TEST RIDE

[試乗記]

シェイカー装着車こそ第一世代のリアルな復刻型

ダッジチャレンジャー R/T プラス シェイカー

2014年の限定車・シリアルナンバー「1411」

これから「アメ車を買おう」と思う方にオススメしたい2台の車両をピックアップ。編集部的には、今買うなら「価値ある存在」をあえて買うべき、それでいて10年後も価値があまり下がらず、万が一売るにしてもそれなりの見返りが得られるという車両を考えてみた。

更新日:2017.01.27

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

アメ車全般の価格高騰が予測される

 いきなり余談で恐縮だが(笑)、例のオッサンの勢いが止まらない。失礼、オッサンではなく彼の地の大統領の話。「アメリカファースト」を連呼し、自動車メーカーがメキシコに工場を作ることを猛烈に非難。ついにはそのオッサンの言いなりになった数々の自動車メーカーたち。

 まあ百歩譲って、彼の地の話なんで「勝手にやれば」とも思わなくもないが、だが、そのオッサンのやり方がまかり通ればいろいろな不具合が起こってくることは間違いない。

 たとえばアメ車(逆車含む)。アメリカ本国に工場を作らずメキシコに工場をつくっている理由のひとつは人件費が安いから。たとえばアイフォーン。これまたアメリカ生産せずに中国で生産しているのは、またまた人件費が安いから。

 それらを非難しアメリカ生産すれば、雇用は増えるかもしれないが、間違いなく人件費がかさみ、そのしわ寄せがモノの値段に跳ね返る可能性が高い。となれば、今現在仮に600万円で買えたアメ車が700万、いや800万になってしまうかもしれない…(アイフォーンだって同じような原理が働くだろう)。

 それじゃなくたって、今現在でも日本におけるアメ車事情はあまりよろしくはない。「アメ車が売れない」という話ではなく、「売れるのにモノがない」、もしくは「モノが高い」という話である。

 現在の為替相場による新車の値段高騰→アメリカから新車が日本に来ない→だから国内中古車市場が逆に賑わい→中古車価格が高騰するという流れである。

 今はまだいいが、このまま国内需要のみでまかなえば、この先3年後5年後10年後のことを考えると、「アメ車を買いたいが高くて買えない」、「5年前に買っておけば良かった」ってことが確実に起こるはずである。そのための手段としては、まずはお金持ちになること(笑)。それか、今のうちに欲しいアメ車を見つけ、この1、2年の間に買ってしまうことである。

この先チャレンジャーがモデルチェンジし、このデザインがこのまま未来永劫続く保証はどこにもない。チャレンジャーにはここ数年、常にモデルチェンジの噂がつきまとうが、モデルチェンジを実施できない事情はここにある。このデザインを変更する次なるデザインが見つからないのだ。そしてメーカーも怖いのである。だから、このデザインが好きならば、今のうちにこのデザインの優良物件を手に入れ、末永く愛すべきなのである。

シェイカーフードとは、ラムエアーを取り込むスクープが、エアクリーナーケースと一体化した構造になっており、それがボンネットを突き抜けて車外に出ている仕様のことである。その昔のハイパワーマシンの象徴のような存在だった。

現代のチャレンジャーがデザインベースにした往年の1970年型チャレンジャー。シェイカーフードはハイパフォーマンスの証だった。ちなみに2015年からの第二世代がデザインベースにしたのが1971年型。往年のチャレンジャーはこのたった2年間のインパクトが非常に大きいのだ。

今のうちに欲しいアメ車は手に入れてしまえ

 そんな不安定な未来が予測されるなか、「アメ車を買おう」と思う方にオススメしたい2台の車両をピックアップ。編集部的には、今買うなら「価値ある存在」をあえて買うべき、それでいて10年後も価値があまり下がらず、万が一売るにしてもそれなりの見返りが得られるという車両を考えてみた。

 で、まず最初の1台がダッジチャレンジャー。2014年型のR/T プラス シェイカーである。

 まだまだ新車が買えるにもかかわらず、あえてのセレクト。ダッジチャレンジャーは2009年から2014年の第一世代、2015年以降の第二世代と進化しているが、その第一世代の最終モデルとして2000台限定で登場したのが2014年型のR/T プラス シェイカーである。

 しかもホワイトボディは、2000台中51台しか生産されず希少価値が一層高い。現車は7800キロ走行と走行距離が短いのも特徴である。くわえて搭載されている5.7リッターエンジンは、その後第二世代でも使用されており、ミッションが8速ATになっているということを除けばエンジン自体は同機なだけに、第一世代最終モデルでもなんら不満はない。

 さらにシェイカーの存在である。2009年に登場したダッチチャレンジャーは年々進化し、基本ベースは変えずとも様々なバリエーションを生んできた。極めつけが707hpのヘルキャットと言っていいだろう(今後T/Aやデーモンも登場するが)。

 だが、デザイン的な面でいえば、何かひとつ足りない。いわゆる往年のモパーマッスルが醸し出す大迫力に迫る何かが…。これまでいろいろな現行チャレンジャーを実際に見てきたが、常に感じる不足感。そう巨大なボンネットフードの形状である。

 往年のクーダやその他マッスルカーが持っていた巨大なボンネットフードの突起物。フード下にあるエアクリーナーケースに直付けされたエアスクープがボンネットフードを突き抜けた形状。いわゆるシェイカーフード(SHAKER HOOD)である。

