実は最近(平成23年の春から夏にかけて)懇意にしている何件かのアメ車ショップに行った際に「先々代のサバーバン(とタホ)がよく売れるんだよね。それもなるべくノーマルに近い状態のが。台数的にはそれほどでもないけど、程度の良いのが入るとすぐに売れるよ」という話を聞いた。現行のサバーバンは6代目だから、先々代というのは4代目。1992年から1999年に生産されたモデルのことである。
シボレー・サバーバンは1933年に誕生して以来、80年近くの長きに渡って生産され続けてきた超ロングセラーであり、SUVというジャンルの草分けとも言えるモデルである。アメリカで最も愛されているSUVと言っても過言ではないだろう。サバーバンのファンは日本にも多いが、サバーバンというクルマを日本でメジャーにしたのが件の4代目モデルである。
4代目のサバーバンが現役だった(新車販売されていた)1990年代は、筆者がアメ車専門誌の編集者をやっていた時期と被るのだが、当時、サバーバンはアストロやカプリスと並んで最も人気が高いアメ車のひとつであった。ただし、当時人気があったのはノーマルではなくてカスタムされた個体。割合的には車高を落としたローダウン車が6割前後で、逆に車高を上げたリフトアップ車が3割前後。残り1割がノーマル車といった感じだったと思う。
日本での人気が最も高かった90年代後半から2000年代前半にかけて、サバーバンのオーナーの大半が愛車をカスタムしていたのに対して、今またサバーバンを求めるユーザーがノーマルを好むのは何故か? おそらく理由のひとつは程度の問題だろう。
先に日本での人気全盛期のサバーバンは、ローダウンかリフトアップといった足回りにカスタムが施された個体がほとんどだったと書いたが、往々にして足回りにカスタムが施されたクルマというのは、ノーマルに比べて経年変化による痛みが酷い場合が多い。
例えばローダウンして車高を限界ギリギリまで下げた場合、当然ながら車体の下回りをヒットする確率はノーマルよりもずっと高くなる。また、足回りはもとより、ドライブシャフトのブーツ、ミッションやデフなど、駆動系にもノーマル以上に負荷がかかる場合が多い。これはリフトアップした車両も同様で、リフトアップ車特有のファットタイヤを履かせるだけで、車体の各部には思いもよらない負担がかかってしまうのである。
もちろん高度な技術のあるショップで信頼性の高いパーツを組んだ改造であれば、走行性能に支障が出ることは少ない。また、クルマが傷むか傷まないかはオーナーの手入れしだいではあるのだが、要は確率の問題。筆者自身はカスタムやドレスアップも好きだし、クルマを改造することに対して禁忌や不安はない。しかし、そんな筆者ですら、中古車を購入する場合にはやはりノーマルを中心に探す。それはノーマルの方が改造車よりも程度の良い可能性が高いから。とくにサバーバンのようなタイプのクルマは、改造車は圧倒的に中古並行車である可能性が高く、逆にノーマル状態を維持しているクルマは新車並行車である可能性が高いので尚更である。
話が少し逸れてしまったが、ユーザーがノーマル車を求めるもう一つの理由は、流行の変化及びユーザーの趣味嗜好の変化にあると思う。90年代半ばから2000年代前半にかけて、日本のアメ車を取り巻く環境は、まさしくカスタム真っ盛り。当時アメ車を買い求めたユーザーの中には「アメ車に乗れば目立つ!」というだけの理由でアメ車をチョイスした若者も大勢いた。そして、そういう人にとっては、他人よりも目立つために愛車をカスタムするという行為はマスト。オーナーズクラブのツーリングやアメフェスなどのイベント会場で目立つという、ただそれだけのために、走行性能や使い勝手といった要素を無視して派手なカスタムを施すユーザーが大勢いたのである。良い悪いの問題ではなく、当時は確かにそういう流れ、風潮があった。
しかし、時は流れ、カスタムベースの主流がサバーバンよりも派手で目立つエスカレードやナビゲーター、ハマーH2などに移行するとともに、サバーバンを求めるユーザー層が別系統の人々にシフトしていったのである。つまり、雄大なスタイルや大らかな乗り味、頑丈さといったアメリカンSUVならではの魅力を理由にサバーバンをチョイスする人達が増えたのである。それが現在の「なるべくノーマルに近い程度の良い個体」というユーザーの要望に現れるようになったのではないか?と推測する。
実際、今改めて見ると、4代目サバーバンというクルマは、クルマを構成する全ての要素が実に全て「アメ車らしい」。全長約5.6メートル、全幅約2メートルの大柄なボディ。シンプルなラインと面で構成される無骨なボディデザイン。ひとつひとつのパーツが大きくて、余計な装飾の一切ないインテリア。内外装のどこにも窮屈さを感じさせない造りは、これぞまさしくアメリカンSUVといった感じだし、それ以外のファクター、例えば大きくてゆったりとしたシート。ただ広いだけのラゲッジスペース。トルクフルで扱いやすいエンジン。ストロークが大きく、柔らかな乗り味にセッティングされた足回りなど、サバーバンというクルマの全てが、日本人がイメージする古き良きアメ車そのものなのである。まさしく『Simple is best』。あるいは『大は小を兼ねる』か? いずれにしろ、何も足す必要はない。引くべきものもない。ありのままで十分。そんな感じを受ける。
シンプルであるということは、タフさや頑丈さ、維持の楽さにも通じる。4代目サバーバンくらいの年代のアメリカンSUVはとにかく頑丈。エンジンにしろミッションやデフなどの駆動系にしろ、足回りにしろインテリアにしろエクステリアにしろ、現代のクルマと比べると、構造がシンプルで電装部品も少ないので、マイナートラブルというのが非常に少ない。基本的な部分が頑丈に出来ているので、オイルや水といった最低限の定期メンテナンス部分さえしっかり管理しておけば、滅多に壊れない。それこそ20万kmでも30万kmでも平気で走るのである。こういう一昔前のアメリカンSUV的な頑健さというのは、あらゆる部分がコンピューターで管理されるようになった現代の最新車両には決して望めない部分だろう。
いかにもアメ車らしいフィーリングと、頑健さを兼ね備えた4代目サバーバンが、程度良好な個体でも、車両本体価格100万円以下。総額150万円も出せば手に入る現在、それは人気が出て当然。そんな気がする。もちろん、サバーバンの場合はサイズがサイズなので、東京や大阪といった大都市に在住している日本人が、一家に1台の生活の足にするというのは少々キツいかもしれない。実際に千葉在住で毎日東京の事務所を往復している筆者が1台だけのマイカーとしてサバーバンをチョイスするには相当な決断が必要になる。しかし、もしセカンドカーを所有することが許される経済状態があれば、4台目サバーバンというのは間違いなく筆者のマイカー候補に上がると思う。
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