TEST RIDE

[試乗記]

ガレージダイバンで見つけた90年代のトランザムMTモデル

1996 ポンテアック ファイヤーバード トランザム

シッカリ手入れをすれば現存する最高の四代目モデルになる可能性あり

今の時代にこういった90年代のアメ車に乗る、ということに非常に興味があった。しかもMT車。果たしてどんな感じなのだろう? 96年型トランザムを取材した。

更新日:2020.02.17

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ガレージダイバン TEL 03-5607-3344 [ホームページ] [詳細情報]

当時のフォースカマロを連想させる

 トランザムとは昔からあまり縁がなく、コダワリのオーナーさんたちが多いという話はよく聞くも、車両の取材をした経験はあまりない。三代目を二度ほど、そして四代目をこれまた二度ほど過去に取材した経験があるくらいで、今回の四代目を入れてちょうど5度目の取材となる。

 ということで、あまり詳しくないし、個人的には「中身はカマロと同じでしょ」程度の知識だが、過去に経験したラムエアモデルが非常にカッコよかったという記憶はあるし、繰り返すが90年代ものは現代の乗り物としてどうか? その部分に注目して取材する。

 さて、この四代目モデルは1994年に登場。それ以前の3代目は、カマロで言うところの「サード」とパーツを共有しているから、この四代目もカマロで言うところの「フォース」にあたる。

 パッと見のスタイルは、流線型のスポーツカーのようだが、室内に入りシートに座ってみるとドライバー側に傾斜のきついフロントウインドーの圧迫感。当時フォースカマロで経験したまったくのそれであった(笑)。「まさしくフォースだわ」。

1996年型ポンテアック ファイヤーバード トランザム。走行82424キロの個体。この車両が現役当時、デザイン等のついてはかなりの罵詈雑言があった。それ以前のトランザムが魅せたマッスル系の迫力がないということで。

パっと見はまさしく流線型のスポーツカーに見えるし、トランザムファンにしてみれば、マッスルカーからスポーツカーへと変貌を遂げたことに対する不満があったのかもしれない。

だが、今の時代に見ると、これはこれで一つのスタイルとして十分に通用するし、乗ると面白いし、さらにマニアック的な存在として非常にオススメだと思う。

真横からみるとフォースカマロっぽさが増すし、前後のオーバーハングの長さが特徴的。

96年型V8エンジン搭載のMT車

 トランザムで言うところの4代目とは、1994年から2002年までをさし、2002年に、これまたカマロと同様にトランザム35年の歴史に終止符を打った。なお、カマロは2010年に5代目が復活しているが、トランザムは否。そのためこの四代目モデルが、トランザム最終モデルということになる。

 取材したモデルは1996年型。この四代目は1998年にマイナーチェンジを行っているから、1996年型はいわゆる四代目の前期モデルにあたる。この1996年時には、V8クーペモデルとV8 WS6ラムエアーの二機種あり、その他にV6モデルも存在していた。

 同時に、V8モデルには6速MTと4速ATが、V6モデルには5速MTと4速ATが組み合わされ、取材車は6速MT車となる。

 また搭載されたV8エンジンは、当時のコルベットやカマロにも搭載されていたLT-1エンジン。当時のスペックは、285hp、最大トルク325lb-ftを発生させる。

 ま、経験上、こういったスペックは旧車の場合はあてにならないことが多く、結果的には今乗ってどうか? が果てしなく重要になる。

搭載されるエンジンは、LT-1と呼ばれるV8エンジン。285@5000rpm、最大トルク325lb-ft@2400rpmを発生させる。MT車だとよりダイレクトにパワーを感じることができる。

室内は、多少のヤレはあるものの、想像以上にクリーンな状態。後付けのナビの跡が見える。それ以外は中古車として気になる部分はないが、運転席とフロントウインドーの傾斜角が現代の車両では味わえないほど近い。

メーター類もシンプルなアナログ形式でもちろんすべて動作確認済み。ドライバーの視線の中央にタコメーターのレッドゾーンとスピードメーターの一番使用する速度域が見えるから運転しやすい。

全体的なデザインのオールド感に包まれながらも、現代で通用するファンな部分を多数持ち合わせる。

「速さ」よりも「楽しさ」重視

 さて、貴重な車両を「ひと回りさせてくれる」というから遠慮なく試乗する。まだアメ車に慣れていない当時はカマロでさえも「デカイな」と常に恐怖を感じていたが、今の時代だとボディはぜんぜん大きく感じない。逆に小さいとすら思える。

 デザインは流線型ではあるが、前後オーバーハングが長く、スポーティな印象はあるが、恐らく走ればめちゃめちゃスポーティってわけではないだろう。この数年、最新のマスタングやカマロやチャレンジャー等に死ぬほど取材で乗っている身からすると、かなり古い感じは否めない。

 ドアは重いし、シート位置はステアリングとの位置関係が微妙だし、足の長さと腕の長さがまったく合わず、調整にかなりの時間がかかる。しかも例のウインドーの圧迫感。

 室内の雰囲気は、いわゆる「アストロ時代」を思い起こさせる質感であり、走り出す前の感想は「全体的なオールド感」に終始する。

 で、しばしの調整後、出発。ギアはストロークの大きいシフトで、イマドキのマスタングやチャレンジャー的なスポーティなものではないが、ゲートが明確でシフトはスムーズ。個人的には、非常にわかりやすくて好きなタイプ。二速から三速へのシフトアップがめちゃめちゃスムーズで気持ちいい。

