まず3代目デュランゴのスタイルだが、全体的にはやや丸みを帯びたスクエアなフォルムで、ジープ・グランドチェロキーを一回り大きくしたといった感じ。現代のSUVとしては比較的オーソドックスと言えるスタイルで、良くも悪くも初代や2代目のようなトラック的な雰囲気は皆無となった。
フロントマスクはダッジの象徴とも言える十字形のグリルとなっているが、お馴染みの牡羊のエンブレムが消えたこともあり、初代や2代目と比べると落ち着いた大人の雰囲気になっており、リンカーン・ナビゲーターやキャデラック・エスカレードにも通じるアメリカ的な高級感も感じることができる。リアエンドのデザインに関しては、どちらかというと欧州車的な雰囲気が強く、BMWのXシリーズに近い印象も受ける。
筆者が新型デュランゴのエクステリアから受けた印象としては「初代や2代目ほどの強烈なインパクトがない代わりに、誰にでもすんなりと受け入れられる分かりやすい高級感と重厚感を併せ持ったデザイン」と言った感じとなる。
次にインテリアについてだが、ここは初代や2代目からは格段に進歩しているポイント。インパネ周辺のデザインはシンプルでひとつひとつのパーツが大きくしっかりしていることもあって、操作性が非常に良いのが特徴。また、全体的な質感も良好で、とくにシートやドアトリムの革の部分の高級感は日本や欧州のライバルと比較しても遜色ないレベル。唯一プラスチックパーツの質感だけは、これはいかにもアメリカ的な雰囲気ではあるのだが、それにしてもかつてのアメ車にあったような安っぽさは払拭されている。天井などの内張りの仕上げも上々で、昔からアメ車に携わって来た筆者などからすれば「アメリカンSUVも随分変わったなぁ」といった印象を受ける。
エクステリアとインテリアを一通りチェックしたところで試乗開始。今回試乗したのは5.7リッターV8ヘミを搭載した最上級グレードの『CITADEL』。ミッションは5AT。駆動方式はAWDである。
まずシートに座りステアリングとシート位置をセットする。ステアリングが電動テレスコピックということもあり、シートポジションは比較的すんなりと決まる。シートは座面も背面もアメリカンサイズで大きめながら、座り心地は欧州車なみに固くしっかりしている。サイドミラーを調節した後、ステアリングを握って正面を見ると、アイポイントはそれなりに高いのだが、ボディの見切りが良いこともあって、それほど大きなクルマに乗っているという感じはない。
ブレーキを軽く踏んでエンジンスターターボタンを押すと、現代的なV8らしい抑えた感じの低音を発してエンジンが始動。1分ほど待って軽くレーシングしてみると、タコメーターの針が軽やかに上下するが、排気音はそれほど大きくはないしエンジンの揺れもほとんど感じない。デュランゴに限ったことではないが、現代のアメリカンSUVは、一昔前のアメリカンV8のようなドドッドドッといった鼓動のようなアイドリングはしないし、エンジンを吹かしても猛獣の咆哮ような迫力あるサウンドは発しない。あくまでジェントルだ。古いアメ車ファンの中には、この変化を指して「アメ車らしくない」と考える人もいるようだが、筆者的には当然の進化と捉えている。
ウインカーやハザードランプ、ヘッドライトやエアコンといったスイッチ類を一通り確認したら、いよいよ公道に出る。走り出しはいたってスムーズ。パワフルなV8ヘミ搭載車ということもあって、アクセルにほとんど力を込めなくてもスルスルと加速していく感じはアメリカンSUVならではの感覚といえる。
出発後しばらくは、車両感覚を掴む意味もあって交通量の少ない裏道をゆっくりと走ってみたのだが、最初に着座した時に感じた以上にボディサイズの大きさは感じなかった。運転時の感覚としては、一回り小さいはずのジープ・グランドチェロキーやシボレー・トレイルブレイザー、フォード・エクスプローラーあたりと大差ない印象を受けた。ボディを小さく感じた要因としては、エンジンパワーがボディサイズに勝っていたことと、適度なステアリングの軽さ、さらには思いのほか小回りの利く足回りなどが影響していると思われるが、いずれにしろ実際以上にボディを小さく感じるということは、クルマとして優秀であるということの証明だろう。
5分ほど裏道を走った後、いよいよ大通りに出る。たまたま交通量が少なかったこともあり、およそ100メートルほどを一気に加速してみたのだが、思いのほかスピードが出てしまい少々ビックリした。モータートレンドのテストでは1/4マイルを15.5秒で走っていたが、なるほどといった感じの俊足ぶりである。ただし、確かに速いことは速いのだが、その速さに荒々しさは皆無。以前グランドチェロキーのSRT–8に初めて試乗した際には、その獰猛なまでの加速に驚いたものだが、現行デュランゴの加速力というのは「知らない間にスピードが出てしまう」という感じで、排気音もそれほど大きくなく、あくまでジェントルな雰囲気は損なわない範囲だった。この辺はメーカーが意識して味付けを変えているのだろう。
今回はメーカーの広報車ではなく、ディーラーの販売車両を借りての試乗だったので、あまりクルマに負担をかけない範囲でレーンチェンジやブレーキのタッチを色々と試してみたのだが、少なくともオンロードを走らせた限りの実力で言えば、現行デュランゴの実力は世界的に見てもSUVの中ではトップクラスと言っても差し支えないレベル。初代デュランゴは走りの良さを最大の売りにしていたクルマだが、単純に走りのレベルを比較するなら、その速さも質感も現行モデルの方が数段上である。
約15分ほどの短い時間ではあったが、今回の試乗では新型デュランゴの実力を十分に体験することができた。その結果分かったのは、デュランゴは3代目にしてようやくモデルとしての完成の域に達したということだ。
初代デュランゴは、コンパクトなボディに強力なV8エンジンや3列シートといった要素を凝縮した唯一無二のミッドサイズSUVだった。2代目デュランゴは、クラスを超えた積載性と乗用車ライクな乗り心地を追求した実用性満点のSUVだった。そしてこの3代目デュランゴは、見た目も中身も走りも上質な、世界トップレベルのラグジュアリーSUVとして生まれ変わった。一般的なモデルのように、初代から2代目、3代目と同一線上に正常進化したわけではない。試行錯誤の末に辿り着いたのが現行のデュランゴの形と言えるだろう。
2011年型 ダッジ デュランゴ 試乗リポート Part1
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