たとえば、C4コルベット辺りだと乗り込む時に気合いが必要だった。「よっこらしょ」。ダッシュボードが迫っていて、スカットルが高く、その間から前を覗くようなコックピット。走り出すと、タイヤが段差を乗り越えるたびに、ドンッと衝撃がきて、目の前の巨大なボンネットがバタバタと動き、シャシーがシェイクして、クルマが横っ飛びする。
で、ステアリングを切ると、タイヤのグリップだけでグワッと曲がっていこうとする。でもそれを全部承知の上で、C4コルベットは豪快で面白いと言っていた。だがC5になり、そういったある種のクセは激減し、さらにC6になり、ほぼ絶滅したといっても過言ではない。
ニューコルベットC6には驚いた。実にいい。コクピットへの収まり具合や視界から、そして何気ない走りから高速走行に至るまで、C5コルベットの良さを生かしつつ、さらなる進化を遂げたコルベットC6は、今や世界最良のFRスポーツカーになったと断言できる。前後、側面から見たシルエット、それに加え圧倒的な全幅の広さが生むボリューム感は、他車にはない特徴だ。
C5と比較して圧倒的に小さくなったことも見逃せない。ホイールベースを若干延ばし前後オーバーハングをさらに切り詰めるなどして、スポーツカーとしての定石をきちんと守っている。
地面に座るかのごとく低い位置にあるシートに腰かける。「先代よりも若干高いかなぁ」とも思わなくはないが、それでも流行のスポーティカーと比較すれば十分低い着座位置。ドライバーのアイポイントから見える左右フェンダーの盛り上がりは、C5同様きっちりある。
言い忘れたが、今度のC6は、乗り込む前からして驚かされる。日本車もビックリするほどのハイテク化が施されているのだ。ドアノブは付いておらず、ボタンによるドア開閉を行い、さらにエンジン始動にもキーはいらない。ステアリング右に位置するスターターボタンを押して始動&停止を行うだけだ。
で、そのボタンを押せば6リッターLS2エンジンはいとも簡単に目覚め、軽い4速ATのシフトノブをDレンジに入れれば(シフトノブを握った感覚がC5そっくりなのに驚きつつ)、あっけなく動き始める。
404ps、トルク55.6kg‐mを発生する高性能エンジンには、気むずかしいところが微塵もなく、たとえば渋滞の中でも、1500kgの車体をアイドリング状態で軽々クリープさせることが可能である。
アクセルペダルのフィーリングも軽く、ステアリングにダルな感じは微塵もない。意図的に路面の段差を通過してみたが、飛躍的に向上したボディ剛性の恩恵もあって、ボディはまったく動じない。さらに乗り心地が格段にいい。C5では聞こえていた室内からキシミ音も皆無に近く、総じて硬質なドイツ車に乗っているかのごとくである。
とは言え、アクセルを踏み込めば、ドゥルル…と独特のビートを刻みアメ車としての真骨頂を味わわせてくれ、「ああ、やっぱりアメ車だな」と胸をなで下ろす。
このニューコルベットのライバルはポルシェやフェラーリだ。たしかに乗ると、高性能な感じが漂い、少なからずあるポルシェ試乗時の記憶と比較しても、C6コルベットの凄さが身にしみる。最新のポルシェと比較しても、全長はほぼ同じ。パワーで勝り、街中での珍しさやスタイルのアグレッシブさでも寄せ付けず、何より価格がポルシェの2/3の程度。
C6の価値は断然高い。
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