式。大人が座れるだけの広さがある3列目のシートは60:40の分割可倒式、しかも電動収納が可能と、すべてにおいて至れり尽くせりである。
ナビゲーターに搭載されるエンジンは、5.4リッターV8SOHC。314ps、最大トルク50.5kg-mを発生させるこのエンジンは、6速ATと組み合わされ、2.7トンもの巨体を悠々と走らせる。ちなみに、105リッターを飲み込むガソリンは、無鉛レギュラーという。
取材車は2014年型のワンオーナーカー。走行距離1.5万キロのディーラー車。
走らせれば、まるで船に乗っているかのごくとゆったりとしたドライブフィール。ハンドリング云々をとやかく言うクルマではないことは重々承知しているが、あえて言えば、足回りはゆったりとストロークし衝撃を吸収しつつも、それに伴いドライバーにも揺れを感知させる。
大きなステアリングは、ラック&ピニオンを介して決してシャープではない、おおらかな反応を示してくれ、急のつく動きさえしなければ、非常に安定した走りをもたらしてくれる。
近年、巷ではまるでスポーツカーのようなSUVが喧伝されているが、ナビゲーターはそれらとはまったく対極の存在である。
ナビゲーターは、大きく重いものを操っている感が多分にあり、それを巨大な低速トルクによってダイナミックに走らせる、ただし、乗り味は鷹揚なアメリカンのままであるから、現代の味慣れた方には不評極まりないかもしれないが、一方で好きな方にはたまらないフィーリングである。
314psを発生させる5.4リッターV8エンジンは、巨大な低速トルクを伴って、乗員を含めた3トン近いボディを走らせる。6速ATとのマッチングもよく、街中でのストップ&ゴーも普通にこなし、滑らかな加速感とともに濃密なV8フィールが健在である。
ちなみに、大きいとはいえ、ドライバーズシートからの見切りは意外にいいし、ステアリングも思った以上によく切れる(エクスプローラーよりも切れる)。なので、見た目からイメージするほど取り回しは悪くない。というか乗ればすぐに慣れるので、苦労することは少なく、怖気ずく必要もまったくない。
インテリアデザインも目を見張るものがある。ラグジュアリーのとらえ方は人それぞれかもしれないが、機能性とデザインが高次元で融合された、ハイセンスなラグジュアリー空間である。
その昔、カルティエ仕様などでラグジュアリーさを表現していた時代を筆者は知っているが、このナビゲーターはブラックのプレミアムレザーシートやリアルウッドが配されたドアパネル、そしてインパネまわりには金属的なマテリアルが配され、左右対称のインパネとラグジュアリーなセンターコンソールなどが一体となった、モダンな印象であり、まさにリンカーンの世界観を如実に表現している空間と言えるのである。
最新のドイツ製SUVのようなモノを知ると、アメリカンSUVは「古臭い」と揶揄するかもしれない。だが、昔からアメ車を知っている者にとっては、これぞまさにアメリカンであり、ラグジュアリーSUVの味にほかならないと思うのである。
現代のクルマが陥っているスペック至上主義の枠から見事脱しているナビゲーターは、唯我独尊といっていい独特の世界観で支配されている。デザイン、乗り味、室内空間。遅いとか速いとかそういった枠にとらわれない、豊かさで満ちた身のこなし。こういった「本物」をわれわれはいつの時代まで味わうことができるのだろうか。
現車は、総額支払い575万円ということだから、この世界観に惚れ、この先10年いやそれ以上共にする気があるならば、是非とも入手すべき極上品と言っても過言ではないだろう。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES