シボレーC/Kピックアップといえば、アメリカを代表するピックアップトラック。長年にわたってシボレーを支えてきた「ブランドの屋台骨」といってもいい存在だ。C/Kシリーズはその源流を1918年までさかのぼることができるが、その長い歴史の中でも1500シリーズは名車の誉れ高いクルマである。
そもそもアメリカ人にとって、ピックアップトラックとはもっとも身近なクルマである。アメリカでもステーションワゴンやミニバンブーム、そしてSUVブームなど、時代とともに売れ筋のクルマは移り変わってきたが、そんなブームをしり目に、いつの時代でもアメリカでもっとも売れているクルマがピックアップトラックなのである。国土の大半が大自然ということもあり、タフで頼もしいピックアップトラックが生活のパートナーとして選ばれることがいまだに多いのである。フルサイズモデルということで、エクステンドキャブやクルーキャブと呼ばれるボディのクルマなら定員は6名だし、走りもSUV同様に軽快でスポーティ。アメリカのカントリーロードではセダンよりもずっと快適なのだ。
C/Kシリーズの歴史を振り返ってみる。1918年にシボレーのピックアップトラックの原型となる幌付きトラックが誕生。36年にフルサイズモデルとなり、78年に第2世代となるC/K5シリーズが登場する。そして88年にC/K1500シリーズが誕生している。
その後、1500シリーズの後継モデルとしてシルバラードが登場したのが99年。ちなみに00年式のC/Kは、2500と3500のみが生産され、01年モデルではそれらのモデルもシルバラードHDにスイッチされた。ということで、C/K1500シリーズは2000年モデルを持って生産終了となった。つまり、今回取材した1998年型C1500は、1988年から1999まで存在したことになる。
C/K1500シリーズのモデルネームはシャシーのタイプを表している。CとKは駆動方式で、Cは2WD、Kは4WDを意味する。4桁の数字は荷台の積載量を表している。1500は2分の1トン、2500は3分の4トン、3500は1トン積み。したがってC1500といえば2WDの半トン積みトラックとなる。
また6種類のシャシーにレギュラーキャブ、エクステンドキャブ、クルーキャブ(ダブルキャブ)の3タイプのキャビン。そしてショートボックスとロングボックスという2種類の荷台が用意されている。さらにはエンジンが4.3リッターのV6をはじめ、5リッター、5.7リッター、7.4リッターのV8、そして6.5リッターのV8ターボディーゼルと多彩なラインナップを誇る。これらの順列組み合わせにワークトラックパッケージ、シャイアントリムパッケージ、シルバラードトリムパッケージと3タイプのグレードが用意されていた。
年式によってエンジンやボディ、トリムの組み合わせが異なることもあり、すべてのバリエーションを把握することはほとんど不可能に近いといってもいい。ちなみに余談だが「454SS」という、90年から93年までの4年間でわずか1万7000台弱が販売された、7.4リッタービッグブロックエンジンを搭載したC1500レギュラーキャブのスポーツモデルも存在したのである。
今回紹介するC1500は1998年型のエクステンドキャブ。5.7リッターV8エンジンを搭載し、約5.6万キロの距離を刻む新車並行車である。同色ペイントのミラーやハードトノカバー装着といった以外に、主な外装のポイントは、17インチのボイドのビレットホイールを履き、フロント4、リア6インチダウンという、いわゆる定番ローダウンが施されていることくらいである。
ここ最近、タンドラというかなりデカいトラックを何度も運転していたために、C1500を見ても驚くことはないだろうと、密かに思っていたがさにあらず。実物はかなりデカい。というか長い。聞けば全長5570ミリに達しているということで、運転にはそれなりの覚悟が必要になった。
インテリアは、ナビが装着されていることくらいで、ノーマル状態を維持しているが、非常にキレイ。いつも言う、粗を隠そうといわんばかりの表向きのクリーニングなどの形跡は皆無だし、中古車特有のニオイなどもほとんど感じない。逆に、5.6万キロの距離を刻んでいる割にはキレイ過ぎると思うほど。だが、各種操作パネルに触れたり、助手席コンソールを開けてみたり…。その際のダッシュの動き等はまだ新品と思えるほどパリっとしていたし、特にニオイの件に関しては非常に好感が持てた。
以前ダイバンでは、低走行車のキャデラックフリードウッドやシボレーインパラワゴンという90年代のアメ車を取材させていただいた経験があるのだが、このC1500もそれら車両同様にコンディションの良さを物語っている。少なくともインテリアを見る限り、このC1500のコンディションは良好といって良いだろう。
過去に何度も試乗しているが、こういった全長の長いアメ車の走り出しは、いつも緊張する。だが、10分も走ればそれこそ慣れてしまうほど、C1500の運転は容易だった。理由はドライバーの着座位置が非常に高いからだ。現代のアメ車(クルマ)の場合、サイドウインドーと着座位置の関係で言えば、顔より上の部分しか見えないほど、着座位置が低いと言えばお分かりいただけるだろうか? 真横からみると、バスタブに身を沈めているかのように、ドライバーの顔から上しか見えない。一方でこのC1500は、胸より上が見える。サイドウインドーから上半身がはっきりと見えるほど着座位置が高い。つまり、それによってドライバーはボディ四隅の位置関係の把握が容易になり、ボディの「大きさ」に起因する運転の不安要素が取り除かれるのである。
弊社田中のブログにもすでに書かれているが、このC1500の走りっぷりは、非常にインパクトあるものだ。ある人によっては「これがアメ車だよ〜」となるだろうし、またある人によっては「なんじゃコレ?」ともなりかねないほど、「らしさ」を備えている。255HP/4600rpm、最大トルク330 lb-ft./2800rpm発生させる5.7リッターV8エンジンは、過不足ないパワーを提供してくれ、いついかなるときでもアクセルに対して即応してくれる。決して飛ばすアメ車ではない(と思っている)だけに、必要十分な性能と断言して良いだろう。
一方でハンドリングに関しては、現代のアメ車では感じられないほどスローだ。いわゆる「90年代のアメ車」で通ってしまうかどうかは不明だが、そういった言葉でくくられてしまうほど特徴的。だがこのC1500の場合、フロント、リアともにローダウンされているために、ふわふわと言われるほどのものではない。一般道を巡航する限り、これまた十分な性能と評して良いだろう。
ただし、ブレーキにおいては慣れるまでに時間が必要かもしれない。少なくとも現代の踏めば即座に効きを表すタイプものではない。ペダルの踏みしろが大きいために、ブレーキペダルを踏んでから効くまでの時間がほんのわずかに長いのだ。ブレーキ自体の効きに問題があるわけではないので、慣れるしかないのだが…(90年代のアメ車の特徴だが、アストロ等に乗っていれば問題ない)。
最近、こういった90年代のアメ車の中古車を探している方が多いという。タホ、サバーバン、カプリスワゴンにC1500。どれもが90年代アメ車の象徴だった(実際にC1500の中古車を購入し、フルノーマルに戻そう企画を実施しているショップもあると聞く)。そういった中でのこのC1500の価値は非常に高いと思う。特に、状態が良くいたずらに手が加えられていないのがいい。このままの状態でも十分に乗れるし、この先手を加えるにもしても、加え甲斐があるはずだ。
大きさと柔らかさが自慢のアメ車、ふわふわのシート、軽いステアリング…。現代のアメ車からは決して得られないこの「味」を味わいたければ、このC1500は格好の1台としてオススメできるだろう。ちなみに、C1500はタホ・サバーバンとボディを共用していることもあって、純正パーツは容易に入手できるし、メンテナンスにもあまり困らない。カスタムやドレスアップなどを楽しむためのパーツやキットも多種多様に販売されている。そういう利点を生かせば、それこそ理想のアメ車ライフが送れるはずだ。
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