 シェイカーフードとは、ラムエアーを取り込むスクープが、エアクリーナーケースと一体化した構造になっており、それがボンネットを突き抜けて車外に出ている仕様のことで、エンジンと共に振動(=shake)することからその名が付けられている。

 またシェイカーフード搭載車には、ボンネットの裏側にそれを示すステッカーが貼られているのだが、各アルファベット文字の上下にシャドーが入っているので、静止状態でもまるでステッカーが振動しているように見えるのである。

シェイカー装着車には、ボンネットフードからリアトランクに至るまで純正のデカールが貼られているのが特徴である。

シェイカーフード搭載車のボンネットの裏側にはそれを示すステッカーが貼られているのだが、各アルファベット文字の上下にシャドーが入っているので、静止状態でもまるでステッカーが振動しているように見えるのである。

搭載されるエンジンは、5.7リッターV8HEMI。372hp、最大トルク400lb-ftを発生させる。この当時のV6やSRT8は2011年でマイナーチェンジされたが、この5.7リッターはデビュー当初から変化はない。その後の第二世代でも組み合わされるミッションが8速ATとなったが、エンジン自体は同機。それすなわち、完成度が高いエンジンということ。

この先10年経っても価値が下がらないアメ車

 そんなシェイカーフードが装着されたモデルが2014年に登場したのである。厳密にいえば、2014年は限定モデルのみであり、デザインが変更された2015年からはカタログモデルとして新車で入手することが可能になったが、それでも2014年=第一世代マスクのモデルでプラスシェイカーを日本で入手するのは至難の技だったのである。

 すなわち、1970年型チャレンジャーをモチーフに生まれたこの新世代チャレンジャーは、2009年に登場し2014年でひとつの区切りを付ける。その最後の一年間のみ限定販売された「R/T シェーカー」こそが、リアルな復刻版の完成型としてアメリカ本国でもてはやされていたからである。

 bubuのBCDでは、この2014年モデルを積極的に集めていたが、入手後すぐにSOULOUTになるものが多く、また船に乗せた段階の日本到着前に売れてしまうこともしばしば。そんなモデルの、さらに限定カラーのホワイトモデルがあるということで、試乗させてもらったのである。

 取材した2014年モデルは、レア中のレアモデル。もしかしたらヘルキャットよりも日本でお目にかかる機会が少ないかもしれないモデルである。

 2015年以降の第二世代とはフロントマスクのグリル内の形状が異なり、取材車にはボディ同色のグリルバーが付く。またリアスタイルもリアテールの形状が明白に異なる。

 ただしR/Tの基本的なスペックに世代別の大きな変化はないから、あえて今2014年モデルをチョイスするのは全然悪くない。個人的には、年式の割に各部の程度がめちゃめちゃ良いのが、この個体をオススメする二つ目の理由である。

 わずかながらの距離を乗らせていただいたいが、やはり大排気量NAエンジンは面白い。5.7リッターV8とは思えぬほどパワフルであり、V8エンジンの存在感が存分に楽しめる。いまさらながらだが、ATで悠然とV8を謳わせる走り方がとても似合っていると思う。こういうクルマに5年10年乗って大切に、そしてどんどん距離を刻んで固有のアメ車ライフを楽しんでもらいたいと本気で思うわけである。

中古車で購入する場合、純正仕様に近いモデルの方が全体的な程度の確認がしやすいのは言うまでもない。この個体には20インチの純正ホイールが装着されているのが嬉しい。こういうところにこだわるのもBCDならでは。

2014年までの非常にシンプルなインテリア。ミッションはATだが、5.7リッターV8エンジンのパワーを感じながら悠然と流すことが可能。ボディ、エンジン、ミッション、足回りとすべてのバランスが整っており、強烈なパフォーマンスを求めないのであれば、今だ十分に満足できる仕様である。

インテリアには専用のパフォーマンスレザーシートが奢られている。バケットシートほどではないにしろ、ホールド性が高く座り心地が良い。

チャレンジャー専門ショップ的な存在

 アメ車ワールドでは、日本中のアメ車ショップの取材をしているが、BCDほどバリエーションを持っているショップは日本にはない。たとえばチャレンジャーだって、「客注だから取り寄せた」ショップは多数あれど、BCDのようにほぼ全バリエーションの在庫車を所有していることはまずない。

 BCDは、日本では圧倒的な台数のチャレンジャーを扱っており、かつ販売台数も多く、これまで培ってきたメンテナンス等のノウハウも充実している。

 だからこそ、あえて新車の全グレード(V6からヘルキャットまで)を取り扱っており、中古車に関しても自社現地法人でのみ見定めた個体しか扱っておらず、そうしたこだわりがもたらす程度良好車による評判が評判を呼び、ユーザーの間では「チャレンジャー専門店」とも言われるほどに至っているのである。

 ということで、こういった限定車にも目を凝らし常にアンテナを張っているのBCDだが、それでもこの2014年型シェイカーは希少車であり滅多に見つからないというから、日本での価値も非常に高く、その価値はこの先もずっと続くと思うのである。

ステアリング裏に装備されているパドルシフトの操作感も良好。片手でのんびり走るもよし、パドルで小気味よく走るのもよし。

2014年の限定車・シリアルナンバー「1411」がダッシュボードにナンバリングされている。

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