更新日:2010.12.10
文/編集部 写真/編集部
欧州車や日本車がアメリカ市場をめがけて大挙して押し寄せるずっと以前から、米メーカーにとって悩ましいクルマがあった。ベンツSLである。
それが単なるオープン2座のスポーツカーであったなら、コルベットを筆頭にアメリカにも対抗馬はあった。しかしSLはそうじゃなかった。それは確かにスポーツカー風の格好をして、スポーツカー並みの動力性能を備えていたが、クルマそのものの仕立て方はベンツのサルーンと見事一緒だった。
つまりSLの本質は、ドライバーを鼓舞するような熱きスポーツカーではなかったのだ。マジに構えずとも結果として速く、乗り心地や居住性も万全。それがスポーツカー風の格好と共存していたからSLはヒットしたのだ。
そんなSLをターゲットに絞って、かつてGMはキャデラック・アランテとうい大技を繰り出した。イタリアのピニンファリーナにデザインと車体製造を任せて“舶来ブランド性”で対抗しようとしたのだ。
しかし、それは失敗に終わった。そして21世紀、GMは再びSLに挑戦した。今度は正面突破である。まず彼らは、ベースにC6型コルベットのシャシーを使うことにした。911でさえ蹴散らすあのC6である。
そのFR世界最強クラスの土台の能力を、限界性能ではなく、走りの余裕や乗り心地に振った。もともと、しなやかに動くアシや懐深い安定性はレベルの高い土台がなければ成立しない。例えばボディ剛性の低い車体では、アシを固めないとまともに走らなくなるのである。
そういう風に土台でSLと対等以上に戦えるマージンを稼いでおいて、その上でエンジンに、キャデラック至宝のノーススターV8を投入した。分厚いパンチと迫力で売るC6のLS2とは対照的に、品の良さとスムーズさで鳴るエンジンで勝負をかけたのだ。
こうしてXLRは、土台から仕上げまでの全領域でベンツSLと真っ向勝負できるクルマに見事に仕上がったのである。
実際に走らせてみても効果は抜群である。車体の剛性は高くハンドリングも良好。何よりステルス戦闘機のごとき鋭角なスタイリングが街行く人々の視線をさらい、ブルガリとのコラボが持ち前の品格にさらなるセンスという華を添えた。
そういう意味では、無機質極まりないベンツSLに勝ったとも言えるだろう。
2004年に登場したXLRは、GMの昔年の想いを果たし2009年に生産終了になった。時代が時代なら次世代モデルも出ただろうが、正直そこまでの成果は果たせなかったのだろう。だが、歴史的な名車として今後ももてはやされていくことだけは間違いない1台である。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES