このクルマのデビュー当時は、マスタングが復刻し、チャージャーや300Cにマグナムといったいまだ現役バリバリの人気車たちがデビューした頃と重なっているから、正直、あまり良いイメージがない。
しかも当時のジープ系車両といえば、ラングラーすらあまり評価が高くなく、日本での人気もそれほどだったと記憶する。個人的にも、コマンダーの広報車両に乗っていた記憶があるが、「何てことないSUV」という感じだったと思う。
というか、申し訳ないが、乗ってまともに何かを感じようとすら思わなかった。2006年当時のジープに対してはまさにそんな感じだった。
それから数年が経ち、ラングラーには4ドアのアンリミテッドが登場しており、フォードからFFのエクスプローラーがデビュー。世の中全般がSUV一辺倒になっていくと、同時にアウトドアブームと重なって、SUV&ミニバンたちが世界中の車両販売の中心になっていった。
その頃には、ジープブランドはラインナップから一新され、車両の質感やレベルも格段に向上しており、それと同時にジープ系ブランドの旧車に対する世の評価も変わっていき、その流れは2019年の今なお続いている。というかジープブーム真っ只中である。
そんな時に2007年型のジープコマンダーが入荷したという。つい先日下取りに入ったということであり、不動車や過走行車ではないというから驚いた。走行距離が約3万4000キロのディーラー車である!
とはいえ、すでに12年前の車両であるから、あまり期待はせずに現場に向かった。
さて、ジープコマンダーであるが、2006年から日本で正規販売が開始されている。そして2009年に販売終了ということで、実質4年間のみの販売だった。
当時の販売グレードは、4.7リッターV8SOHCエンジンと5.7リッターV8HEMIの2種類であり、後者の販売価格が700万円越えということで、4年間の短命に終わった理由のひとつであろうと思う。当時のジープブランド車にしては、衝撃的に高価だったから。
今回の取材車は、その前者となる4.7リッターV8SOHCエンジン搭載モデルである。
超久々となるコマンダーの実車。改めて今見ると、驚くほどいい。まず、デザインが素晴らしい。フロントマスクはセブンスロットグリルを持つジープ歴代車に通じるものだが、全体のシルエットが何となくワゴニアに見える。
2006年当時、世は復刻ブームだっただけに、ジープもワゴニアデザインの復刻版としてコマンダーを製作したのかもしれない。
しかも、ジープモデルでは稀有な3列シートを持つ余裕の居住性の持ち主。プラスV8エンジン搭載ということなのだから、直4、V6がメインの今の時代に登場していれば、もっともっと売れただろうし、ジープのフラッグシップとしてオフロードSUVの頂点を狙えた存在だったかもしれない、とつくづく思うのである。
個人的には、このデザインの魅力がコマンダーの価値の5割を占めていると思う。さらにV8エンジンであるということが2割、そして実際に運転したときの満足感が3割を占める。
それほど運転していて快適かつ心地良い存在だとは、当時はまったく気づかなかったのである。
搭載される4.7リッターV8SOHCエンジンは、231ps、最大トルク41.8kg-mを発生させ、5速ATと組み合わされる。この5速ATは、オートスティックの5速ATであり、シフトレバーを左右に動かすことでマニュアルシフトが可能なAT。とはいえ、40kg-mを越える巨大なトルクによって、街中を非常に気持ちよく走らせる。
オフロード走破性のベースであるシャシーは、モノコックに強靭なラダーフレームを埋め込むというジープ特有のボディ構造であり、今乗ってもめちゃくちゃシッカリしている。
事前に、「結構ガチャガチャしたオフ車」というイメージを持っていただけに、驚くほど硬質なボディと巨大なトルクで悠然と走らせるその走りに、そして非常に静かな室内の遮音性に、驚きと感動を覚えたのである。右ハンドルも問題なし。ブレーキもまったく普通に効くから、ネガティブ要素がほとんどない。
同時に、「ステアリングの切れないジープ」という思いもあったのだが、この手のサイズのSUVにもかかわらず最小回転半径が5.6mと小さく、非常に小回りが効くことにも驚いた。
すなわち、これまでジープ車に対して抱いていた負のイメージがまったくなく、「こんなに良いSUVだったのか」と改めて感心したのである。
とはいえ、好みにあわない部分がなかったわけではない。それは、リアウインドーの視認性。あくまで個人的な運転スタイルに合わないということであるから、まったく気にしない方もいるはずだが、とにかくリアの視認性が悪い(笑)。
それは、ジープ初の3列シートとして採用されたシート配列のせいでもある。1列目、2列目、3列目になるほど着座位置が高くなるシート配列がなされており、それに比例して2列目以降は天井も高くなるよう設計されており、だからリアウインドー前には常に3列目シートのヘッドレストが見える。
もちろん、大きいサイドミラーで後方確認は可能だから問題はないが、ちょっと気になった部分ではあった。
それ以外には、ジープらしいオールドテイストなスタイリングにV8エンジンが搭載され、非常にシッカリしたボディと足が組み合わされ、さらに中古車としても驚くほどクリーンかつ走行距離が少ないという事実を鑑みれば、この手のオフ車を好む方々には最高レベルの一台ではないかと本気で思うのである。
しかも、このデザインとV8エンジンの組み合わせという、歴代ジープ車の中でもレアな存在ということにも惹かれるし、本家ワゴニアにはないメカニズムの安定感&安心感もあるわけで。
もちろん、ジープ本来の悪路走破性の高さもあるから、かつてのフラッグシップモデルは、ジープブームである今だからこそ、映える存在とも言えるのである。
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