更新日:2026.09.07
文/石山英次 写真/ステランティス
ラムは当初、環境規制に対応するため、2025年モデルを機にV8エンジンを廃止し、最新の3.0リッター直列6気筒ツインターボ(ハリケーンエンジン)へ一本化しようとした。事実2025年モデルは直6ツインターボがメインだった。
数値上の馬力やトルクは直6ツインターボのほうが圧倒的に上だったが、アメリカのトラック乗りはこれを拒絶。彼らにとって、フルサイズピックアップにはV8サウンドとそのフィーリングが絶対条件だった。ちなみにGMやフォードには当然ながらV8エンジンが残っていた。
「V8がないならラムは買わない」と購入を拒んだ顧客が、V8を継続販売していたフォードやGMへ大量流出し、ラムの販売台数は急落。ブランドの存続を揺るがす危機に直面したため、経営陣は「V8廃止は失敗だった」と認め、わずか1年での復活へ舵を切るしかなかった。
だが。2026年モデルでV8を復活させた際、ラムは環境規制をクリアする名目で、48Vの電気モーターを組み合わせたeTorque(マイルドハイブリッド)仕様にせざるを得なかった。しかし、これが新たな不満を生むことになる。
トラックユーザーは、過酷な環境で荷物を運び、何十万キロも走れるタフさを求めている。長年信頼されてきた伝統的なOHV V8に対し、複雑な配線や電子部品、専用の48Vバッテリーといったハイブリッドシステムが載ることは、故障リスクや将来のメンテナンスコストが増えるだけと捉え、猛反発。
また、ハイブリッド化に伴い強制的に導入されたオートアイドリングストップ機能も致命的だった。エアコンの効きが悪くなることや発進時のわずかなタイムラグが、トラックを道具として使い倒すユーザーにとって大きなストレスとなり、強い不評を買うことになった。
くわえて、eTorqueは発進時をわずかにアシストするだけのマイルドなシステムであり、実質的な燃費向上はごく僅かだった=ユーザーからすれば、燃費も大して良くならないのに、複雑で感性に合わないシステムを無理やり押し付けられている状態だったのである。
ユーザーから「ハイブリッドなしのシンプルなV8が欲しい」と突きつけられていたラムにとって、最大の転機となったのが2026年にアメリカ連邦政府が行った環境規制の見直し(緩和)。
排出ガス基準の一部が変更されたことで、自動車メーカーが「マイルドハイブリッド」や「アイドリングストップ」を搭載した際に得られていた環境適合上のインセンティブ(優遇ポイント)が廃止=メーカー側にとって、コストをかけて顧客に嫌われるハイブリッドシステムを搭載し続ける法律上のメリットが完全になくなったのである=何をやっても裏目に出たラムは結局のところ純ガソリンV8エンジンを復活させることに。

▲2025年でV8エンジンを廃止したラム1500。だが、翌年には復活へと舵を切る。

▲だが、その復活はeTorque V8という、ユーザーが望まないハイブリッド。またもや不評を買うことに。

▲そして遂に2027年モデルで純ガソリンV8エンジンが復活する。

▲インテリア等が非常に洗練されており、人気が高いラムだけに純ガソリンV8復活は朗報。
ちなみに、同じステランティスグループでありながら、EVや直6の販売不振が叫ばれるダッジチャージャーよりもラムが1〜2年も早くV8復活(および純V8化)を達成できたのには、プラットフォームの構造と会社にとっての収益性という2つの明確な違いがある。
新型チャージャーは、EVや直6の搭載を前提に新開発された乗用車用の「STLA Large(ラージ)」プラットフォームを採用しているが、この骨格に背が高く巨大なヘミV8エンジンを載せるには、エンジンルームの再設計や安全認証のやり直しなど、物理的、技術的な大改造が必要となり、時間がかかる。
対するラム1500は、もともとV8を載せていたトラック専用の頑丈なラダーフレーム構造をそのまま継続して使用していたため、「いつでも元のV8を載せ直せる」状態にあり、迅速な対応が可能であった。
余談だが、2027年モデルでラム1500に純ガソリンV8エンジンが復活を遂げる一方で、3.0リッター直6ツインターボが廃止されるわけではない。ラムは直6を捨てるのではなく、V8と並行して販売する戦略へとシフトしている。
同時に「V8完全復活」の象徴として高性能ストリートトラック・ラム1500ランブルビーシリーズを導入し、アメ車らしい大排気量V8のカルチャーを全力で守り、ファンへ還元するという強いメッセージを放っている。
なお、こうした純ガソリンV8への回帰の動きは他モデル=ダッジチャージャーへと繋がることを期待させるが、実はそうはいかないのが、今のダッジの厳しいところである・・・。
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