TEST RIDE

[試乗記]

現代のクルマが失ってしまった「モノ」が詰まっている

1991 ジープラングラー

音も含めてまるでゴーカートに乗っているような気分

1991年型ジープラングラーを取材した。

更新日:2025.09.04

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 044-857-1836 [ホームページ] [詳細情報]

34年前のラングラーが素晴らしく魅力的だった

 91年型だから通称YJラングラーである。それまでのCJジープから1987年に登場したYJラングラー。「ラングラー」というネーミングが付いたのもこの時からである。

 ちなみにラングラーはYJ、TJ、JKと続き現行型JLへと進化し続けている。

 全くの余談であるが、筆者が大学一年生の時に購入を検討したのがYJラングラー。受験勉強中にたまたま見ていたフジテレビ月9ドラマの大学生カップルがラングラーのホロを外しオープン状態で海辺を走っているシーンを見て以来ずっと憧れていた。

 その後実際に免許証を取得していざ購入という段になって、自動車部の知人の影響でユーノスロードスターを購入して以降、ジープとの繋がりは全くなくなってしまっていた。が、その十数年後に今の仕事に就き始めて乗ったジープがTJラングラーであった。

▲両は91年型のディーラー車で、走行約5万2000キロ、ソフトトップの5速MT仕様。

▲現時点でタイヤは純正よりも大きなサイズを、スペーサーをかませて履かせているが、純正サイズもあるから履き直すことも可能。

 丸目ヘッドライトの赤い2ドアボディのオートマチックギアの広報車。よってジープの原体験はTJであるから、今回のYJは初めての経験となる。

 ということで、まずはYJラングラーの概略を。CJジープの後継として87年に登場したYJ。角目ヘッドライトを持ち、ホイールベースが延長される等街を走れるジープとして改良。

 クーラーやパワーステアリングが付き、ソフトトップとオプション的存在でハードトップを選ぶことが可能であった。

 デビュー当時の搭載エンジンは2.5リッター直4、4.2リッター直6の二種類。ミッションは3速ATと5速MT。そして91年には直6エンジンの排気量が4.2から4.0へ変更される。

 ということで、取材車の91年型は4リッター直6エンジン搭載車。ミッションは5速MTである。

<4リッター直列6気筒OHV>
◼︎最高出力:180ps/4750rpm
◼︎最大トルク:30.4kg-m/4000rpm

<車両スペック>
◼︎全長:3885ミリ
◼︎全幅:1730ミリ
◼︎全高:1840ミリ
◼︎ホイールベース:2375ミリ
◼︎車重:1490kg

▲搭載されるエンジンは4リッター直列6気筒OHV。

▲ラングラーといえば丸目だと思っている方が多いかもしれないが、デビュー当初は角目であった。

▲ショートホイールベースで走らせると機敏に動き楽しい。

 ということで試乗。まずは連日の猛暑日。取材日も35度を越えていたから若干の心配がつきまとうが、またしても難なくドライブ可能であった。さすがはエイブル車。現車はエイブルにて整備や車検を行っている。

 エンジンは一発始動。クーラーも普通に効くし、ソフトトップであってもいたって快適な空間が得られる。ただし、初めてのYJ。そして朝一での試乗ということで、全くの未知なるラングラーに少々苦戦もした。

 まずはフェンダーミラー(笑)に慣れるまでが怖かった。そして音。走り出して速度が上がるにつれ高まるエンジン音、幌を通じて感じる音、そしてリアロールバー周辺からの音にサスペンションや路面からの音といった音の集合体に慣れるまでに時間がかかった。

 だが一方で、5速MTの感触は良好で、クラッチも全く違和感なく操作可能。繋ぎ辛さは微塵もなく、軽いクラッチペダルに好感。シフト操作はスポーティなものではないが、ゲートが明確でクラッチの難しさも皆無であるから、正直、めちゃくちゃ楽しい。

▲室内インパネの雰囲気やメーターがずらり並んだデザインが素晴らしく魅力的に見える。インパネの状態も非常に良い。

▲横並びの5連メーターは男心をくすぐる。

▲5速MTは感触は良好でゲートは明確。

▲軽いクラッチペダルで違和感なく操作可能。

 ステアリングの反応やボディの見切りの良さも加わり、古い時代のラングラーという割には不満&不安を感じる部分が意外に少ないのも嬉しい。

 上記スペックを見ればわかるが、小さく短く軽い。軽いとは現代の最新ラングラー(2000kgはある)と比較しても圧倒的に軽く、とにかく軽快である。そしてMTだからエンジンをダイレクトに操れて慣れると抜群に面白い。各部の音も含めてまるでゴーカートに乗っているような気分であった=今の時代のクルマのように洗練はされていない(笑)

 聞けば、角目ヘッドライトのYJは今、非常に人気が高ということで中古車市場での価値も高まっているという。

 実際、現車を見て思ったが、室内インパネの雰囲気やメーターがずらり並んだデザインが素晴らしく魅力的に見えるし、シートに座った瞬間の見晴らしやステアリング&シフトノブの位置も抜群に良いし、古き良き時代のアメリカ車の魅力が詰まっていると思う。これはTJ以降のラングラーにはない魅力である。

 すなわち、現代のクルマたちが快適性や安全性を高めることを重視するあまり失ってしまった「モノ」が全て詰まっている!

▲下方にあるクーラーの吹き出し口。クーラーの効きは上々。

▲シートの状態は想像以上に良い。またシートに座った瞬間の見晴らしやステアリング&シフトノブの位置も抜群に良いから運転しやすい。

▲91年まではシートベルト無しの2名乗車。ちなみに92年からはシートベルトが装備される。

 だから、現代的なクルマを求める向きには全く合わないが、そういうものを求めず、楽しさだけを追求したようなクルマを求めるなら今回のYJは最高の一台になり得る可能性を秘めている。

 なお、今回の車両は91年型のディーラー車で、走行約5万2000キロ、ソフトトップの5速MT仕様。そして現時点でタイヤは純正よりも大きなサイズを、スペーサーをかませて履かせているが、純正サイズも持っているということで、履き直すことも可能。

 それ以外は基本、純正状態を保っていることもあり、それもまた非常に魅力的。一方で、ソフトトップはさすがに快適とは言い難い。もちろん雨風は十分にしのげる状態であるが、各部に多少の隙間が見られるのは事実であり、そこをどう考えるか。

 でもまあ、34年前の車両ということを考えれば、十分納得出来るだけの「質」は保たれていると思う。

 少なくともソフトトップ以外の、クルマとしての性能やフィーリングは最高レベルに近い! ハードトップを探してみるというのも手だろうし、常にフルオープン状態で楽しむのも手だろう。

 それにしても34年前のラングラーがこんなにも魅力的な乗り物であるとは・・・・。それもこれも、旧時代のジープに詳しいエイブルのようなショップがあってこそなのだろう。

▲操作系に慣れれば現代の道路事情でも普通に乗れる。

▲ダイレクトな操作感に心奪われる。MT車の操作性も非常に良い。

▲とにかく絵になる存在。素晴らしくカッコイイ。

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