2005年に登場し、今年が最終モデルイヤーとなる6代目フォード・マスタングには、様々なハイパフォーマンスモデルや特別モデルが存在する。同じマスタングという車名を冠し、外観上にそれほど大きな違いはなくても、V6ユニットを搭載したベーシックなクーペやコンバーチブルと、スーパーチャージャー付V8ユニットを搭載した最高峰のシェルビーGT500では、中身は完全に別モノ。動力性能や販売価格には同じ車名とは思えないほど大きな隔たりがある。
そんな6代目マスタングの中で、過給器付のシェルビーGT500とはジャンルの異なるピュア・スポーツモデルとして、ファンの根強い支持を受けていたのが2012年と2013年の2年間だけラインナップされた『BOSS 302(ボス302)』である。
『BOSS』というのは、1970年にパーネリー・ジョーンズがトランザムシリーズのチャンピオンを獲得した際に乗った2代目マスタングのレース仕様車に由来するネーミング。マスタングのファンにとっては特別な思い入れがある伝統の名称であり、BOSSという名称が付く=特別なスポーツモデルと認知されるほどの名称である。
その辺りのファン心理はフォードも十分に理解しているようで、BOSSという名称を販売戦略のためのみに安易に使用する事はしない。実際6代目マスタングに設定されたBOSS 302も、2009年に発表されたレース専用車両『BOSS 302R』の公道走行可能バージョンとして発売されている。
6代目マスタングは2013年モデルでエクステリアを中心とした最後のマイナーチェンジを行っている。したがって、BOSS 302も2012年型と2013年型ではフロントマスクなどの外観は異なるが、フォード・レーシングのテクノロジーが随所に生かされた専用チューンの内容は共通している。
搭載される5リッターV8エンジンは、排気量こそベースとなっているマスタングGTと同じだが、吸排気系やカムシャフトなどの変更により、最高出力444hp&最大トルク52.5kg-mにまでスペックが引き上げられている。
また、エンジン出力の向上に合わせて、足回りは強化サスペンション、減衰力調整式ダンパー、強化ブッシュ、大径スタビライザー、強化ブレーキなどでハードに仕上げられており、タイヤには前225/40ZR19、後285/35ZR19サイズのピレリPゼロを採用。さらにはクロスレシオ&ショートストロークの6速MT、強化クラッチ、専用LSDなども装備しており、歴代のマスタングの中でも随一と言えるほどのスパルタンなスポーツ仕様となっている。
純粋に走行性能を追求したBOSS 302は、走りに重きを置くファンにとっては非常に魅力的なモデルである。とくにサーキット走行会やジムカーナ競技会など、本格的なスポーツ走行に使用するのであれば、過給器付エンジン特有の熱的な問題を抱えるシェルビーGT500以上に「使える」モデルだと思う。
しかし、当然ながらマスタングファンの全てがスポーツ走行に特化した性能を望んでいるわけではない。中には「BOSS 302(LAGUNA SECA)のスタイルは非常に魅力的だけど、走行性能についてはノーマルで十分」という人も少なくないだろう。実際、ベーシックなV6やV8モデルとは異質とも言えるほどハードな足回りや踏力を要求する強化クラッチなどは、公道を普通に走るだけが目的の一般のユーザーにとっては無用の長物とも言える。
そんなライトなマスタングファンに向けてASDNが販売を開始したのが、ここで紹介している『BOSS 302 LOOK(ボス302ルック)』である。
今回取材したBOSS 302 LOOKは実はまだ試作車なのだが、その名の通りBOSS 302の外観のみを忠実に再現したカスタム・パッケージとなっている。ベースモデルはV6でもV8でもMTでもATでも施工可能。その気になれば、オリジナルでは設定のないコンバーチブルでも制作する事が出来る。
基本的なパッケージとしては、フロントグリル、フロントリップスポイラー、リアウイング、リアディフューザー(今回の撮影車両には未装着)というボディパーツと、各部のペイント、ラッピング、特徴的なサイドデカールといったエクステリアのドレスアップが中心となっており、足回りやホイール、マフラー、インテリアなどはオプション設定となっている。
先に「スタイル重視のファンのために」とは書いたが、ASDNが設定したパッケージだけに、このBOSS 302 LOOKは、ユーザーのオーダーがあればパフォーマンス系のカスタムも追加でオーダー可能。
例えば足回りについては、ローダウン目的のダウンサス&パンハードロッドだけでなく、スポーツ走行にも対応した車高調なども選択出来るし、ブレーキの強化も可能。さらには、ベース車両が5リッターV8ユニット搭載車であれば、ASDNが販売協力しているヘネシー・パフォーマンス社のパフォーマンスアップメニューで490HPまでエンジン出力を上げることも出来る。つまり、その気になればメーカー純正のBOSS 302以上の性能を付加する事も出来るというわけだ。
このBOSS 302 LOOK、車両持込みによるカスタムが基本となるが、コンプリート・カーとしての販売も可能とのことなので、興味のある方はASDN事務局に問い合せてみるといいだろう。
なお、BOSS 302 LOOKは2010~2012年モデルに対応したパッケージであり、2009年までのモデルと2013~2014年モデルには対応していないのでご注意いただきたい(パーツ単体での販売は可能とのこと)。
183,250円
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