TEST RIDE

[試乗記]

3台のサードカマロをブラインド試乗!

シボレーカマロ (CHEVROLET CAMARO) vol.1

果たしてその目的とは?

われわれ40代が「アメ車」と聞いて思い描く現実的な選択肢が、90年代前後のアメ車たち! だが、そんなアメ車もすでに20年車。越えるべき壁が多い…、と思われがちだが、実際にどうなのか? サードカマロを扱うプロショップに聞いてみた。 <試乗編>と<解決編>の2回に分けて掲載します。

更新日:2015.10.20

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 044-857-1836 [ホームページ]

何も知らされないままに試乗開始!

 われわれ40代近辺のオヤジたちが「アメ車」と聞いて思い浮かべる現実的な選択肢は、80年代後半から90年代中盤にかけて登場したアメ車たちではないだろうか?

 サードカマロにトランザム、コルベットC4にカプリス、インパラ…。筆者もまさしくその年代の一人で、そもそものアメ車原体験がコルベットC4だったこともあり、アメ車と聞いて思い浮かべるのは、真っ先に90年代の車両である。だからいつか手に入れたいと憧れる車両も90年代のアメ車が多い。

 だが、そんな90年代のアメ車たちを、今実際に購入するとなると結構なハードルを越えなければならない(と感じている人が多い)。

 そのひとつが「すでに 20年前後」の車両であるということ。つまり、年代ものゆえに求める個体と滅多に出会えないということと、出会った個体の程度や「20年前=ガタガタ?」という不安である。

 こういった年式ゆえのネガティブ要素を克服するためのひとつの方法が、専門店に委ねることだ。

 経験的に言って、20年以上前のアメ車を扱っているような専門ショップは、商売になる=ノウハウがあるからであり、抑えるべきツボをちゃんと心得ている。

 だからこそ、良いことばかりでなく、車両の弱点をも教えてくれたりして、購入以前からひとつひとつハードルを越えさせてくれるのだ。

 ということで、サードカマロを見に行き、購入の秘訣を探ってみた。向った先は川崎にある「エイブル」。筆者がアメ車系編集部に異動になってからの付き合いなんで、かれこれ15年以上でしょうか。当時からずっとカマロを扱っており、今現在でもサードを中心に販売を展開している老舗ショップである。

 代表の原さんに早速取材趣旨を話すと、おもむろに立ち上がり、「ちょうどいいのがあるから試乗してみなよ」という。しかも何も教えられないままに!

 とりあえず3台、いきなり試乗開始である…。

その1・89年型RS / 170ps / D車 / 17万キロ走行車

 久しぶりのサードカマロ。運転席に腰を下ろすと、「意外に小さいなぁ」という印象。そしてエンジンスタート。

 ショップを出てすぐに感じたのが、ステアリングの違和感だった。ほんのちょっと、距離にすると30メートルも進まないうちに、直進するも、ステアリングがずっと左を向いていることが気になった。大げさに言えば、11時の方向に舵を切っている状態。しかもその位置でまっすぐ走る感じなのだ。「アライメントおかしくね?」

 そのまま幹線道路に出てアクセルを踏んでみた。ドゥルルルル〜とV8サウンドに「あ〜懐かしい」と感慨にふけるも、一瞬にして現実に引き戻される。

 ステアリングを左右に切ると、遊びがもの凄いのだ。極端にいえば11時〜2時程度の位置にステアリングを切ってもまったく反応しない。ただし、だからといって不安定というわけではない。それ以上ステアリングを切ると車体は反応し、その後ぐらっとロール感がくる。

 といっても、それ以上の不安は感じないし、街中も普通に走る。「アメ車はこんなもんだよ」と言われれば、たしかに中古車、20年車、そんなことを考えれば、納得できないレベルではないが…。

 過去これまでにいろいろなアメ車に試乗した経験があるが、「たしかにこんなもんかもしれないなぁ」とも思うけど(実際にこんなアメ車も結構試乗してきたし)、ただこの状況だと、「100キロ越えるような高速道路では厳しいんじゃねぇ」と勝手に想像する。

 また、個体差としてはアクセルペダルがやたら重かった。ブレーキの感触も踏めば効くが、踏力が結構必要。国産感覚で踏むとちょっとビックリする感じかもしれない。

都内の道を毎日のように走っているサードカマロ。現役バリバリのオーナーカーである。見た目のコンディションも悪くなく、使い込まれた感が滲み出ている車両。

エンジンは一発始動で元気よくスタート! だが、ちょっと走っただけでもまっすぐ走らないことに気付く。ステアリングを左に傾けることで直進する。慣れれば問題ないが、飛ばすと怖いかも。

