TEST RIDE

[試乗記]

日本の道路上でも無敵の存在感を発揮

キャデラック エスカレード (CADILLAC ESCALADE)

初期ロットの中古車に値ごろ感あり

アメリカンSUVの雄は、やはり中古車になっても魅力的だった。というか、今こそ初期ロットの程度良好車を狙うべき。シャインストリートのエスカレードを取材して本気で思ったのだった。

更新日:2017.06.05

文/吉田昌宏 写真/古閑章郎

取材協力/シャインストリートジャパン TEL 045-507-6464 [ホームページ] [詳細情報]

中古車としての選択肢は思いのほか豊富

 2013年秋のロサンゼルスオートショーで初公開された4代目キャデラックエスカレードは、2014年に正規輸入されることが発表され、2015年2月から日本での正式発売が開始されている。

 だが現状、このクラスになると直輸入されたモノも数多く、「あえてD車で」と思わなければ、中古車としての選択肢は思いのほか豊富である。

 新型キャデラックエスカレードは、デビュー当時において本国ベースモデル価格が旧モデル比で6000ドルほど高くなっており、日本での価格も一千万円超えを果たす超高級車となった。

 新世代のフレーム構造を持つ新型モデルではあるが、ホイールベースは旧モデルと同様の2950ミリであり、サスペンション構造もフロントが独立懸架、リアがリジッドという基本形式に大きな変更はない。

 また、6.2リッターV8OHVエンジンも旧モデルからの流用となるが、直接燃料噴射システムや気筒休止機構、可変バルブタイミング機構などが搭載され、最高出力は426hp、最大トルク63.5kg-mを発生させる。それぞれ旧モデル比で4%と10%増強されているという。

 このエンジンにはデビュー当初は6速ATが組み合わされていたが、2015年後半から8速ATに進化している。ちなみに、試乗車は2015年モデルの前期モデルということで6速ATモデルである。

 ということで取材車は、2015年型(2014年12月登録)のLUXURY。7人乗り仕様の7000キロ走行車である。

日本の道路上でも無敵の存在感を発揮する。

リアの縦長テールも、歴代随一のまとまり感。

6.2リッターV8ガソリン直噴エンジンは、最高出力は426hp、最大トルクは63.5kg-mとそれぞれ4%と10%増強されている。気筒休止システムが頻繁にV4運転へシフトする制御になり、低燃費に貢献。

圧巻のデザイン的迫力

 まずは実車を前にして感じるデザイン的な洗練度。インテリアも含め、キャデラックデザインの突出した迫力は圧巻である。インテリアも、ハンドクラフトされたというだけあって、質感ともども高級車としての満足感は非常に高い。個人的にも「圧巻の室内空間」と本気で驚いた。

 つぎに静粛性の向上。静粛性は驚くほどのレベルアップでロードノイズの遮音もすばらしく、一般道で勢いよくアクセルを踏みつけても、室内に侵入してくるエンジンノイズもほとんどない。

 また走りの質感が格段に良くなり、特にステアリングの正確性は雲泥の差である(街中を走った程度もわかる)。いわゆるトラックベース的な曖昧さはまったくなくなり、たとえばベンツから乗り換えても違和感がないと言えるほど引き締まった印象である。

 ステアリングやペダル類は以前と同様に軽いが、ステアリングと同様にブレーキフィールの頼もしさも著しく向上している。制動力そのものの進化も明らかだが、一定の踏力でピタリと上品に停止できるのがなにより素晴らしい。

使用されるマテリアルやカラーリングを含め、品格を感じさせるインテリア。他のスポーティなキャデラックとも一線を画すゴージャス感と洗練性を備える。

メーターの液晶等も洗練されたものになった。

座面の大きく質感の高いシートは、心地良い室内空間を作り出す一因。ハンドクラフトの質感も全体的に高い。

こんな二台が自宅にあったらこの上なく幸せだろう。

熟成されたパワートレインだからこそ逆に安心

 そういう意味では、高速等では以前よりも高い速度アベレージで走ることが可能であり、高速スタビリティの安定感も抜群に高まり、一方で街乗りでの乗り心地も高級車としてのレベルを維持しており、第三世代となるマグネティックライドサスペンションを含めた足回り全般の進化によるものが大きいのだろう。

 新型モデルにおける進化は圧倒的なものばかりだが、唯一気になる点があるとすればエンジンだろうか。もちろん、エンジンも進化しているし燃費効率にも気を使い始めているが、車重2.6トンのボディに対して旧モデル比で4%と10%増強のみでは、くわえて初期の6速ATとの組み合わせでは、旧モデル比からのスペック的進化はさほど感じない。

 だが現実的には、旧型から使い続け熟成されたパワートレインだからこそ逆に安心できるともいえるわけで、この型のトラブル事例がまったく出ないというのは、実際にそういうことの結果とも言えるのである。実際に走っても、トルクフルなアメリカンSUV風情は十分に感じられるし、満足度は俄然高い。

ホイールを含め、すべては重製品のままのフルノーマル。程度は非常に良好で、逆に驚くほどのレベル。

7人乗りの室内は、セカンドシート以降も広々としている。さすが世界中から憧れるラグジュアリーSUV。

やはり「本物には敵わない」と無敵の存在感

 全体のパッケージとしては十分なまとまりを感じさせ、先般のアメリカ大統領就任式や韓国大統領就任式においても使われていた、世界中で大人気のエスカレードは、やはり日本の道路上でも無敵の存在感を発揮する。

 最近では、国産ミニバンでもかなり高額な商品が存在し、「これで十分」と多くのユーザーが飛びついているという話をよく聞く。

 トヨタアルファードでも800万円くらいするものがあるというから驚きであるが(伝聞なので真偽のほどはわかりませんが)、目の前に見るエスカレードの実車をみてしまうと、やはり「本物には敵わない」と、素直に思ってしまうのである。

 流行りモノ好きなにわかファンであったなら、エスカレードのファーストロットを当然狙っていただろうが、それから3年が経ち落ち着きを見せてきた現在、狙うべきはそうした方々が手放した程度良好の中古車である。

 今回の1台は、4台も持つ愛車の1台として7000キロの距離を刻んだに過ぎず、内装のコンディションが驚くほど良好かつクリーンである。

 今ならその程度良好な中古車が値ごろ感たっぷりな価格帯で入手可能であるから、この先、長い年月をかけエスカレードとともに良好な関係を築いていきたいと考えるなら、ベストな車両といっても過言ではないのである。

走り出したエスカレードは、低速から極太トルクを感じさせ、車重2.6トンのスーパーヘビー級のボディを力強く走らせる。車重をものともしない軽々走らせるパワー感はさすがであり、まさにアメリカを感じさせる部分である。大人5人が乗車してもまったく力感は変わらず淡々とかつ力強く走る。

センターコンソールから続く張り出しが一段と大きくなって、助手席との距離感が広くなった。ボディの見切りは若干気になる程度で、慣れれば神経質にならずに済む。それにしてもエスカレードに乗っていると自分がものすごく裕福で強くなった気がするのは気のせいだろうか。

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