通称PJと呼ばれるオレンジ色のマスタングは2007年に登場した。しかも全世界500台限定だった(この車両は240/500)。
このPJは、マスタングのチューンナップで有名なサリーンが制作したコンプリートモデルであり、1950~70年代にアメリカで活躍した伝説のドライバー・パーネリージョーンズ(=PJ)の名を冠したスペシャルモデルとして誕生したのである。
このPJは、パーネリー自身がかつてドライバーとしてSCCAトランザムチャンピオンシップを制し、その時ドライブしていた伝説のスーパーマスタング・BOSS 302を復刻させたもの。
05年に登場したマスタングに強いインスピレーションを受けたパーネリーがスティーブサリーンに直接話を持ちかけて実現したマスタングなのである。
さらにこの話には続きがあり、フォードは、このPJのために新たに70年時のチャンピオンカーと同色となるグラバーオレンジのボディカラーをわざわざ純正設定したのである。
ベースとなっているのは2007年型マスタングGT。当時まだ4.6リッターだったV8エンジンは5リッター(302cuin)にスープアップされ400hpを発生させる。この時点でざっと純正比100hp以上のアップであり、それをクイックレシオの5速MTと組合わせることで、超軽快なマシンに生まれ変わったのである。
足回りは、サリーン製サスペンションに19インチにサイズアップされた7本スポークホイールが組み合わされ、ブレーキもサリーンチューニング。マスタングを知り尽くしたサリーンのノウハウが注ぎ込まれているのである。
往年のBOSS 302を彷彿とさせるボディは、すべてに手が加えられている。フロントグリル、リアパネル周りはクローム処理され、レーシーなフードピンでロックされるボンネットフードにシェイカーフード、さらに当時、ホモロゲ取得のためのロードカーに採用されていたリアウインドーのルーバーも健在。
一方インテリアも同様にカスタマイズされている。ステアリングには「PJ」のロゴ。センターパネルのルーバーはパーネリー&スティーブの直筆サインが入る。
これまで何度も言っているが、この型のマスタングのスペシャルモデルとして誕生した数々のモデルラインナップの中で、このPJは随一の完成度でありカッコよさである。
この実物のPJには、中途半端に模倣されたPJもどきや自己流アレンジを施したマスタング・カスタムカーにはない洗練度で満たされ、本物のみが発するオーラで満たされているのである。
なお、2012年~2013年にかけてフォード自身がマスタングBOSS302を登場させるが、カスタム色やチューニング色が強いのはPJであり、そう言う意味での満足感はフォード作のBOSS302と同レベル以上と言って間違いない。
超貴重なPJの出物。5年後くらいに出会いたかった。資金があれば筆者が今すぐにでも欲しいと本気で願う一台である。
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