現行型マスタングは、なんとも悩ましいクルマである。グレードやバリエーション、パッケージ、オプション等が豊富過ぎて、正直、普通のグレードをそのまま買うのがバカバカしくなる。
だが逆に、これぞ、というモデルに巡り会えれば、それこそ最高の1台となり得る可能性をも秘めている。
で、そんなマスタングの2021年ラインナップに、また1台魅力的なモデルが加わった。正確には限定モデルということだから、長くて2、3年、いや短ければ来年いっぱい程度で終了するかもしれない存在。そう、マッハ1である。
<2021年のマスタングラインナップ>
・マスタング エコブースト クーペ or コンバーチブル
・マスタング GT クーペ or コンバーチブル
・マスタング マッハ1
・シェルビーGT500
・マスタング マッハE(EV車のため日本に直輸入できない)
基本ラインナップはこの通りだが、これ以外にパッケージやオプション装備により(カルフォルニアスペシャルパッケージとか)、また違った雰囲気になるから非常に悩む。
しかも、BCDの場合、こうした他のアメ車ショップではほとんど見かけることのないマスタングのラインナップを積極的に直輸入しているから、余計に悩ましい(笑)
例えば、以前紹介したカリフォルニアスペシャルパッケージ(しかも新車、しかもMT車)なんて、BCD以外ではなかなか見つけることは難しいだろう(そのためか即売だった)。
というか、そこまで積極的に現行マスタング自体を扱っているショップ自体が珍しいのだが、逆に言えば、現行型ファンならまずはBCDへ行ってみるべきである。
話が逸れたが、マッハ1である。マッハ1は、2019年から2020年にかけて限定販売されていた「ブリット」の後継モデルであり、2021年からこれまた限定で販売が開始さている。
ブリットは、1968年に公開された映画『ブリット(Bullitt)』に登場した劇中車を現行型マスタングで製作したものであり、どちらかと言えば、雰囲気重視のファッショナブルなマシン、というイメージ。
筆者の知り合いにも、そのイメージに惹かれ購入した者がいるのだが、どちらかと言えばハードに走るマシンというよりは「大人なマシン」という風情であり、現行型よりもワンランク上な大人びたクーペという雰囲気が非常に魅力的だった。
一方で、マッハ1は、そうした大人びたイメージとは裏腹の走りに特化したマシン。フォード的には、「2020年で生産終了してしまったシェルビーGT350とノーマルマスタングのちょうど間くらいの性能」というから、「シェルビーまでいくと、ちょっとハード過ぎ」といった方々にうまくはまる設定なのだろう。
マッハ1には、GTと同じ5リッターV8エンジンが搭載されるが、GTの460hpに対して、マッハ1は480hpを発生させる。これはインテークマニホールドやオイルフィルターアダプター、オイルクーラーなどをシェルビーGT350のパーツを使用することで実現している。
これに組み合わされるミッションが6速MTと10速AT。6速MTには、マスタングとしては初となるレブマッチ機能が付き、これまたGT350用のオイルクーラーやマスタングGT用のツインプレートクラッチ、ショートストロークのシフトレバー等が採用されたことで、これまで以上に走りに対する「MT車」の性能が上がっている。
加えて、より剛性の高いステアリングシャフトを使用し、足回りのスプリングやダンパー、電動パワステ、ブレーキ等はGTのハイパフォーマンス仕様のものを採用、同時にリアのサブフレームや各種コントロールアーム類、タイヤはシェルビーGT500用を使用しているから、いわゆるマスタング全ラインナップのいいとこどり車のような体をなしているのがマッハ1なのである。
ちなみに、6速MT車をチョイスすれば、ハンドリングパッケージを装着することが可能になり、それはシェルビーGT350用のそれらと同様のものであり、フロントスプリッター、フロントフェンダーアーチモール、マグネシウム製のガーニーフラップ付きスポイラー、リアのタイヤディフレクターであり、これらを装備するとGT比で150%アップものダウンフォースを実現するそうだ(ノーマルのマッハ1でGT比22%アップという)。
今回BCDが直輸入したモデルには、このハンドリングパッケージは装着されていないが、こうしたパッケージを装着することで、変化するのがマスタングの悩ましいところなのである。
さて、実車である。もうマッハ1に関してはデビュー前の情報時から追っていたからかなり前から知っている感に包まれていたのだが、当然実車は初めて。
まず、ボディカラーのファイタージェットグレーが素晴らしくいい。それにオレンジのブレーキキャリパーやマッハ1のデカール類が抜群に似合っており、見た目の印象は明らかにレーシーだ。
以前取材したブリットは、シックな雰囲気に上質さを感じさせたが、マッハ1は明らかに走りを強調している雰囲気が漂っており、このまま乗っても良いが、もっといろいろなデカールを貼りまくって、よりレーシーなマシンのようにカスタマイズしても面白いと思う。
しかも、6速MT車にレブマッチ機能が付いたということで、若干軟弱にはなっているが(笑)、間口が広がるだろうし、是非とも積極的にシフトを操って楽しんで欲しいものである。
同時に、MTシフトが、個体差なのか気のせいなのか、非常にストロークが短く感じ、しかも超スポーティなミッションであり、シフトノブの長さが影響しているのだろうか、シェルビーGT350よりもスポーティに感じるほどで、個人的な感触ではまるでマツダロードスターのようだったから、絶対に楽しいはず。
プラスしてエンジンが大排気量V8NAエンジンなのだから、すべてを操作して気持ち良くないはずがない。
それでいてシェルビーGT350ほどスパルタンではないから日常的にも十分使えるだろうし、非常に良い選択肢が増えたと言えるだろう。
繰り返すが、こうした現行型マスタングのほぼフルラインナップを日本で扱っているのはBCDだけである。だからマッハ1もすでに2台日本に入り、そのうちの1台は即売してしまっているし、「マッハ1もいいがブリットもいい」というなら、ブリットのBCD車両も存在するから、2台を前に大いに悩めばいいと思う。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES