5月10日、シェルビー アメリカンの創設者であり伝説の名車シェルビー コブラの生みの親キャロル・シェルビー氏が、生まれた故郷テキサス州の病院で、その輝かしい89年の生涯に幕を下ろした。
キャロル・シェルビー氏は、1923年1月11日テキサス州シースバーグ市で生まれた。第二次世界大戦時にアメリカ陸軍のテストパイロットと教官を勤めた後、戦後は養鶏所経営に専念していたが、50年代にレーシングドライバーとしてデビュー。フェラーリやマセラッティを駆り3度の全米スポーツカーチャンピオンを獲得し、59年にはアストンマーチンでル・マン24時間レースに優勝するなど(F1にまで参戦)、数々の栄光をその手中に収めた。
だが翌60年、幼少時から抱えていた心臓病のためにレーサーを引退すると、スポーツカー・マニュファクチャラーへと転身。シェルビー氏は、ライトウェイトスポーツカーに高出力エンジンを搭載するパッケージングにトライし、英国AC社の2シーター・オープン「エース」にフォードV8エンジンを搭載した名車「ACコブラ」を、62年のニューヨーク・オートショーでデビューさせたのである。
同年、ロサンゼルスにシェルビー・アメリカンを興し「シェルビー・コブラ」の市販化を開始すると共に、翌年にはボブ・ボンデュラント、ダン・ガーニー、ケン・マイルスといった一流ドライバーと共にレーシング・チームを結成。
コブラベースのレーシングマシンを擁してヨーロッパのレース界に進出すると、フェラーリ、ポルシェ、ジャガーを抑え、65年にはGT世界選手権を制覇。翌66年にはル・マン必勝マシンとして開発されたフォードGT40で優勝し、さらに67年に連覇を達成するなど、一躍60年代のフォード・レーシングの立役者となった。
ビッグブロックV8を搭載した「427コブラ」やフォード・マスタングをベースにした「シェルビーGT500」といったアメリカスポーツカー史上に残る名車達を世に送り出したキャロル・シェルビー。現在でも最新のマスタングの最強モデルとしてシェルビーGT500の名を冠したモデルがリリースされるなど、アメリカンスポーツカーを語るにあたり、欠かすことのできないビッグネーミングだ。
今年は、奇しくもシェルビー・コブラ誕生50周年にあたる節目の年。この世を去ったキャロルに世界中のファンが深い哀悼を捧げたのである。
5月30日、ロサンゼルスにある全米屈指の自動車博物館、ピーターセン・オートモーティブ・ミュージアムで、キャロル・シェルビーを偲び、その輝かしい生涯を振り返る会「Carroll Shelby A Life Remembered」が行われた。
ピーターセンミュージアム2階に特設された式典会場へと続く館内には、歴代シェルビーマシンが続々と並ぶ。62年型シェルビー・コブラの車体番号CSX2000(プロトタイプ第1号車)とCSX2001(量産第1号車)、そしてデイトナ24時間優勝マシンのGT40MkII、65年型GT350マスタング、68年型マスタングGT500KR、さらに2005年型フォードGT等々、シェルビーのアイコン的なマシンが展示され、来場者は、キャロルが手掛けた魅力的なマシンに再会した。
式典会場隣の駐車場にも、初代コブラから最新のフォードGT500まで100台以上がズラリ。関係者や現役オーナー達が会場に乗りつけたシェルビーで埋め尽くされたのだ。
午後6時55分過ぎ、式典ホスト役ジェイ・レノ(コメディアンであり、有名なカーマニアでもある)の「スタート・ユア・エンジン」という合図でオーナー達が一斉にエンジンを始動、式典開始が告げられた。これは全世界にライブ中継され、会場外でもシェルビーオーナー達が各地でエクゾーストノートを奏でたという。
1200人以上の関係者、そしてシェルビーオーナー達を前に、会場内のステージでは創世記のシェルビー・アメリカンと関係の深いフォード社を代表してヘンリー・フォードの孫にあたるエドセル・フォード2世が、またル・マンを共に戦ったダン・ガーニー、60年代からのチームメンバー、ビル・ニール、パイロット時代からの親友ボブ・フーバー、そして家族ぐるみの親交のあるベル・エア・カントリークラブのオーナー、ウォルター・ミラー氏らが、2時間にわたりそれぞれの思い出を語り、会場は笑いと拍手に包まれた。
ジェイ・レノは「僕のコレクションにフェラーリがない理由? それは、笑顔で写っているエンツォの写真を見た事がないからさ。逆にキャロル・シェルビーの写真は、笑っていないものが見つからないね」。晩年まで子供っぽさを漂わせたキャロル・シェルビーを物語る貴重なエピソードだ。
式典が終わってもなお来場者一同は会場内留まり、設置された往年の写真パネルを前に、時を忘れてアメリカン・レジェンドの思い出話に華を咲かせたのだった。
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