まずはジミーを知る前にシボレーブレイザーについて。シボレーブレイザーとは、今に続く『SUV』というカテゴリーの元祖と言える存在で、その歴史は古い。
初代モデルがデビューしたのは1969年。先行するフォードブロンコに対抗するモデルとして登場した。このブロンコ、実は前回紹介したアノ時代のブロンコのことを指すのだが、両者を比較すれば明確な違いが存在する。そう、ボディサイズである。
当時のブロンコは専用設計であり、ご承知の通り今の日本でも好まれる小型SUVに属するサイズ。一方のブレイザーはピックアップトラックのC/Kシリーズのプラットフォームを流用して制作されていた、いわゆるフルサイズ。
要するに初代ブレイザーは、ピックアップトラックの荷台部分にシェルを被せてワゴン(SUV)に仕立てたお手軽仕様だった。
がしかし、この開発期間の縮小&コストダウンが目的であったであろう当時の手法は、結果的には正解だった。
というのも、ピックアップトラック人気が高い北米では、スタイル的にC/Kシリーズと大差ないブレイザーは瞬く間に市場に受け入れられることになり、ライバルであるブロンコを上回る販売を記録することになったから=小型なブロンコよりも大きなサイズのブレイザーが好まれたのであろう。
ちなみに、このブレイザーの成功を見たフォードは、2代目ブロンコではシャシーの専用設計を止め、FシリーズピックアップをベースにしたSUV作りを始めている。
で、このブレイザーの兄弟車がジミーである。ジミーはGMCディビジョンで販売されていたモデルで、エンブレムなどの外見的な差異を除けば、メカニズム的にはブレイザーと同じクルマである。
余談だが、ブレイザーはこの後シボレータホへと繋がっていく。一方でジミーはGMCユーコンに改名される。すなわち、今の時代にもシボレータホ、GMCユーコンは存在するが、ここに出ているブレイザーやジミーは現在のタホ&ユーコンの祖となる存在である。
さてそんなジミーの85年型である。この車両、現ユーザーさんがレストア済みの車両を購入していたというがエンジンの調子が悪く、検査の結果、一気筒死んだ7気筒エンジンになっていたという。
そこでエンジンのオーバーホールを含め様々なアプローチを検討した結果、エンジンスワップに至り実行されている。
新たに組み込まれたエンジンは90年代のエクスプレスバンの5.7リッターV8エンジンである。
だが、ここで疑問が一つ。もとのジミーは85年型のV8エンジンとはいえ、キャブレター車。一方で90年代のエクスプレスバンは電子制御インジェクションのV8。これを換装することが可能なのだろうか?
レーストラックの高橋氏いわく「まず同じV8なので置き換えは可能です。あとは電子制御の部分をキャブレターに換装し、その他のマネージメント系は旧時代のものを使用し、燃料ポンプは電磁式の新しいものへ換えてやれば比較的スムーズに実行可能です」
まずは電子制御された新V8の電子制御の部分を外し、そこにウエイアンドのマニホールドとエーデルブロックのキャブレター(cfm550)を装着。
で、このエンジンに対応する燃料ポンプは旧時代のものではなく、その年代のエンジンに対応した電気式の燃料ポンプに変え、一方でその他(ミッション等)は古い時代のものを利用し両者を組み合わせている。
要するにエンジンとキャブレターとマニフォールドと燃料ポンプのみ現代のものを利用し、その他はもともとのジミーのパーツを組み合わせることで、スムーズに動くよう調整されている。
が、この仕上がりがまた絶品で、オールドテイストのジミーのエンジンをかけると、まるで現代車のように品良くスムーズにかかり、そして静かであり排ガス臭さが微塵もなく(笑)、しかも気持ち良く走る。
旧車っぽさが消えてしまっているのでは? と心配する方もいるかもしれないが、それもご無用。
品良くエンジンはかかるが、走るとキャブレターサウンドが響き渡るし、レーストラックによってヘダース交換がなされているから、元のV8エンジンよりも数倍ご機嫌なV8エンジンを味わうことが可能である。
今回の取材年式以前(70−80年代の)からジミーのようなフルサイズSUVの人気は非常に高い。
確かにエクステリアやインテリアのデザインは素晴らしくカッコイイし、その味わい深さは筆舌に尽くしがたい。
だが同時に、この年代のV8エンジンを含めたメカニズム環境の能力は決して高いとは言い難い。
が、今回のような古い時代の良い部分は残し、足りない部分は現代に近いパーツで補うという手法を駆使すれば、それこそ安楽とも言えるオールドテイストなアメ車との付き合い方が可能ではないだろうか。
ある意味、「理想的」と言っても過言ではないだろう。
そのためにはレーストラックのような旧車の修理やカスタマイズに対応可能なショップの助けが必要になるのは言うまでもない。
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