その2・90年型IROC-Z / 240ps / D車 / 7万7千キロ

 同じ位置から、同じ道を同じように試乗する。2台目のサードも同じクーぺだった。まずショップを出た時点での段差の衝撃が、見事に少ない。「ドタンっ」と出足から豪快に走り出した1台目とはまったく異なる。

 そしてアクセルひと踏みして加速すると、まるで現代のクルマのごとくスムーズに加速し、しかも一直線に走り抜け、ステアリングが左右どちらかに取られるようなこともない。この感触は1台目とは明らかに違う。

 ステアリングから通じる遊びというか、デッドな感触もほとんどない。個人的に、過去経験していたサードカマロとも明らかに違う。まるで違うクルマに乗っているような感じすらする乗り味。「えっ? 何したんですか? このカマロ? ほんとに20年前のカマロですか?」

 幹線道路にて再び加速し、ステアリングを左右に切ると、自分で意図した動きがそのままステアリングに伝わっているし、反応が鋭い。といってもシャープさを追求した硬い足回りではまったくないし、逆に乗り心地はかなり良く、路面からの当たりはきわめて優しい。

 だからか、軋み音みたいな音が皆無。正直、過去においても、これほどのサードカマロに出会ったことはない。

 サードカマロが現役だった10数年前を知っているが、当時は「ノーマル=ふわふわだから、ショックを変えるのは当たり前」みたいなフシがあったし、弊社田中もサードに乗っていた時期があるが、彼はサーキットを走る機会が多かったから仕方なかったかもしれないが、一般道を走るクルマとしては驚くべき硬さの足回りを保ってたし、またそれによって生じる衝撃、異音、軋み音などがもの凄かった。

 それを知っているからこそ、カマロってそういうもの! という、ある種勝手な思い込みがあったのかもしれない。
 だからこそ、今乗っているこのカマロは何者? と驚くこと必至だし、この優しい乗り味とV8エンジンの咆哮が楽しくてたまらない!

車高が若干下がり、前後異形サイズのタイヤを履いている。見た目はカッコいいが、第一印象としては、ハードな乗り味を想像してしまい、あまり良いものではなかったが…。

路面からの当たりの柔らかさとキビキビとしたステアリングの反応にかなり驚く。個人的に理想としている「流して楽しいアメ車」の理想型かもしれない。「アメ車=ふわふわ」では決してなく、だが「ガチガチ」ではない、感動的な乗り味。これまで過去何十台ものカマロに試乗してきたが、初めての味だった!

その3・91年型Z28コンバーチブル / 200ps / D車 / 6万6千キロ

 2台目のカマロ、「あれが恐らくベストだろう」と勝手な想像を膨らませながらも、逆に「この3台目の意図は何?」と考えながらの試乗となった。

 まずこのクルマのアクセルワークが非常に良好なことに驚いた。意図した通りの感触を示すために、ステアリング、アクセル等、一連の操作がリズミカル。
 走り出しの印象も非常にいい感じで、そのまま加速し、一定条件でステアリングを切ると、若干の遊びを伴いながらも、しかし一方で3車中どのクルマよりもロール感が少ない! 「えっ何?」

 何度か繰り返していると、ステアリングに遊びが若干あることが明確になってきて、そのまま走り続けるとステアリングが左に若干取られる印象をわずかに示す。

 だが、走行に支障があるような感じではまったくない。これまた「アメ車はこんなもんですよ」と言われたら、「そうだよな〜、こんな感じだったよな〜」と納得しなくはない。コンバーチブルだから、路面からの衝撃を受けるとそれなりの音が出るのは致し方ないが、それを差し引いてもかなりの軽快感だった。それに何となく懐かしい感じがしたのは気のせいか。

 この3台目のカマロ、ひと言で表せば、過去に経験した足を硬くした一般的なカマロのフィーリングにほど近い。ただしロールは伴うので、ガチガチに硬めてはいないと思われるが、明らかに路面からの衝撃が伝わる。けれど、街角を曲がるだけでもシャープだし、一番素早く曲がる!

 たしかにスポーティだしカマロらしいとは思うけど、2台目のステアリングの反応や路面からの衝撃吸収を知ってしまうと、この硬さというか尖った部分が個人的には気になってくる。う〜ん、何だろう? この違いは…。

ホイールもノーマルだし、ボディのコンディションも良さそうだし、見た目の印象が非常に良かったコンバーチブル。幌の状態もまったく問題なし。

3台中ステアリングの反応が一番シャープな印象だったコンバーチブル。過去に乗ったサードカマロの体験記憶に一番近いモデルがこれだった。ノーマルよりは明らかなに硬いけど、かといってガチガチではないという。決して悪くはないが、2台目との違いが気になる…。

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>> シボレーカマロ vol.2 を見る

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