更新日:2012.08.23
文/石山英次 写真/古閑章郎/ゼネラルモーターズ
忘れもしない1999年5月24日。その日は雨模様だったにもかかわらず、早朝から歴代カマロ3世代を率いて富士周辺を目指したのだった。そして午後からは奇跡的に晴れ、箱根の山道をその3台のカマロで思う存分走りまわった。この日は、アメ車のことなどまったく知らず、クルマといえばGT-RとRX-7とポルシェにしか興味を示さない単なるクルマ好きの若造が、初めてアメ車の面白さを知った記念すべき一日である。
今思えば、カマロがFRで5.7リッターエンジンを積み275psを発生させ、そしてこの4thカマロがモデルチェンジし登場したのが1993年だなんて、その時点ではつゆ知らず、その日乗り比べた3rdカマロとの違いにただただ驚き、「アメ車、ダメ車じゃないじゃん」と一人つぶやいたのを思い出す。
それ以来、「カマロ」と名の付く取材を数多くこなしてきた。96年型のV6モデルに乗り、95年型Z28、98年型Z28、99年型Z28コンバーチブル、00年型V6、01年型Z28、そして02年型Z28・35周年アニバーサリーモデル。それ以外に95年型Z28・6MT車にも乗ったが、この時ばかりは楽しさのあまり、思わず「買ってしまおうか」とも思ったほどだった。
これら取材車両はすべてノーマル車、中には中古車もあったが、それでもカマロの楽しさは十分味わえたし、スペシャルティカーというジャンルがどんなもので、また、カマロがそのジャンルで果たしている役割というものも少しは理解できたつもりである。
今では十分に旧車だが、ノーマルの90年代系のアメ車というのは不思議なもので、100km/h前後で走っている時の身のこなしが、たとえばエンジンや足回りや操舵感や、そしてそれらが伝える音や振動が、ピタッと一点に揃う、そういう気持ちよい領域がある。それはアストロでもタホでもサバーバンでもコルベットでもそうだった。
裏を返せば、それ以上の領域は??と思いたくなる挙動が多々起こるのではあるが(笑)、しかし、それでも真っ直ぐな道を100km/h前後で走っている時のあの気持ちよさは、アメ車でしか味わえない(格別だった)。度重なるカマロの取材を通じて筆者はそれを知ったのだ。この気持ちよさを知れば、どんなアメ車でも受け入れることができるし、GT-Rと張り合おうなんて考えもなくなってしまう。
過去、雑誌で見た4thカマロは、その走りの特徴だけを取り上げ、美化し、煽っている傾向が非常に強かった(もちろんそれも楽しいけど)。しかし今、あえて言わせてもらえれば、4thカマロこそは、そのスタイルを楽しみ、所有している生活を楽しみ、休日はデートのアシとしてドライブを楽しむべきクルマであって、購入してすぐにシャコタンにしてマフラーを換え、高速道路をブッ飛ばしたり、サーキットを走ってタイムを競ったりするクルマではないと思う(少なくとも最初は、メンテなどを施してノーマルに戻して乗ってみたい)。
4thカマロは非常に流麗なスタイルに包まれ、デザイン的に楽しめる要素をたくさん持ち合わせている。98年型を境にフロントマスクの形状が変わっているが(いわゆる後期型)、前期、後期どちらの年式を選んでも、明るく派手なボディカラーを選べば、街中では人目を惹き、アメ車らしからぬセンスの良さを演出できるのではないか。その昔、02年型Z28カマロを見て、当時の最新のフェラーリ360モデナよりも迫力があり、カッコイイという人がいたのを筆者は知っているのである。
たとえば4thカマロの購入を考えた場合、前期型(93年から97年)と後期型(98年から02年)のいずれにするか? という疑問が必ず生じる。もちろんスタイリングの好みや予算の問題もあるので、一概には断定できないが、それでも一応の目安として、ここでは95年型前期型カマロZ28と02年型後期型Z28モデルを比較してみる。
前期型と後期型の一番の違いは、そのスタイリングと搭載されているエンジンにある。前期型は角形4灯のヘッドライトを特徴とし、後期型はヘッドライト部分のデザインが変更されくぼみがなくなり、そこに異形ヘッドライトが組み込まれている。
また、搭載されるエンジンは、前期型が5.7リッターV8 LT-1エンジンで、275ps、トルク44.8kg.mを発生させるが、後期型は5.7リッターV8 LS-1エンジンを搭載し、288ps、トルク44.6kg-mを発生させる(98年型のみ309psを発生させるといわれている)。
両者を試乗比較すると、確かに若干の違いは感じるのだが、それが果たして何なのか? を正確に言いきるだけの自信も根拠もない。カタログスペックだけで比較すれば、それこそシャシーが改良され、スプリングやダンパーなどにも手が入れられ、ブレーキ径が大きくなり、ABSやトラクションコントロールも進化しているだろうとは言えるのだが、実際に両者を比較すると、少なくとも公道上の制限速度以内では、どちらも気持ちよく加速し、制動し、コーナリングする。
エンジンパワーにしたって、カタログ上には明確な違いがあり、実際にブツ自体も違うのだが(LS-1はアルミブロックになっている)、単なる街中の試乗では明確な答えは導けない。
じゃあ違いはないのか? この比較試乗で感じる大きな違いは、両者の車体の剛性感、それに尽きる。
比較試乗した両モデルには7年という歳月の違いがあり、前期型の「ヤレ」は否めないが、それでも明らかに「違い」を感じ、それに起因するステアリング操作の遅れや加速時のトラクションの悪さが確実に起こっている。これは新旧モデルを同時に比較した時のみ感じることかもしれないのだが…。
実は、この剛性感の違いに関しては、後期型のLS-1エンジン搭載車は、何らかの補強が行なわれ、それにより剛性感が向上していたという噂もある。それは、LS-1エンジンになり、アルミブロックになった分エンジン重量が軽くなっているにもかかわらず、車両全体の重量が前期型と変わらず、実はその差の分だけ補強された、というもの。だが、それに関する正式なアナウンスがメーカーからあったわけではない。したがって、この補強に関する剛性アップは噂にすぎないが、それでも比較すると違いはあるとハッキリ断言できたのだ。
実際のところ、前期型モデルとなればすでに20年車ということになる。結果的に今から手に入れるとするならば後期型(98年〜02年)ということになるのだろう。ありふれた言い方だが、調子良い個体、もしくはメンテして調子良くすれば、4thカマロはいまでもそれなりに楽しく、あなたのアメ車ライフをきっとカラフルなものにしてくれるはずである。
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