まるでエコカー一辺倒の日本車をあざ笑うかの如く、2022年現在においても大排気量のアメリカンV8は現役だ。いや、それどころかスーパーチャージャーを搭載し、797hpというとてつもないパワーを叩き出す市販車まで存在する。
これだけの高性能、もはや持ちうる実力のすべてを味わう場所は、サーキットに代表されるクローズドコースしかない、というのはまったく正論だろう。
事実、我われ編集部もダッジチャレンジャーSRTヘルキャットレッドアイを千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイに持ち込み、ドリキンこと土屋圭市氏にステアリングを託して検証したことは記憶に新しい。
しかし、危険なまでのパワーを誇るヘルキャットレッドアイをあえてワインディングにおいて、日本的に言えば「峠」という聖地で、この圧倒的性能を解き放ったらどうなるのか……ラップタイムによって速さを可視化するのではなく、走ることの“ファンタスティック”を現代マッスルカーに対し求めてみようと考えたわけだ。
ステージはタイトコーナーの続く日本的な峠道を、合法なクローズドコースとして実現した群馬サイクルスポーツセンター、通称「群サイ」に設定。
全長は鈴鹿サーキットとほぼ同じ距離の6㎞で、高低差は約42m。もともと自転車用コースのためコース幅は狭く、ガードレールやエスケープゾーン設置などの防護設備も十分になされていない難攻不落のコースとしても知られている。
土屋氏をご存知の方なら百も承知だろうが、この群サイは土屋氏のある意味「庭」である。そして軽自動車からR35GT−Rに至るまで、死ぬほど走り尽くした場所でもある。そんな場所ではたしてチャレンジャーはどのような評価を得るのだろう。
「土屋圭市×ヘルキャット・レッドアイ」の第二章は、いまにも降り出しそうな曇天の峠道を舞台に始まった。
前回、袖ヶ浦での走行で豪快なドリフトを披露したヘルキャットレッドアイだったが、同時にウイークポイントとして露呈したのが797hpに対するブレーキ性能の脆弱さだった。
もちろん街中や一般の高速走行などでは問題ないレベルだが、サーキットでは心許ない、というのが正直なところだ。実際、土屋氏は我々へのインタビューでも、自身の動画サイトでも「止まらない~」を連呼していたほどだった。
そこで今回、オーナーの鈴木勉さんとベルエアーの高畠健さんは土屋氏に安心して走ってもらうため、ブレーキの強化に着手。ブレンボのキャリパーはそのままに、純正のパッドからエンドレス製のCC-Rgに交換して群サイ入りしたのだ。
ちなみにこのパッドはメタルとカーボンのハイブリッドで、ニッサンR35用を流用したものだという。ちなみにタイヤもピレリPゼロからミシュランのパイロットスポーツS4に変更した。
準備を終え、多くのスタッフが見守るなか、いきなり全開で峠道へと走り込んでいく土屋氏。早くもその姿は林の奥へと突き進んで見えなくなったが、V8のエキゾーストノートとスーパーチャージャーの過給音が、大峰高原にこだまする。
これまでに何台ものクルマを群サイへ持ち込み、全開で走らせてきた土屋さんだが、6.2リッターV8のマッスルカーで攻め込むのは初めてだったという。
聞けば「2mの全幅があるワイドボディのチャレンジャーには群サイは狭すぎると思ったんだよね」と答えてくれた。
たしかに最小コース幅は約6m。しかも路面が荒れていることを考えれば、チャレンジャーには狭すぎるのかもしれない。余談だが、その姿を至近距離で見ていた撮影スタッフ曰く「圧がものすごい。風を切って走るのではなく、とてつもないスピードで風を押しながら走り抜けていく感じ」だったという。
規定周回数を終えて発着点に戻ってきた土屋氏。クルマを下りるなり「ちょっと攻めすぎちゃったかな。最後はブレーキが抜けちゃって」クールダウンしながら戻ってきたという。強化したはずのブレーキが再び?
「いやいや袖ヶ浦では1周目から止まらなかったんだけど、今回は2トン以上あるクルマとは思えないくらい制動力が上がってる。最後はフルードがダメで(ブレーキペダルが)床まで付いちゃったけど、このブレーキはいいよ! でももし改善するならブレーキの冷却かな。そうすればサーキットでも峠でも、もっと楽しめる。
それにしても速いねこのクルマ。途中から雨が降り出してきたんだけど、群サイの下りで200㎞/h出るクルマなんてそう多くないよ。もう市販車のレベルじゃないね。
サーキットではパワーだけが突出していた印象だけど、こういう場所で走らせてみると、あらためてヘルキャットレッドアイのバランスの良さが際立った。ミシュランタイヤの影響もあるだろうけど、ステアリングの切り込みに対する回頭性もいいから、乗っていて本当に楽しいよ!!」
袖ヶ浦では「危険を楽しむクルマ」と評していた土屋氏だったが、今回は総合的に判断したうえで「クルマとしてのバランスがとてもいい」との結論を出してくれた。
797hpという部分だけで語られることの多いヘルキャットレッドアイだが、タイヤやブレーキをほんの少し見直すだけで、驚くほど速く、しっかり曲がり、そして確実に止まるクルマへと変わるのだ。
そしてクルマを限界で走らせることの意義にも気づかせてくれた「土屋圭市×ヘルキャットレッドアイ」の第二章であった。
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