新旧のアメ車が訪れるレーストラックにひと際小さいトラックがあった。一瞬、「軽トラかな」と思うようなサイズ感。だが、室内を見れば左ハンドル。「えっ、なんですか? これ」
聞けば、70年代のトヨタハイラックスの北米仕様という。「故障ですか?」と聞くと「いや、点検して調整やオーバーホールをする予定だから走るよ」ということで、ちょっと拝見させていただいた。
ということで、まずはハイラックス「Hilux」とは、「高級な」「より優れた」という意味の「High」と「ぜいたくな」「豪華な」という意味の「Luxury」を組み合わせた造語。
そして70年代モデルとは、1972年5月に発売された2代目のことで(1972年から1978年)、北米での販売が拡大していったモデルでもあった。これらは北米仕様としてアメリカ、カナダ向けに輸出されており、当時は「ハイラックス」という名前ではなく、「トヨタトラック」という名で販売され大ヒットを記録。

▲2代目ハイラックスの北米仕様。当時アメリカ、カナダ向けに輸出されており、「ハイラックス」という名前ではなく、「トヨタトラック」という名で販売されていた。

▲北米仕様はストライプを多用したボディカラー、現地定番の大型ミラー、ステップにもなる大型リアバンパーetcが装備され、乗用ピックアップとして販売されていた。
というのも、当時の日本国内での使用は「商売」「商用」を想定していたが、北米仕様では現地文化に寄り添い乗用ピックアップトラックとしての要素が強調されていたから。そしてストライプを多用したボディカラーや、現地定番の大型ミラー、ステップにもなる大型リアバンパー、ベッドガード、改良されたキャノピーなどアメリカ人の好むアクセサリーを充実させることで、販売が軌道に乗っていった。
その当時、GM フォード クライスラーのビッグ3からも多くのピックアップがリリースされ、どれもが高い人気を収めていた。が、しかし、ビッグ3のラインナップには欠点があった。コンパクトサイズのピックアップがなかったのである。いくら広大なアメリカでもコンパクトサイズを求めるニーズは小さくなかった。そうしたニーズに当時のトヨタトラックはぴったりの存在だった。
そんなトヨタトラックに搭載されたエンジンは、2.2リッター直4。広大なアメリカを巡行するため、当時の日本仕様の1.6リッターや2リッターよりもタフなガソリンエンジンが標準で搭載されていた。

▲ご覧のような見事なピックアップスタイル。現代のサイズ感で言うと非常に小さい。

▲搭載されるエンジンは2.2リッター直4。このエンジンは北米仕様のみ使用されたもの。

▲キャブレターは純正のアイシン製からウェーバー製に換装されている。今回、これをオーバーホール。
そして組み合わされるギアは4速マニュアル。当時はまだ5速マニュアルが存在せず、すべてのグレードで4速が標準であった。で、シフトレバーの位置はコラムとフロアの2つからチョイス可能であり、取材車はフロア4速マニュアルとなっている。
なお、4速コラムマニュアルシフトをチョイスすればフロントベンチシート、4速フロアマニュアルシフトをチョイスすればフロントセパレートとなっていた。ちなみに、2代目モデルからハイラックス史上初となる3速ATも選べるようになっている。
また、70年代の北米仕様の4速マニュアルは、アメリカのハイウエイを巡行するために、日本仕様とは大きく異なるギア比が採用されており、日本仕様とは異なる2.2リッターエンジンと組み合わされて、運転のしやすさ等も大幅に異なっている。

▲室内はタイトと思いきや足元周りの空間が広く乗りやすい。ステアリングは社外品が使用されている。

▲ミッションは4速MT。クラッチを含め扱いやすい。

▲メーターはタコメーターのないアナログ式。
で、今回レーストラックにて行われる一つの作業がキャブレターのオーバーホール。取材車にもともと装着されていた純正のキャブレターはアイシン製。トヨタのグループ企業であるアイシン工業が製造し、純正部品として当時ハイラックスに標準装備されていた。
だが当時、純正のアイシン製から別ブランドのキャブレターへカスタマイズ交換している個体も多く、その代表的ブランドの一つがウェーバー。イタリア発祥の世界的なキャブレターブランドで、北米仕様22R型エンジン向けのキャブレターが定番化。
取材した個体もまさしくこのウェーバーのキャブレターが装着されており、今回は経年劣化を解消するためにオーバーホールをすることになっている。
それにしても、工場内にはハイラックスのほか、70年代クーダ、90年代アストロ、タホ、2011年以降のエクスプローラー、2015年以降のチャレンジャー etc が今まさに整備や点検&車検等の作業を受けているのだが、これだけ年式&メーカーがバラバラな個体を扱うことに困難はないのだろうか。

▲ルーフライナーは落ちることなく健在。

▲「エンジン車は新しかろうが古かろうが、考え方は同じ。なので、どんなクルマでも対応可能です」と高橋氏は語る。

▲全体的なヤレは感じるものの、機械として全て稼働するのはさすがトヨタ。
「人によっては、もしくは店によっては、扱う個体を制限しているところもあると思うんですが、うちにはそういう区切りはありません。ガソリンエンジン車の場合、エンジンは圧縮と混合気と火花の3大要素が必要という前提で、それがどんどん進化していき今に至るわけですから、その考えをベースに診ていけば年式が変わろうとも困ることはほとんどないんです。もちろん、専用器具がないと不可能ということはありますが、そう言った物理的な問題を除けば、触れない&診れない個体はないんです」
なるほど。だから他店で断られたような個体が多数入庫していたり、今回のハイラックスも何事もなかったように作業を行っていたのだろう。ちなみに取材後、キャブレターのオーバーホールは終わり、配管等のリニューアルを済ませ、一層元気に走り回れるようになったという。
このハイラックスのオーナーさんは、荷台にハーレーを載せるトランポとして使用しているとのことで、「めちゃくちゃオシャレなクルマを実用的に使っているな」と感心。だが、もともとエアコンが装備されてない時代のクルマだけに、真夏に乗るのは厳しいような(笑)
だが、キャブレターサウンド全開で、サイズを気にすることなく、そしてそれをマニュアルミッションで乗ることが可能なハイラックス北米仕様。
70年代とはいえ、さすがはトヨタ。さほどトラブルを恐れることなく乗れ(エアコンがないから真夏は辛いが)、「たまにはこうした旧車もいいなあ」と本気で思わせる楽しさ満載だった。

▲ドアパネルはシンプルそのもの。

▲シートはリクライニングせずだが、意外に普通に乗れる。

▲荷台にハーレーを積むトランポとして使用されている。
115,000円
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