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[試乗記]

現代アメ車の中でも数少ない名車の1台

2012 キャデラックCTS-V (CADILLAC CTS-V)

キャデラックなのにちょっとしたスーパーカー顔負けの性能

取材車はキャデラックCTS-V。当時のキャデラックCTSの「AMG」や「M」に匹敵するマシンである。

更新日:2017.03.21

文/吉田昌宏 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 0448571836 [ホームページ] [詳細情報]

ベンツのAMG、BMWのMシリーズに匹敵するマシン

 キャデラックCTS-Vとは、2007年にフルモデルチェンジを受けた「CTS」に、2009年1月から追加された最強バージョンのこと。簡単にいえば、ベンツのAMG、BMWのMシリーズに匹敵するマシンである。

 CTS-Vのアグレッシブなフロントマスク、レーシーなメッシュスポークホイール、スーパーチャージャーを収めるためにマッシブに盛り上がったボンネットなど、走りを主張したスタイルが印象的。まるでステルス戦闘機のようなアグレッシブなスタイリングが魅力である。

 過去に何度か街中を走っているCTS-Vを何度か見たことがあるが、その都度オーラを感じたし、ひと目で「凄み」が伝わってくる。かといってアフターメーカーのエアロを装着したようなアンバランスさは微塵もない。

 このスタイルやオーラにかつてのイメージ(厳粛なキャデラック)は結びつかないが、新世代をアピールするには相応しいスタイルだと絶賛した自分が過去にいた。

 個人的には走り去るリアスタイルがステキだと思う。エレガントさと威圧感を同時に兼ね備えリアスタイルは他車にはない個性の塊だし、直線主体のデザインを上手く組み合わせていると思っている。

 そもそもアメ車って、全般的にリアは大人しいデザインばかりである。だからCTS-Vの攻撃的なリアスタイルは新鮮である。

 このボディに組み合わされるエンジンは、6.2リッタースーパーチャージドV8。556hp/6100rpm、最大トルク551lb-ft/3800rpmを発生させ、トランスミッションは6MTとパドルシフト付き6AT。

 ちなみにディーラー車は6速ATのみであった。またステアリング裏には、指先だけで変速可能なパドルボタンが装備されている。

アグレッシブなフロントマスク、レーシーなメッシュスポークホイール、スーパーチャージャーを収めるためにマッシブに盛り上がったボンネットなど、走りを主張したアグレッシブなスタイルが特徴的。

エレガントさと威圧感を同時に兼ね備えたこのデカイお尻がたまらなくステキ。リアデザインを駆るんじる傾向にあるアメ車の中では特筆のデザイン。

前後オーバーハングの短さ、またウインドスクリーンの小ささもデザインをさらに引き締めている。

作りこみがすべてにおいてタイト

 サスペンションには、路面状況を読み取り瞬時に減衰力を最適化する磁性流体を用いたマグネティックライドコントロールが装着され、さらにブレンボ製ブレーキやミシュランのパイロットスポーツPS2が装着される。そして静止状態から時速60マイル(約96km)までの到達時間はわずか3.9秒というのだから、並のスポーツカーなら簡単にカモられる。というか、ちょっとしたスーパーカー顔負けの性能である。

 ちなみに当時最高峰の動力性能を誇る6.2リッターV8スーパーチャージドエンジンは、熟練したひとりの職人の手作業によってすべてが組み上げられ、部品の精査、組み立て、バランシング、テスト、調整などの行程が入念に行われたという。

 取材車両は、2012年型。7000キロ走行のディーラー車である。この車両を扱っているエイブルでは比較的珍しい高年式の車両であるが、望めば独自のネットワークを駆使してこういった最適な車両を探してくれる。

 乗り込んで見たインテリアは、かつてのアメ車っぽさは微塵もない。非常にタイトな空間を演出しており、レカロシートの座り心地はかなりいい。同時に質感もかなりのものである。

 黒光りするセンターコンソールや洗練された配置のオーディオ/空調の操作スイッチ、ダッシュボードから上にせり上がるカーナビなどは、当時の高級車のトレンドを見事に踏襲していると言えるだろう。

搭載される6.2リッターV8スーパーチャージドエンジンは556hp/6100rpm、最大トルク551lb-ft/3800rpmを発生させる。その当時の最高峰V8エンジンの一つであり、ちょっとしたスーパーカー顔負けのパフォーマンスが味わえる。

