たとえばの話、スポーツカーを買ったからといって、誰もが「サーキットを走りたいと思っている」と思ったら大間違いかもしれない。もしくは200キロ/hオーバーの世界で競いたいなんてことも。中にはカッコだけで、飛ばす気なんてさらさらないオーナーさんだっているでしょうし、もしくは美しいものが好き(だから流線型のスポーツカー)というナルシスト的なオーナーさんだって多数いらっしゃるはず。そして目立つことが何よりも好きなんで、いわゆる少数派のスポーツカーにカッコ良く乗ってただ自己主張したいだけ、という方々も多方面に実在している…。特にアメ車を愛する方にはそういった傾向が強いかもしれない。
アメ車にはさまざまな楽しみ方がある。だから、きらびやかに輝くC5が街中を爆走していたとしても、それはそれでいいのである。
このピンクにペイントされたC5コルベットは、C5コルベットの中でもとりわけ走り向けにセッティングされたZ51。Z51といえばMTで走らせる硬派なC5であり、そいつを手に入れたオーナーさんは独自の考えに基づいたカスタムを着々と進めて行った。
まずはマフラーを換え、エアクリーナー交換で吸排気系チューニングを施し、足回りは車高調整とホイールを換えて、Z51の基礎体力を向上させた。そしてエクステリアには硬派な大型GTウイングを装着し、さらにライトアップ時の空力を考えた結果(?)、リトラクタブルヘッドライトを当たり前のように廃止した。そして出来上がったのが、レーシングコルベットさながらの硬派なC5。しかもオリジナルカラーがイエローだったので、かなり目立った存在だった。
スポーツカーやスーパーカー・オーナーが夜な夜な集いミーティングを行っているのは今も昔も変わってない。が、聞くところによると自慢のネタが今と昔ではまったく違うという。たとえばひと昔前の大黒では、ミーティングと称して集まったオーナーたちはその後それぞれのマシンの性能について語り合い、そしてそれぞれの目標に向って(?)走り出して行くのがフツーだった。
ところが最近では、性能も重要なのだが、それ以上に個性というか「インパクト」にこだわったマシンが続々と集まっているという。その一例が右上記の写真。ランボルギーニカウンタックのインテリア!。かなり奇抜な存在に見えるかもしれないが、いま、こういったキラキラ系および電飾系カスタムを施したスーパーカーがかなりの勢いで増殖中である(もちろん硬派なミーティングも多数あるでしょうが…)。
硬派なC5になったAさん(仮名)、そして自信満々のAさんが大黒で受けた衝撃はかなりのものだった!
「速さなら20年落ちのランボにも負けねーぜ」と思っていたかどうかは不明だが、当日、スーパーカー相手に一発かまそうと意気込んでいたAさんの前に立ちはだかった大きな壁。そこには、C5など歯牙にもかけないきらびやかなオーラが充満し、その雰囲気に一発でノックアウトされたのだった。
「オレも仲間に入りたい…」
すぐさま次なる手を打ったのは言うまでもない。まずは両ドアをガルイングにした。そしてボディをピンクにペイントし、ボディ各部にLEDを仕込んで一気に電飾系のマシンに仕上げた。だが…。
何かが違う。ミーティングに参加しても人の足を止めることができない。結構派手になっているのに…、なぜ? やっぱりベースがいけないのか? それとも?
そこで、スーパーカーに貼られていた「レーストラック」というステッカーを頼りに高橋氏に連絡をした。そして言われたのが、「オリジナリティの欠如」だった。
AさんのC5には、それはそれは高価なパーツが随所に奢られていたが、どれをとっても「ただ付けただけ」だった。いわゆるポン付け。つまりそこには「戦略」がなく、そのパーツをどう演出するのか? したいのか? そういった意思がまったく感じられなかったという(目立ちたいのは分かるが)。
たとえばLEDを取り付けたいとする。で、そこに必要なのは、どこに、どう取り付けるか? そしてどう演出するか? であって、これまでの常識にとらわれないアイデアが必要にある。だからこそ、人は驚き、足を止めるのである(人を楽しませる力が宿るのだ)。
高橋氏と話をし、手にかかったランボやフェラーリなどを実際に目にしたことで、Aさんはさらなるカスタムに挑戦する気になったという。
とわいえ予算に限りもあるのでその部分を徹底的に話し合った。そして出た答えが、リトラクタブルヘッドライトの復活。そしてスワロフスキーを使った演出。またピンクというボディカラーに負けていたブラッククロームのホイールのリペイントだった。
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