現行型マスタングは、なんとも悩ましいクルマである。グレードやバリエーション、パッケージ、オプション等が豊富過ぎて、正直、普通のグレードをそのまま買うのがバカバカしくなる。
だが逆に、これぞ、というモデルに巡り会えれば、それこそ最高の1台となり得る可能性をも秘めている。
で、そんなマスタングの2021年ラインナップに、また1台魅力的なモデルが加わった。正確には限定モデルということだから、長くて2、3年、いや短ければ来年いっぱい程度で終了するかもしれない存在。そう、マッハ1である。
<2021年のマスタングラインナップ>
・マスタング エコブースト クーペ or コンバーチブル
・マスタング GT クーペ or コンバーチブル
・マスタング マッハ1
・シェルビーGT500
・マスタング マッハE(EV車のため日本に直輸入できない)
基本ラインナップはこの通りだが、これ以外にパッケージやオプション装備により(カルフォルニアスペシャルパッケージとか)、また違った雰囲気になるから非常に悩む。
1969年、モデルチェンジとともに誕生したマッハ1。そして再びデザインが変わる71年型マッハ1。ボンネットデカールや「Mach1」ロゴなどを比較すると現行型はこの71年型のリバイバルだと考えられる。
ファイタージェットグレーのボディカラーが何よりも素敵だ。リアのエンブレムには「Mach1」が貼られている。
しかも、BCDの場合、こうした他のアメ車ショップではほとんど見かけることのないマスタングのラインナップを積極的に直輸入しているから、余計に悩ましい(笑)
例えば、以前紹介したカリフォルニアスペシャルパッケージ(しかも新車、しかもMT車)なんて、BCD以外ではなかなか見つけることは難しいだろう(そのためか即売だった)。
というか、そこまで積極的に現行マスタング自体を扱っているショップ自体が珍しいのだが、逆に言えば、現行型ファンならまずはBCDへ行ってみるべきである。
話が逸れたが、マッハ1である。マッハ1は、2019年から2020年にかけて限定販売されていた「ブリット」の後継モデルであり、2021年からこれまた限定で販売が開始さている。
搭載されるエンジンは5リッターV8。ノーマルGTよりも20hpアップの480hpを発生させる。
「Mach1」のロゴ入りフロントボンネットフードのストライプがグレー系のボディカラーに非常にマッチしている。センスもいい。
ブレンボ製の6ポットキャリパーと大口径ローターが装備される。オレンジブレーキキャリパーのカラーリングもトータルでマッチしている。
1968年型フォードマスタングGT390ファストバックをベースにしたブリット。劇中車さながらのハイランドグリーンカラーが(ブラックもチョイス可能)なんとも大人びた雰囲気を発していた。
ブリットは、1968年に公開された映画『ブリット(Bullitt)』に登場した劇中車を現行型マスタングで製作したものであり、どちらかと言えば、雰囲気重視のファッショナブルなマシン、というイメージ。
筆者の知り合いにも、そのイメージに惹かれ購入した者がいるのだが、どちらかと言えばハードに走るマシンというよりは「大人なマシン」という風情であり、現行型よりもワンランク上な大人びたクーペという雰囲気が非常に魅力的だった。
一方で、マッハ1は、そうした大人びたイメージとは裏腹の走りに特化したマシン。フォード的には、「2020年で生産終了してしまったシェルビーGT350とノーマルマスタングのちょうど間くらいの性能」というから、「シェルビーまでいくと、ちょっとハード過ぎ」といった方々にうまくはまる設定なのだろう。
マッハ1には、GTと同じ5リッターV8エンジンが搭載されるが、GTの460hpに対して、マッハ1は480hpを発生させる。これはインテークマニホールドやオイルフィルターアダプター、オイルクーラーなどをシェルビーGT350のパーツを使用することで実現している。
インテリアの基本構造はGTと同様のもの。ただし、追加メーターや白球のシフトノブがマッハ1の特徴。
6速MTには、マスタングとしては初となるレブマッチ機能が付く。シフトストロークは短く非常にスポーティ。ぜひMT車で味わってもらいたい。
クラッチにクセはなく、それほど重くもない。ペダル配置も一般的であり、慣れればクラッチの上げ下げで発進が可能になる。オーソドックスだが、だからこそ扱いやすい。
新旧マスタングが並ぶ。どちらにもファンが多いが、パフォーマンスを求めるなら現行最新型だ。
