新型マスタングのスタイリングは、これまでの懐古主義的なデザインから脱し、流麗なスポーツクーペとして新たに生まれ変わっている。だからこそ、この新型をカスタムする際にはこれまでの旧箱型ボディとは異なる手法を用いなければならないはず。
すでにいくつかのメディアで報道されているが、たとえばガチガチのエアロでボディ周りを固めてしまうと、新型の流麗なるボディラインの抑揚が消えていまし、まるでフォードトーラスのように見えてしまうし、ボディのタテヨコ比率とホイールベースの関係上からか、リアに大きなGTウイングを付けてしまうと、これまたボディの間延び感がでてきてしまい、フロント&リアの前後バランスがおかしくなり、一瞬にしてダサくなって見えてしまう。
まったくの私見だが、新型マスタングこそ流麗なるクーペだからこそのいじり方あるはずだし、派手な突起物は使わずに、ボディの抑揚を一段と大きく見せるフェンダー×ワイドボディこそがマッチしているはずである。
そんな意識で新型を見ていると、昨年のセマショーに出展された新型ベースのカスタムカーの中に異色の1台を発見した。イエロー×ブラックボディのV8マスタングGTである。
ショーカー出展という制約上、どうしても派手になるのは仕方ない。だが、個人的には上野動物園にパンダを見に行く感覚しか持てなく、どうにもショーカーという存在には興味が持てない。だからこそ、このイエローマスタングを見たときは、意外にもカッコイイとハッとさせられたのだ。
ケバケバしいショーカーが居並ぶ中、イエローボディをベースにブラックパーツを散りばめ、品良く控えめにまとめた1台だ。
これまでのようにアメリカンテイスト溢れる旧型ボディでは似合っていた手法だったとしても、新型のボディに似合うとは限らない。やはりワールドワイドなマスタングとなる宿命を背負っているだけに、世界共通の品の良さ(アメリカ的アクの強さは弱まった)を身につけただけのことはある。
ボディは基本的にノーマルベースであり、各種ビレット系パーツやエンブレムロゴ、ルーバーが装着されているに過ぎず、全体的なイメージの構築はやはり足回りにあると言えるだろう。
この約1インチローダウンされた足回りは、アイバッハのスポーツサスにて施工されており、22インチホイールが組み合わされている。このホイールは、最新のフォローフォーム製法を採用した鋳造ホイール・VOSSEN VRF-1 22インチであり、ユーロテイスト溢れる細身のスポークが新型の品の良さに非常に良くマッチしていると思う。
加えて装着されているオーバーフェンダーは、0.75インチと小振りなサイズだが、下げられた車高とツライチにセットされたタイヤ&ホイールと絶妙にマッチしており、すでにこれだけでも十分なカスタマイズ効果を発揮していると言えるだろう。しかもペイントせずにあえてブラックとしたことでイエローボディを一段と引き立てている。ボディラインが一段とキレイに見えるから効果大だ。
と同時にボディセンターに走るドライカーボンのストライプがフェンダー&ホイールとマッチし、絶妙なるワイド&ローなマスタングが完成したのである。
このマスタングGTファストバックは、ビレット系のエクステリアパーツを中心に、車種を問わずにさまざまなドレスアップアイテムをリリースしているディフェンダーワークス社と、アストロ時代から日本に最新のアメリカンカスタムを提案してきたガレージダイバンがコラボして製作した車両であり、実作業は西海岸を代表するコーチビルダーのモンタージュモータリングが担当しているという。
このマスタング、目立ってなんぼのド派手なカスタムカーが大量に集うセマショー会場にあっては、ともすれば埋没してしまいそうなほど控えめな仕様で仕上げられているが、逆にそれだからこその輝きを放っており、同時にそれはこの車両がASDNのオプショナルパッケージ車としての販売が意図されているからにほかならない。
ちなみに余談だが、ここに装着されているパーツは本国フォードのディーラーオプションとなっているものがほとんどであり、USディーラー公認のアフターパーツでもあるのである。
日本のユーザーがストリートで楽しむことを前提に製作されている以上、そのままでは車検に通すことができないような非現実的なカスタムは論外だし、現在のマスタングのファン層を考えれば「見る人が見ればわかる」的なさりげなくもセンスが良いスタイルを追求したこの仕様は正解だろうと思う。
個人的な好みを言わせてもらえば(この仕様でも十分なんだが)、ステッカーやバイナルグラフィックを全部削除し、センターストライプは新型シェルビーGT350のようにオーソドックスな2本のストライプにするか、それともストライプなしでフロントボンネットフード全面をブラックにするか…。どちらにするかは、今月取材予定の実物を見てから決めようと思う。
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