 クラッチはそれほどの重さはなく、繋ぎもクセがなく、慣れれば坂道発進もまったく苦ではない。ひと言、かなり走らせやすい。

 これに関しては昔からそうなのだが、アメ車のMTは非常に優秀だと思っている。個人的に、これまで何十台ものアメ車MT車を試乗してきたし、個人的な愛車も6台中4台がMT車だった経験から言っても、アメ車のMTはクセがなく、非常に運転しやすいからホントにオススメ(これまでにアメ車のMT車でクセを感じたのは現行マスタング系のみ)。

 ということで、走って500メートルくらいで、「楽しい!」とオールド感を遥かに凌駕するMT車の楽しさに取り付かれてしまった。

ギアはストロークの大きいシフトでスポーティなものではないが、ゲートが明確かつシフトはスムーズ。二速から三速へのシフトアップがめちゃめちゃスムーズで気持ち良く、街中で頻繁に使用する日本の道路事情に適したMT車だと思う。

クラッチの重さは適度なもので、操作性も非常に良い。クセのないクラッチだけに日常使用でもまったく苦もなく使用することができるはずである。

シート自体は非常に秀逸。ホールド性が高くそれでいて体に負担の少ない優れもの。ただし、足の長い方なら問題ないと思うが、クラッチに足を合わせるとステアリングが近くなり過ぎて、調整に時間がかかる(笑)

MTにダイレクトに応えるV8エンジン

 搭載されているLT-1V8も想像を遥かに超える迫力だった。5.7リッターとはいえ285hp。だが、その分低速からのトルク感が充実しており、しかもMT駆動であるからこそ出足から3500rpmくらいにかけてが非常にオイシイ領域でモロにV8サウンドが楽しめる。スペック上の最大トルクの発生回転数は2400rpmだから、街中での走行が非常に充実しているし、クラッチを上げるだけでアクセルを煽らずとも発進できる。

 実際にレッドゾーンは5200rpmだし、最大パワーの発生回転数がスペック上は5000rpmとなっているから、もうひと領域踏み込める余力を残しているのだが、借り物だし、全開はオーナーさんの特権ということであえて回さず。それでも街中をしばしの時間満喫することができたのである。

 走り出してしまえば、少なくとも街中を流している限りでは、十分に現役で通用するし、足としても使える柔軟性もある。MT車だが、神経質なシビアなタイプではないから、これまた街中での走行に向いていると思う。近所のコンビニにもあえて使いたくなる手軽さがある! 見た目のオールド感に騙されちゃいけない。

社外のオーディオに交換されている。それ以外はフルノーマル状態。そういったこともこの車両をオススメする理由のひとつ。

雨ざらし状態だったのだろうか。仕入れる前からホイールはこの状態。ま、しかし、23年前の車両ということであればヤレは仕方なし。これも味わいと割り切ることも必要だろう。もちろん入手後に手直しすることも可能だし。

この年代のポイントとなるリトラクタブルヘッドライトの動作確認。もちろんこの車両はまったく問題なし。今の時代だからこそ、こういった一時代を築いた車両を後世に残したい。

しばしの試乗だったが、この車両の魅力は十分に味わえた。現代の車両には敵わない部分が多いが、それに勝るとも劣らないほどの魅力と価値がこのトランザムにはある。

90年代モノだからこそ今の時代でも維持することは容易い

 上記したが、今となってはボディのサイズ感もまったく気にならず、唯一気になるとすれば、90年代特有の硬いブレーキのタッチと回転半径の大きさくらいだろうか。

 ステアリングがスロー傾向だし、回転半径が大きいから、車庫入れのような細かな動かしがちょっと気になる程度であって、それ以外にはまったく不満はない。ブレーキも慣れの問題だし。いや正確には、撮影日は3月20日だったのだが、気温20度超えでトランザムがTバールーフだったから、天井からの日差しの暑さに死にそうだった(笑)

 しばし止めて写真撮影を行っていたが、実際に動かして良さを知った上で改めて見るスタイルは、前後オーバーハングの長さもいい味わいに見えるしデザインも素敵。とにかく今では滅多に見ることがないレアな車両ということにおいても、相当魅力的な存在ではないかと思う。

 とはいえ、そこは中古車。およそ23年前の個体かつ実走82424キロという点において、相当に楽しい個体であることは間違いない事実であっても、同時に中古車としてのヤレが確実にあるわけだから、そこを承知の上で購入する必要はあると思う(もちろん今のままでも十分に走れるが遅かれ早かれやってくる)。

 そして、そのヤレをシッカリ手入れして行こうと思って付き合えるならば、現存する最高の四代目トランザムになる可能性は十分に秘めている。遅い速いで言えば、現代のアメ車にはまったく敵わないだろう。もちろん快適性においても。でもこのトランザムには、現代のアメ車が進化の過程で失ってしまった多くのモノを持っている。突出したエンジンや鷹揚な乗り心地や操作性等。

 もちろん、速くて快適な現代のアメ車の方がより近づきやすい存在であるのは間違いないが、オールドテイストが好きなアメ車ファンには、まだまだ応えるだけの性能をこのトランザムは持っている。

 それに、90年代的なメカニズムの安易さは、現代のECUを中心とした整備性を圧倒的に凌ぐと思うし、トラブルのポイントが発見しやすいのも特徴であるから、今の時代に所有することもまったく苦ではないだろう。新旧のコダワリのアメ車を販売しているガレージダイバンが仕入れただけに、そこら辺のポイントもシッカリ抑えられているはずである。

もちろんこのままずっと完調であることはないから、必ずや整備的な手を入れなければならないだろう。だが、アナログ的な整備でメンテが可能なはずなのでまだまだ状態維持は可能である。

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