質感の高いインテリアはこれまでのアメ車のように広々としたものではない。きわめてタイトであり、動きからすべてにおいて洗練されている。スウェード調の小径ステアリングは手の平に吸い付くような感触が心地よい。

CTS-VにはMTも存在するが、ディーラー車は6速AT仕様のみであった。ステアリング裏には、指先だけで変速可能な「ハイドラマチックトランスミッション」が装備されているから、スポーティな走りにも向いている。

正直筆者の運動神経を遥かに上回っている加速感。まさしく怒涛の加速。

スポーツカーじゃないのにスポーツカー以上

 柔らかく、かつ最高のホールド性を示すレカロ製シートに身をおろしエンジンスタート。スウェード調(マイクロファイバー製)のステアリングホイールの手触りが非常にいい。タイトな空間と相まって、ちょっとしたレーシングカーのような雰囲気が味わえる。

 それでも街中を走れば、まるで一般車と同じように快適であり、運転席からの視界も悪くなく、逆に思った以上に小さく感じる造りに感心する。このタイトな空間にさえ慣れれば、毎日の足としてまったく不都合なく使えるだろう。

 しかも足回りに使用されている可変減衰力制御の「マグネティックライドコントロール」は「ツーリング」と「スポーツ」がチョイスできるが、一般道では「ツーリング」で十分であると思ったが、その制御が巧みであり、乗り心地の良さにも驚きを感じる。

 ドロドロと吼える最高のV8が載っているにもかかわらず、この乗り心地。とはいえ、アクセルにちょっと力を込めれば、まさに瞬間移動。これだけの物体が一瞬にして突っ走り、あっという間にレブリミットにブチ当たる。

 この気が遠くなるような怒濤な加速感は、正直筆者の運動神経を遥かに上回っている。まさに期待以上の加速である。高速道路だと、前車を追い抜くのはいとも容易く、逆に理性を抑えるのに必死じゃないか?

 一方でその際足回りは、これまでの常識を覆すかのごとくしなやかかつ硬質なもので、直線や緩やかなコーナーを走っている限りはどんな状況(速度)でも走り切れる、と思わせるほど安定感が高い。少なくとも筆者みたいな一般的なドライバーには、限りない安心感を与えてくれる(この際のマグネティックライドコントロールは「スポーツ」)。

インテリアは、かつてのアメ車っぽさは微塵もない。黒光りするセンターコンソールや洗練された配置のオーディオ/空調の操作スイッチなどは、当時の高級車のトレンドを見事に踏襲している。

向かって左に配置されるタコメーターの動きはきわめてシャープ。

まるでサーキット走行車のようなフィット感を生むレカロシート。

デザイン、パフォーマンス等のすべてにおいて突出する存在

 一般道を走っている限りでは「ツーリング」で十分だと思っていたが、高速道路での「スポーツ」の威力は限りなく高い。そして歯切れの良い6速AT「ハイドラマチックトランスミッション」もかなりの武器なる。

 ブレーキにはフロント6ポッド、リア4ポッドのブレンボ社製ブレーキが装着されているが、こちらの安心感もかなり高い。これまた一般レベルのドライバーがちょっと無理をするくらいにおいては、フェードさせることすら難しい。そのくらいの高レベルである。

 ニュルブルクリンクという難所コースを持ったサーキットで鍛えた足腰というのは伊達ではなく、これまでのアメ車感覚とは別次元のドライビングが可能なマシンである。ボディの剛性感、硬質感は体感でコルベットを上回るといっていいほどだし。

 CTSに関しては、すでにモデルチェンジが行われ次の世代へと移り変わっているが(当然Vシリーズも次世代へモデルチェンジ)、この取材した世代ならではのデザインが今をもってしても最高に素敵である。

 もちろん、パフォーマンスで言えば、現行最新Vシリーズがさらに一段と上回っているのは当たり前であるが、今回の取材車のように、D車の7000キロ走行で当時の新車価格の3/5程度で購入できるというなら、まさしくお買い得である。今現在、中古車市場からどんどん姿を消しているというが、それもうなずけるのである。

 デザイン、パフォーマンス等のすべてにおいて突出するキャデラックCTS-V。間違いなく現代アメ車の中でも数少ない名車の1台である。

ミシュランと共同開発したというパイロットスーパースポーツ。フロント255/40R19、リア285/35R19インチ。ホイール内にはブレンボ製ブレーキを備える。

センターのツインマフラーからは、アイドリングから野太いサウンドを響かせる。専用設計で片側80φ以上という極太ものだ。

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