さて本題。C7コルベットとC6コルベットで何がどう変わったかについてだが、今回は主に数字的な部分に重点を置いて比較検証してみたいと思う。
「実際に乗ってどう感じるか?」というインプレッション的な評価というのは人それぞれの感性や経験値によって変わるものだが、数値的な比較であれば主観は関係ない。まずは客観的なスペックを比較し、その後に個人的な感想を加味する形で進行してみたいと思う。
C7とC6のボディサイズの違いは下記の通り。
C6クーペ C7クーペ 数値差
全長 4,455mm 4,510mm +55mm
全幅 1,860mm 1,880mm +20mm
全高 1,250mm 1,230mm ー20mm
ホイールベース 2,685mm 2,710mm +25mm
トレッド前 1,575mm 1,600mm +25mm
トレッド後 1,540mm 1,570mm +30mm
車両重量 1,520kg 1,540kg +20kg
まずボディサイズに関しては、C7コルベットはC6コルベットに比べて全高以外はちょっとずつ大きくなっており、車重も少しではあるが重くなっている事が分かる。ただし、両車を見比べた際の印象は数値以上にC7の方が大きく見える。一言で言えば、C7の方が圧倒的にボリューム感があるのだ。
実寸での違い以上に大きさが違う印象を受けるのは何故なのか?という疑問に対する答えは明白。デザインが違うからだ。
C7はロングノーズ&ショートデッキというコルベット伝統の基本スタイルを踏襲しているが、C5やC6と比べると、エッジが効いた彫刻的なデザインとなっている。とくにリアビューに関して言えば、丸形テールで柔らかい印象の強いC6に対して、角形テール&通常のノッチバック方式に変更されたリアウインドーなどにより、C7はC6よりもかなりボリューム感が強くなっている。
またC7は、全高こそC6よりも若干低くなっているが、全体的な高さに関しては同じか、逆に少し高くなっている。つまりボディの厚みが増しているのだ。計算したわけではないし、メーカーのリリースに書いてあったわけでもないが、実際の車両の体積に関しても、C7はC6よりもかなり増えていると思う。
ルックス的にはC6よりも一回り大きくなった印象のC7だが、ドライバーズシートに座った際には、とくに大きくなった感じは受けない。エンジンをかけて走り出しても、C6よりもボディが大きくなった感じは全くない。それどころか、車重に関しては逆に軽くなった印象さえ受ける。
C7をドライブした際に実際の数値以上に車重を軽く感じるのは、パワー、ボディ剛性、ボディバランス、ステアリングの4つの要素が影響していると考えられる。
パワーに関しては次項で検証するのでここでは詳細は割愛するが、C7はC6と比べると最高出力、最大トルクともに大きくパワーアップしている。この向上したパワーは、増大した20kgという車重を相殺して余り有る数字と考えられる。
ボディ剛性とバランスについては実は密接に関係している。
C7はC6と比べると車重が20kg重くなってはいるが、実は軽量化と強度の確保にはGMの様々な新技術が投入されている。特にC7の土台とも言える新型のアルミニウムフレームは、C6よりも57%も剛性が向上しており、重量は45kgも軽減されている。軽量&高強度&高精度のこの新型フレームは、C7における最重要ポイントと言っても過言ではないかもしれない。
そして、フレーム以外でも、カーボンファイバー製のボンネット&ルーフ、カーボン・ナノコンポジット技術を採用したアンダーボディパネル、フェンダー、ドア、リアクォーターパネル、リアハッチパネルなどの徹底的な軽量化により、ボディ自体もC6よりも17kgも軽くなっており、さらにはサスペンションにまで細かな軽量化が図られている。
もう10年以上昔の話になるのだが、まだ自動車雑誌の編集者をやっている頃に『ボディ剛性』について少し勉強した事がある。その際、車両の構造や強度について、様々な人の話を聞いたのだが、とあるレース関係者が、「レーシングカーが高い(高価)のは、軽くて強いから。重くて剛性感のある車体を作るのは簡単だけど、軽くて剛性の高い車体を作るのは難しいしコストもかかる」と教えてくれた記憶がある。今度のC7はまさしく後者。軽くて強いボディを持ったクルマなのである。
ただ、実際問題としてC7コルベットはC6よりも車重は重い。当然ながら「それほど軽量化にこだわっているにも関らず、何故トータルではC6よりも重くなっているんだ?」と疑問に思われる方もいると思うが、この疑問に対しての答えは「現代のクルマだから」あるいは「高級車だから」という事になる(笑)。
新型C7コルベットのプレスリリースには、『軽量化』という要素に関しての様々な説明はあるのだが、逆に重くなった部分に関しての説明はない。従って、以下はあくまで筆者の予想となるのだが、エアコン、プレミアムオーディオシステム、ナビゲーション、モニタースクリーン、クルーズコントロールといった快適装備。そしてエアバッグ、アクティブハンドリング、アドバンスド盗難防止システム、リアビューカメラといった安全装備など、現代の高級車ではマストアイテムとなっている様々な『主要装備』の積み重ねが大きく影響しているのではないかと思う。純粋に走行性能のみを追求するレース車両ではないのだから、この辺は仕方のない所だろう。
コルベットの弟分とも言えるシボレー・カマロは、現行型となって、前モデルである4thカマロ時代から200kg以上も重くなった(V8モデルの場合)。それを考えれば、あれほどの充実装備&快適性を実現していながら、C7の車重をC6からプラス20kg程度で収めたGMの技術陣の努力は凄いと思う。
さらにボディやシャシーというキーワードについて補足すれば、C7コルベットはFRのスポーツカーでは理想的と言われている50対50の前後重量配分を実現している。C6でのそれは前51対後49だったので、ほんの少しでもフロントが軽くなっている分、操舵感に軽快感があるとも考えられる。
しかし、この重量配分というのはあくまでも静止状態での数値であり、実際の走行時には加減速により前後の重量配分は常に変化する。静止状態での重量配分が51対49から50対50になった所で、それほどの違いが出るとも思えない。ただ、C7コルベットの場合、単に前と後というだけでなく、重心自体がセンター付近に寄っている感覚があり、これはかなり操作性に影響を与えているのではないかと思う。
C7コルベットをドライブした際に軽く感じる要因の最後がステアリングだ。
コルベットのパワステはC6までは油圧式を採用していたのだが、C7では電動式を初採用している。このパワステは、選択モードと走行状況に合わせてアシスト量を制御する優れものなのだが、ステアリングホイールの径がC6よりも小径化されているにも関らず、基本的な操舵感はC6よりもかなり軽いのである。この軽くて入力に素早く反応してくれる小径ステアリングにより、C7コルベットは実際以上に軽く感じるのだと思う。
ちなみにこの電動パワステについては、低速域では軽くて取り回しの楽さに貢献しているが、速度を上げていった際の直進安定性や操舵感も良好。電動式特有の不自然な感じもほとんどないし、旧来の油圧式よりも明らかに使い易い。電動式のパワーステアリングとしてはかなり高性能な部類に入ると思う。
「C7はC6よりも若干大きくなっているが、実際のドライブフィールは軽くて大きさを感じさせない」というような事を簡単に書こうと思ったつもりだったのに、いつの間にかかなりの文章量となってしまった(笑)。次項ではエンジンを中心とした動力性能について検証してみたいと思う。
>>新型C7コルベットを徹底検証!! vol.1へ
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