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[試乗記]

「まるでレーシングカー」な最高峰カマロ

2018 シボレーカマロ ZL1

史上随一のハイパフォーマンスモデル

BCDが直輸入するハイパワーなアメ車。2台目がカマロZL1である。

更新日:2020.04.24

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBUさいたま・シボレーさいたま南 TEL 048-710-6226 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

ニュルを走り込んだ傑作カマロ

 近年のアメ車はこぞってニュルを走っている(ニュルとは世界一難所コースのニュルブルクリンクサーキット)。とくにGM車は熱心だ。ダッジ系は直線重視車両が多いためか、バイパー以外はあまり聞かないが、カマロやコルベットはこぞってニュルを走り鍛え上げている(国産ではGT-R、NSX、またC8コルベットもそうだ)。

 だから乗るとひと味違う。ステアリングの感触がフォードやダッジ系とは全く違う。足回りのしなやかさや強靭さも全く異なる。それは日本の一般道を走っただけでもわかる。車両全体から伝わる骨太さが完全に別次元である。

 実際、カマロZL1の10速AT車がニュルを走ったラップタイムが7分29秒60であった。これは、旧ZL1よりも11秒67タイムが向上しており、たとえば997世代のポルシェ911GT2やターボS、GT3 RSよりも速いラップタイムである。そう、シボレーカマロZL1とは、それほどの車両である。

世の中のクルマ全体が大きく肥大化していくなかで、ボディ外寸を切り詰め、車重90kg超の減量を果たしたカマロ。その効果は絶大で、ボディの強靭さはコルベットを凌ぐ。速さでもコルベットヤバし、と感じさせるだけの体感性能を与えてくれる。

フロント開口部の大きさからボディ全体のライン、さらにリアテールやスポイラーに至るまで全体のトータルバランスが素晴らしいカマロ。ひと言、カッコいい。機能と美しさと野蛮さと…、あらゆるレベルが高い次元で融合されている6代目カマロの傑作。

街中を走っているだけでも分かるZL1の骨太な走行性能の高さ。

コルベット以上と思わせるボディ剛性

 で、実際に日本にて乗ってみての感想は、707hpチャレンジャーヘルキャットよりも確実に速い(と思う)。仮にスタートダッシュで負けたとしても第一コーナーで刺せる。その後もコーナーのたびにチャレを突き放すであろう。そのくらいに速いし、シッカリしている。

 ボディの剛性は、アメ車随一だ。これは体感でコルベット以上だと思う。ステアリングの剛性もハンパない。今や電動パワステだからその重さを感じることはほとんどないが、ステアリングから感じる剛性感はこれまでに感じたことのないものだ。

 各部のスエードタッチのインパネが硬派なレーシングマシンの様相を与えてくれ、低い着座位置や、また抜群のホールドを見せるバケットシートを伴って、まさしくレーシングカー的な雰囲気を与えてくれるから、硬派な「マシン」が好みならその要望に十分に応えてくれるだろう。

 なお、この型のカマロZL1は2017年にデビューし、ボディは全長、全幅、全高、ホイールベースを短縮することで旧型比で90kg以上の軽量化を実現している。それに伴い重量は1790kgということだから、この手のマシンとしては抜群に軽い。

搭載されるエンジンは、6.2リッターV8LT4エンジン。650hp、最大トルク650lb-ftを発生させ、6速MT、もしくは10速ATと組み合わせられる。恐ろしく速いのは言うまでもない。

20インチFORGEDアルミホイールにブレンボブレーキシステム(F6ピストン/R4ピストン)が抜群の性能を支え、ドライバーに安心感を与えてくれる。

スエード素材を大量に使用した硬派なインテリア。レーシングカーのような雰囲気に満たされ、実際にシートに座ってもそのタイトなフィーリングは、箱型ボディではマスタングを完全に上回る。

旧型比でボディを小さく軽量化し、1790kgという車重を実現。それに650hpだから恐ろしく速い。

いざ走り出せば「本当に速い」

 同クラスのメルセデスAMGやBMW Mシリーズなどはプラス100kg程度は重いから、また日産GT-Rはそれ以上重いから、それだけでもこの車両の気合いの入り方がわかるというものだ。

 搭載されるエンジンはZ06と同様の6.2リッターV8スーパーチャージャーLT4ユニットで650hp、最大トルク650lb-ftを発生させるから、それだけでも十分に速いのだが、1790kgという車重が絡めば、冒頭の車重2トンを超えるヘルキャットでも相手にはならない。

 一方足回りは、新たに調整された新マグネティックライドサスペンションにパフォーマンストラクションコントロール、電子制御ディファレンシャル、さらにランチコントロールにドライバーセレクタモード等、最新テクノロジーを駆使した最高レベルの状態がもたらされている。

 くわえて、フロント285 / 30ZR20、リア305 / 30ZR20インチ鍛造ホイールに、グッドイヤーイーグルF1スーパーカータイヤ、さらにブレンボの6ピストンモノブロックブレーキとツーピースローターが装備されている。

新たに装備された10速AT。このATが抜群に良い。シフトノブは細身のタイプで操作性は良好。街中でATの10速を体感することはできなかったが、小刻みに変速し、その変速をあまり感じさせずに650hpを制御する。個人的には常にMT推しだったが、ZL1はATでもいいと思う。その方が逆に速く走ることも可能だろう。

個人的にはツインクラッチがあまり好きではないために、アメ車系の多段化ATには意外に賛成している。ATでもパドル使用で十分に楽しいし、速い。

見た目だけではわからないかもしれないが、シートが恐ろしく素晴らしい出来。ホールド性が抜群で、小柄な日本人ですらその性能に満足するはず。

迫力のある筋肉質ボディ。まさしく鍛え上げられたアスリートのような切れ味。開口部の大きいフロントマスクは品格というよりは豪快がふさわしく、エンジン始動時の唸りは他車を圧倒する。

箱型ボディで「これほどに速い」がポイント

 筆者は、年間を通してかなりの数のアメ車を取材しているが、一般道を走っただけでもこれだけの違いを見せてくれる車両はほんとに珍しい。恐らくサーキットに行けばもっと別の顔を見せてくれるのだろうが、そこを走らずともその姿は容易に想像がつく。

 どんなに荒れた路面でも受け止め、手足のように4輪を操ることを許し、そして豪快にコースを立ち回るに違いない。ストリートにおける強さと、それでいての扱いやすさは、きっとそんなところに繋がるはずだ。

 あくまで感覚的な印象だが、このカマロならコルベットよりも速いのではないか。そんな気がするくらいのインパクトを与えてくれる。

 そしていざ走り出せば猛烈に速い。まさしく鍛え上げられたアスリートのごとき瞬発力&切れ味。しかも硬い。硬いとはボディのことであり、驚くべき剛性感である。また新たに組み合わされた10速ATが想像以上に良く、小刻みに変速を繰り返し、それでいてその変速をあまり感じさせずに650hpを制御する。

 同じエンジンを搭載するZ06には8速ATが組み合わされているが、それよりも緻密な制御がこの10速ATの真骨頂であり、Z06が2016年に登場していることを鑑みれば、2018年に登場したZL1の方が2年分の進化が積まれている。それがまさしく10速ATと言っても過言ではないのである。

 ちなみに同じく取材したコルベットZ06は、もっと低く座り、もっとタイトな空間で、まるでスーパーカーのような印象を与えてくれるが、カマロZL1は低い着座位置とはいえ、箱型ボディらしく敷居が低いというか扱い安いというか、若干気軽さがあるのもいい(乗り降りに関しても)。やはり地べたスレスレに座るコルベットと箱型ボディのマッスルカーとでは一線を画す部分が明確にあるということなのだろう。

 だが、その箱型で「これほどに速い」という部分にこそZL1の魅力が詰まっていると個人的には思っているし、そんな箱型ボディで、たとえばスーパーカーのケツを追い回せるとしたら…。めちゃくちゃ快感だろうと思うのである。

美しさすら感じさせるボディ。全体的に丸みを帯びたデザインが全盛の時代に、あえて直線基調で訴える。

2019年でベースのカマロがマイナーチェンジをしてフェイスチェンジを図ったが、ZL1はまだこのフェイススタイルのままである。

ZL1は、6代目カマロベースに一段とレーシーさを増し、GMが作り込んだだけあってめちゃめちゃ速い。これまたZ06同様に、日本にあまり数がないだけに一期一会ならぬ一車一会の思いを持ってZL1を見るべきである。

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