これに組み合わされるミッションが6速MTと10速AT。6速MTには、マスタングとしては初となるレブマッチ機能が付き、これまたGT350用のオイルクーラーやマスタングGT用のツインプレートクラッチ、ショートストロークのシフトレバー等が採用されたことで、これまで以上に走りに対する「MT車」の性能が上がっている。
加えて、より剛性の高いステアリングシャフトを使用し、足回りのスプリングやダンパー、電動パワステ、ブレーキ等はGTのハイパフォーマンス仕様のものを採用、同時にリアのサブフレームや各種コントロールアーム類、タイヤはシェルビーGT500用を使用しているから、いわゆるマスタング全ラインナップのいいとこどり車のような体をなしているのがマッハ1なのである。
液晶メーターを搭載している。手前のタコメーターは7500rpmからがレッドゾーン。7000rpmも回せば十分な加速と音色が得られる。
ドアシルプレートは、mach1のロゴとチェック柄入りのオリジナル。
フロントシートバックにはオレンジ色のアクセントが入る。内外装ともにオリジナリティ溢れる仕様だ。
マッハ1にハンドリングパッケージを装着すれば、上記写真のようにフロントスプリッター、フロントフェンダーアーチモール、マグネシウム製のガーニーフラップ付きスポイラー、リアのタイヤディフレクターが装備され、見た目が一段とワイルドになる。BCDでは今後仕入れるというから期待したい。
ちなみに、6速MT車をチョイスすれば、ハンドリングパッケージを装着することが可能になり、それはシェルビーGT350用のそれらと同様のものであり、フロントスプリッター、フロントフェンダーアーチモール、マグネシウム製のガーニーフラップ付きスポイラー、リアのタイヤディフレクターであり、これらを装備するとGT比で150%アップものダウンフォースを実現するそうだ(ノーマルのマッハ1でGT比22%アップという)。
今回BCDが直輸入したモデルには、このハンドリングパッケージは装着されていないが、こうしたパッケージを装着することで、変化するのがマスタングの悩ましいところなのである。
さて、実車である。もうマッハ1に関してはデビュー前の情報時から追っていたからかなり前から知っている感に包まれていたのだが、当然実車は初めて。
まず、ボディカラーのファイタージェットグレーが素晴らしくいい。それにオレンジのブレーキキャリパーやマッハ1のデカール類が抜群に似合っており、見た目の印象は明らかにレーシーだ。
以前取材したブリットは、シックな雰囲気に上質さを感じさせたが、マッハ1は明らかに走りを強調している雰囲気が漂っており、このまま乗っても良いが、もっといろいろなデカールを貼りまくって、よりレーシーなマシンのようにカスタマイズしても面白いと思う。
しかも、6速MT車にレブマッチ機能が付いたということで、若干軟弱にはなっているが(笑)、間口が広がるだろうし、是非とも積極的にシフトを操って楽しんで欲しいものである。
同時に、MTシフトが、個体差なのか気のせいなのか、非常にストロークが短く感じ、しかも超スポーティなミッションであり、シフトノブの長さが影響しているのだろうか、シェルビーGT350よりもスポーティに感じるほどで、個人的な感触ではまるでマツダロードスターのようだったから、絶対に楽しいはず。
装着されるタイヤ、ミシュランパイロットスポーツ4Sはフロントが255/40-19、リア275/40-19。ホイールは9.5J&10Jの組み合わせ。
マッハ1は、2003年にも4代目マスタングベースに1970年代のデザイン的要素を取り入れた存在として誕生していた。その頃からボンネットフードにストライプが貼られている。
ボディサイドに貼られるストライプは初代マッハ1へのオマージュというが、もちろん現行型版としてアレンジされている。
プラスしてエンジンが大排気量V8NAエンジンなのだから、すべてを操作して気持ち良くないはずがない。
それでいてシェルビーGT350ほどスパルタンではないから日常的にも十分使えるだろうし、非常に良い選択肢が増えたと言えるだろう。
繰り返すが、こうした現行型マスタングのほぼフルラインナップを日本で扱っているのはBCDだけである。だからマッハ1もすでに2台日本に入り、そのうちの1台は即売してしまっているし、「マッハ1もいいがブリットもいい」というなら、ブリットのBCD車両も存在するから、2台を前に大いに悩めばいいと思う。
BCDは店舗に実車を展示し販売している。買う側も実車そのものを見て納得して買える。しかも直4モデルのMT車からGT500に至るまで、マスタング全ラインナップに対応している。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES