エイブルの原氏とは長い付き合いだからよく知っているのだが、常にストレートな物言いが気持ちよく(時にストレートすぎて心配になるくらいなのだが)、だからこそ嘘偽りがなくて安心できる。
恐らく今現在エイブルで車両を購入されている大半の方々がそういう原氏を知っていると思うが、だからエイブルで扱っているサードカマロやジープワゴニアに興味を持つ方には必ずや「何も起きないはずはないですからね」と釘をさす。
といっても、これは「壊れた時の弁解」を先に述べているわけではない。「新車のトヨタ車を買ったようにはいかない」と、機械として20年以上経った車両を持つ心構えとして「何か起こるかも」と教えてくれ、さらに実際に何かあった時には全力でサポートしてくれる。
また、事前に対処したければ、それなりの方法を指南してくれるから、そういった心構えができている方には逆に相当親身なショップだとわかるだろう。
何も考えずに「ただカッコイイから」と買ってしまい、後々泣きを見る若者を大勢見てきた経験からこその指南でもある(だからといって敷居の高い旧車ショップではないからみなさんにおすすめしたいと思っている)。
一方で、キャデラックCTS-Vのような、比較的新し目の尖った中古車も積極的に取り扱っている。というのも、このご時勢、エコや燃費を考慮した電気自動車への移行を促す政府の働きもある時代に、あえてバカ高い自動車税を支払い、あえて高額なガソリン代をも飲み込んでアメ車に乗りたいと思う方々に相応しい、ザ・アメ車的は車両を紹介したいという思いである。
だからエイブルへ行くと、我々のようなアラフィフ世代のオッサンは目移りして仕方ない。サードカマロやC3コルベットにジープ系ではイーグルやチェロキー、さらには70年代のワゴニアがあり、その一方でダッジラムトラックやCTS-Vにタホがあったりと、その時代を彩った懐かしい車両たちがまだまだ健在しているのだから。
で、そんななかにひと際目立つバンを発見。というか、昨年くらいから何度かお目にかかっていた車両ではあったのだが、その時点ではオーナーカーということでキャブレターの調整等の整備で入庫していただけであり、売り物ではなかった。
だから「スゲー、キレイですね」と言葉は交わすもそれ以上話題にはならなかった車両である。だが今回、そいつに乗れるという。あくまで取材でだが。
詳細を聞けば77年型プリムスボイジャー。本国アメリカにてレストアがされており、日本では各部の調整のみで普通に走っているという。搭載されるエンジンは5.9リッターのV8。それに3速ATが組み合わされる。
このプリムスボイジャーは、1974年から83年まで存在したダッジのBシリーズベースのフルサイズバン。そのプリムスモデルということで、日本でもあまり見かけることはないレアなバン。だが、その風貌やカラーリングには何とも愛嬌があり、アメ車らしい。
で、レストア済みとの車両だけに、見た目のコンディションは驚くほど上々である。ツートーンのカラーやピンストライプがキレイなボディから同系色でまとめられた室内に至るまで。
それにしても雰囲気がある。単なるバンにすぎないのに、ボイジャーの周りだけ空気感が違う。ただ路肩に止まっているだけなのに、まるで骨董品のような風合いを醸し出している。
内外装の各部を見ても、ひとつひとつがデザインされていて、そのどれもが華奢な感じなのだが、どれもがオシャレに見えるし、ちょっと触れた限りでは乗るだけじゃなく、見ているだけでも楽しい存在だった(現代の商用バンとは大違いだ)。
早速試乗。行きは助手席で。帰りは運転席にて乗らせていただいたが、行きの助手席は思わず声が出た。「足もと狭っ」。アストロ等でも助手席の足もとのスペースの小ささは経験済みだが、それに輪をかけたような狭さ(笑)。それでも至極快適であり、何より驚いたのが異音騒音低級音のなさ。ゴツゴツ、ガタガタといった類の音はほとんどなく、V8サウンドが小さく響く。
一方、運転席ではそのボディの大きさに驚く。見た目はかなり小さく見えるのに、実際に動かすと結構な大きさを感じる。現代のトヨタハイエースよりも若干大きいような感じで、だからそういう意味での室内空間の大きさはかなり使えるものといえるだろう。
また、ステアリングの反応やブレーキのフィールにも、結構普通に走れる要素が多く、さすがはレストア車なのか、それともベース車がもともこのような感じなのか、はつかめないが、それでも今の時代の公道を十分に走れるだけの印象を得たのは驚きだった。取材はちょうど一週間前だから、台風が去ったあとの夏日。にもかかわらずエンジンは常に一発始動だし、終始安定していたことも報告しておこう。
ただし、今年の猛暑を乗り切ったとはいえ、「もともとが20畳の広さに6畳分くらいのエアコン機能しかない」ということで、効いているエアコン自体のキャパが70年代ということらしく、このままでももちろん乗れるが、費用をかけより効くエアコンにするか、といった検討事項はあるという。
こういったことを事前にしっかり説明してくれるのがエイブルだし、だからこそ買い手も納得して購入することができるのであろう。
それにしても、40年、50年前のアメ車をみるたびにいつも「アメリカの偉大さ」を思い知らされる。単なるバンであるにもかかわらずのこのデザイン。ホントに凄いと思う。だから「今それに乗りたい、欲しい」と思う方の気持ちもほんとによくわかる。
で、そんなクラシックなマシンに今乗れば、それこそ生活が一変するだろう。
もちろん、古い機械である以上「何かが起こる可能性」は否めないが、それでも入手すれば普段走る何気ない道がまったく違う景色に見えるだろうし、出かける場所や食事先、身につける衣服も変わるかもしれない。
ま、ちょっと大げさに言えば、コイツによって新しい人生を手にすることが可能になるかもしれないのである。
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