本来なら、エンジンの載せ変えを検討してもよい時期に及んでいることもあり(距離的に)、そういったことも含めてのオーバーホールである。
だが、エンジン載せ変えの場合、もちろんすべてとは言わないが、あくまで中古品ということでそのエンジン自体の中身の性能には確証がもてないし、実際に載せ変えてすぐにトラブル発生! なんて事象も起こったりしているというこもあり、また、これまでのダコタへの愛着もあるということで、結局オーバーホールとなったわけである。
ということで、今回はピストンとシリンダーについてのオーバーホール実況中継である。
まずピストンであるが、今回は再利用するということで、キレイに洗浄し、たまった汚れやカーボンを徹底的に洗い流す。今回はピストンは再使用するが、ピストンリングとオイルリングは新品を使う。
一方で、シリンダー内をチェックし、内部のキズを細かくチェックする。聞けば、このシリンダー内壁には、細かな擦りキズ(溝)が必要であって、そのキズ内にオイルが染み込み、全体に潤滑を促すというのである。そのキズを「クロスハッチ」といい、高橋氏はそのクロスハッチを確認していたのである。
このクロスハッチは、オイルの潤滑とオイルの消費を減らすための相反するための効果を出すためのものであり、シリンダー内壁に斜めに直角に交差するように刻んであるキズのことである。
見れば、このクロスハッチが見事消えているということもあり(長い距離を走れば自ずと消えて行く)、今回のオーバーホールでクロスハッチを入れる必要があるという。
しかも、本来なら内燃機関屋さんに頼んでやってもらうことが一般的というが、高橋氏は自ら用具を出し、作業を始めて行った。
「米国修行時から、こんなの当たり前でしたからね。いまでこそ分業という考え方もあるんでしょうけど、クルマ屋なら出来て当たり前の作業です」
驚くことに、こういった作業用の工具までもが普通に揃っているのがアメリカ! ワイヤブラシに砥粒のぶつぶつがついた特殊工具を持ち出し、それを電気ドリルと組み合わせ、シリンダー内壁の研磨を始めたのである。
この特殊工具(フレックスホーン)には、いろいろサイズや材質の硬軟などもあり、そういった内容はエンジンによってもちろん変わって来る。
作業前にシリンダー内壁とこの特殊工具にたっぷりエンジンオイルを塗り作業開始(いわゆる湿式研磨)。
電気ドリルに組み合わされたフレックスホーンを回転させながら、シリンダー内を上下させ押したり引いたり。そうやることで、シリンダー内にクロスハッチが付き、それを丁寧に確認しながら全6本のシリンダー内の作業を終える。
このクロスハッチだが、これぞ! という教科書的なマニュアルがないのが辛い所。つまり、作業人の腕の見せ所ということにもなるのだが、それこそが出来る人が限られるわけでもあり、高橋氏も「実践経験による積み重ねが必要ですね」という。
もちろん、クロスハッチは浅過ぎてもだめだし、深過ぎてもだめなわけだから、安易な作業はNGである。だからこその技術的経験値なのである。単なるパーツのチェンジニアには決してできないエンジニアとしての意地でもあるのである。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES