リンカーンブランドのパーソナルラグジュアリーカーとして長い歴史を保つコンチネンタルの「マーク」シリーズ。その7代目、マーク7は、1984年に2ドアのパーソナルラグジュアリークーペとしてデビューしている。
当時のリンカーンはこのクルマによって、ブランドの若返りを図りたいと考え、マーク7にスポーティなグランドツーリングカーとしての性格を与えてたのである。感覚的には当時のベンツSECもしくはトヨタソアラ? のような位置づけだったアメ車である。
80年代になるとマークシリーズにも小型化の波がおとずれ、それまでの直線的なゴシック調スタイルを改め、ヨーロッパ的なラインに変身を遂げている。当時のサンダーバード、マーキュリークーガー(マーク7と兄弟車)とこのマーク7は、そういったヨーロッパ調スタイルの先駆けになったのクルマなのである。
マーク7は、1993年によりエアロダイナミクスなフォルムを持ったマーク8へとバトンタッチされるまでの10年間、人気モデルとしてアメリカの人々に愛されてきた。ここで紹介する92年型はつまり、マーク7の最終モデルということになる。
最終モデルということで、91年型から92年型にかけては大きな変更もなく、熟成されたモデルといえる。
エンジンは5リッターV8で最高出力は225hp。これに4速ATが組み合わされている。駆動方式はもちろんFR。だが、ライバルのキャデラックは当時からこのラグジュアリークラスに積極的にFFモデルを投入していたので、リンカーンがFRを守ったことで、当時アメリカではキャデラックよりも人気のあるブランドになっていた。
バリエーションはスポーティなLSCとデザイナーズブランドのビルブラスの2グレード。ビルブラスはラグジュアリーモデルという位置づけだが、91モデルからはLSCと同じ足回りでスポーティなハンドリングも持っていた。
ここで紹介しているリンカーンはそのLSC。マフラーには代久の手が入っているが、その他は各部の調整のみで、あとは基本的にノーマルである。
編集部で借り出したリンカーンマーク7に乗り、急いでお台場を目指す。シートとミラーを調整し、ガソリンスタンドへ行き、ほとんど空のガソリンタンクに8200円分のガソリンを入れ(ちょっとビックリ!!)、そのまま一般道をひた走る。
当日は、雨が降り終え止んだ直後、といった感じで、路面はまだまだ濡れていた。普段なら「慣れないクルマに乗るのは気が進まない」といって断るような天候ではあったが、そんなこと言ってられない。
しばらく走ると、このクルマに違和感を持たない自分がいた。それは適度な重さを保ったステアリングのおかげであり、タッチの優しいブレーキのおかげであり、回転と共に盛り上がるトルク感が頼もしいエンジンのおかげであり、「これぞアメ車」と叫びたくなるようなフカフカのレザーシートのおかげであった。
80年代からのアメ車は小型化の影響であまり面白くないという趣旨の発言を聞くことが多かったが、たしかに昔のような大柄ボディにめちゃ強力なエンジンを搭載して、抜群の威圧感で他を圧倒するような迫力、魅力、威力はないが、乗ると意外にも自動車としてまともである。かなり優秀なアメ車と言ってもいい。
小型化といえでも十分に大きく感じるボディの見切りは抜群にいいし、ステアリングの反応も軽いが十分に感じるし、エンジンパワーも力強い。だから乗ると意外にも「いいじゃん」っていう、新鮮な驚きに包まれる。
お台場に着いて早速ボディ全体を見渡してみると、第二の驚きがやってきた。このクルマ、2ドアクーペなのにセルシオよりも全長が長いのだ(実は今、弊社にはコルベットの他に旧セルシオもある…)。いわゆるアメリカンクーぺの醍醐味ってやつ。さらに標準搭載のエアサスの乗り心地の良さ。
スペックを見ると全長5165ミリ、全幅1810ミリ、全高1390ミリに車重は1680kgとある。エンジンは5リッターV8OHV、225hp、トルク41.4kg-mを発生させる。
このスペックを知った上でお台場周辺を走った印象は、とにかく優雅だった。そして伊達。乗り心地の当たりの柔らかさやアクセルペダルを踏んだ時の加速の仕方などは、ホントに上品。日本車で言うところの旧ソアラのようなスポーティクーぺとは大違いだった。
ただ、スタイリングにその優雅さが伝わっていない、正直あまり洗練されているとは思えないデザインが残念で仕方がない…。
みなさんが良く言う「古き良き時代」というフレーズにこのマーク7が含まれているとは思わないが(もっと全然前の時代のことを言うのだろうが)、それでも格段に進化し、変わり果てた現代のアメ車に慣れてしまっている身にとっては、この80年から90年代にかけてのマーク7の走りというのは、非常に趣き深いアメ車なのである。
330,000円
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