TEST RIDE

[試乗記]

当時のフルサイズキャデラック唯一のFR車

1991 キャデラック ブロアム

走行7000キロ弱の奇跡の個体発見

31年前の個体で走行7000キロ弱のキャデラックブロアムを取材。あまりの上玉ぶりに触れることすらはばかられるほどだった。

更新日:2022.11.30

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ブルート TEL 0489529260 [ホームページ] [詳細情報]

走行7000キロ弱のヤナセもの

 キャデラックというブランドに惚れ込んだ代表・市村氏が率いるブルート。だから店頭に並んでいる半分以上の展示車がキャデラックであり、その品揃えは90年代のヒストリックセダン&クーペからSUVのエスカレード歴代モデル、エスカレードピックアップ等に至る。

 もちろん、その他ハマーH2やリンカーンナビゲーター、サバーバンにタホ、グランドチェロキーSRTといったライバル車も手がけてはいるが、キャデラックに関しては、年式&車種問わず、常に仕入れ体制に入っているという。そして歴代モデルからの整備も熟知しているという。

 その理由は、正統派のアメリカ的高級車であるから。「雰囲気、デザイン、すべて好き」という。「だから常に良い状態で乗ってもらいたい」とも。

 筆者はかつてブルートにて1995年型のフリートウッドブロアムを取材したが、その個体もかなりの上玉だった。生産から22年経っていたにもかかわらず9500キロにも満たない走行距離で驚いた。

 だが、今回の個体は1991年型のキャデラックブロアムで走行7000キロ弱のヤナセもの。当然修復歴なしの超上玉である。

▲厳粛なキャデラック。その後のフリートウッドブロアムやセビル等からは感じられない重厚さが魅力。

▲リアスタイルからも往年のキャデラックの雰囲気が伝わって来る。恐らくこの雰囲気が味わえる最後の世代だろう。

ザ・キャデラックの世界観が味わえる最後の世代

 この年式だと、まだまだコンピューター制御される以前の車両であり、現在のようなメンテナンスに電子デバイスを必要とするようなことがない。

 逆に言えば、「各部の調整やメンテナンスをしっかりすれば長く乗れる」ということにもなるが、この車両はなんとそのレベルまでも必要とせず、もちろんボディ塗装等にはそれなりのヤレが出ているのかもしれないが(グリルやモール類が若干くすんでいる部分もあるが決して30年前の車両には見えない)、少なくとも筆者の目には見えず、とにかく「ザ・キャデラック」の世界観がいまだ味わえる。

 まず、ドアがガチャッとめちゃくちゃ重い(笑)。そしてシートがフカフカのソファー。だがそれでいて運転席から見える視界の広さによって運転しやすく、ステアリングが軽いから大きなボディも苦にならず車庫入れ等も可能。

 とはいえ、ステアリングがイマドキの電動ではなくポンプ式だからインフォメーションがはっきりしていて操りやすい。

 なので、パッと見運転手付きで後席乗り用にも見えなくはないが、実際には動かしていてめちゃくちゃ楽しいし、今の時代に自分で運転して街中を転がしたらさぞ楽しく、そして多くの人々をきっと驚かせるだろう。

 で、何より凄いのがそのデザイン。隣にいたキャデラックエスカレードと比較すると「かなり古く厳粛な印象」を与えるから、正直、91年型にも見えない(笑)

 そんな往年のキャデラックの雰囲気を持つ個体、まるで新車当時の佇まいで目の前にいるこの91年型ブロアムは、市村氏が3年ほど前に入手したという。「いくらでも買うつもりでした」

▲搭載されるエンジンは5.7リッターV8で188psを発生。4速コラムシフトと組み合わされる。

▲バイナルトップの状態もすこぶる良好。

▲車体に使用されているモール類もご覧のように手入れがなされ良い状態が維持されている。

直線基調の威風堂々としたキャデラックスタイル

 入手後しばらくは「眺めては少し乗り」を繰り返し、今に至る。で、その当時からほとんど手を加えずに適切なメンテナンスのみを繰り替えしての今となる。この個体で唯一ヤレが確認できたのはダッシュボード上部のヒビである。ちなみにフロントマスクとミラーは本国仕様に変更されているという。

 それ以外は室内のウッドパネルも綺麗だし、当然だが、中古車然としたすえた臭いも雰囲気もないから、本物の上玉。

 ちなみに室内のレースカバーはシートが日焼けしないよう「あえて残している」という気の使いようである。

 さて、この年代のキャデラックの歴史を少々。まずブロアム自体は1987年から1992年まで生産され、93年からはフリートウッドブロアムに移行されるという流れ。

 このブロアムは、元はフリートウッドブロアムがあり、それが1986年で生産終了したことによって登場したもの。とはいえ、基本メカニズムはフリートウッドブロアム時代からほとんど変更はなく、同ブランドのフルサイズモデル唯一のFR車として活躍していた。

 ボディは4ドアセダンのみで直線基調の威風堂々としたスタイルとV型に突起したフロントグリルが特徴であり、搭載エンジンは5.7リッターV8で188psを発生。4速コラムシフトによる組み合わせで力強い走りを可能にしたのである。

▲当時のままの状態が維持されている。コンディションも良く今からでも堪能できる。

▲当然ながらメーター類も動作確認済み。当時のデジタルメーターの雰囲気も素敵だ。

▲センターコンソールにあるオーディオやエアコンスイッチもそのまま。もちろん動作するし状態も良い。

▲今見るとそのドアの分厚さに驚く。もちろんいちいち重い(笑)。だがそれこそが旧時代のアメ車たる所以だった。

このコンディションで乗れるのが夢のよう

 そんなキャデラックブロアムの7142キロ走行の個体ということだけで超レアだと思うのだが、この個体は室内等の各部のパーツも全て純正のままであり、デジタルメーターも当然動作しているし、ホイールも純正でトランクルームには車載工具等の付属品もそのままあるという、見事な状態だった。

 「この年代のキャデラックを大切に乗っている方は今も全国にいるとは思いますが、正直、ここまでの個体は日本にはないと思いますよ。あれば私たが買っていますし(笑)」

 91年といえば、筆者が愛してやまないC4コルベットが存在していた時代。そんな時代のキャデラックが今、このような状態で乗れるなんて夢のようではないか。

 しかもそれを扱っているのが、キャデラックを知り尽くしているブルートであるというのだから安心感も高い。

 今の時代の新車では決して味わえないキャデラックワールドを持つ年式の個体。この状態を維持しつつ楽しんでもらえるオーナーさんに是非嫁いでもらいたい。

▲レースカバーはシートが日焼けしないように装着していたもの。シート自体はソファーのようなものでコンディションももちろん悪くない。

▲セカンドシートはほとんど使用感が感じられないレベル。

▲広大なトランクルームには当時のままの付属品もあり。

▲こちらがその付属品。こんなキャデラックがまだ存在していたことに驚いた。

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