TEST RIDE

[試乗記]

大排気量V8エンジンをDGTで操るアメリカンマッスル最後の大物

2022 フォード シェルビーGT500 ヘリテージパッケージ

ブリタニーブルーとウインブルドンホワイトで飾られた限定車

終焉が近づいているシェルビーGT500の限定モデルを取材した。

更新日:2023.02.21

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/スペース YOKOHAMA TEL 0455300139 [ホームページ] [詳細情報]

アメリカンマッスル最後の大物もあとわずか

 フォードにおいては、2022年には2台のスーパーカーが存在していた。1台がフォードGT、そしてもう1台がシェルビーGT500。ミッドシップとFRの雄である。

 ミッドシップマシンたるフォードGTは、3.5リッターV6ツインターボを搭載して660hpを発生させていたが、2022年をもって生産を終了。そしてFRのスーパーカーであるシェルビーGT500にもそろそろ終焉が近づいている。

 現行型シェルビーGT500は、生産期間よりも長い開発時間を要した非常に価値のある1台。登場は2020年だが、実は2015年から開発&発表が待たれた非常に期待の高い1台であった。

 なんせ当時はマッスルカーのパワーウォーズ時代。チャレンジャーヘルキャットが707hpを発生させ、さらに797hpを発表したことから、パワー数字に対するシェルビー開発陣への重圧が重くのしかかり、GT500の登場もかなり後ろ倒しになったと言われていた。

 そんなGT500は、2020年にデビューする。5.2リッターV8にスーパーチャージャーを装備したエンジンは760hpを発生させ、車体剛性や足回り、さらには車重を含めたトータルバランスにおいて、チャレンジャーヘルキャットレッドアイを上回ったのである。

▲2020年に登場したシェルビーGT500。そのアグレッシブなスタイルはそのままスペックに直結している。

▲そのGT500の限定モデル、ヘリテージパッケージには美しいブルーのボディカラーが採用されている。

 シェルビーGT500は、それ以前のスーパーモデル・シェルビーGT350をベースとしており、GT350の生産が終了した翌年に登場している。GT350同様にフロントセクションの一部にカーボンパーツを使用するなどしてフレーム等が強化されており軽量化と高剛性を実現している。

 同時に同様のフロントマスク等を使用しているが、実際にはGT350を上回る、一段と刺激的なスタイルを貫いている。

 大型フェンダーやアグレッシブなスプリッター、さらには取り外し可能なボンネットベンチレーションを備え、圧倒的な攻撃的フォルムを形成しているのである。

 くわえてエンジンもGT350をベースにしながらもマスタング史上随一のパフォーマンスを実現。

 5.2リッターV8エンジンにスーパーチャージャーを装備して760hp、最大トルク625lb-ftを発生させる。この数字は、旧モデルの662hpを遥かに上回る98hpアップを達成している。

▲搭載される5.2リッターV8エンジンは、スーパーチャージャーを装備して760hp、最大トルク625lb-ftを発生させる。

▲エンジンルームにはカーボン製のタワーバーによりガッチリ固められている。

▲フロントフレームの一部にはカーボン素材が採用されている。

 さらにこのエンジン製作には、熟練マイスターによる手組みが行われ、そのマイスターのネームプレートがエンジンルームに貼られているのである。

 ちなみにGT350に使用されているV8NAエンジンにはフラットプレーンのクランクシャフトが使用されているが、GT500にはクロスプレーンのクランクシャフトが使用されている。

 このエンジンに組み合わされるミッションが7速DGT。DGTとはデュアルクラッチトランスミッションであり、フォードGTに使用されていたものと同機というからその信頼性はかなりのもの。

 くわえてギアシフト時にかかる時間はわずか0.1秒未満ということであり、人間の感覚よりも素早い操作が行われているから、購入後のオーナーさんはきっと驚き&満足するに違いない。

 このミッションにはシフトダウン時に自動的に回転数を合わせるオートブリッピング機能が搭載されているから、MT車よりも圧倒的に速く走れるというのは本当の話である。

 結果、インテリアからシフトノブが消え、ダイヤル式のギアセレクターのみが配置され、ステアリング裏のパドルにてシフト操作することになる。

 サスペンションも350ベースであるが、さらに一段リファインさせ、市販車レベル最大サイズのブレンボブレーキを装備し(16.5インチ)20インチホイールが組み合わされる。

▲フロントの大型グリルにフロントサイドの大型カナードが空力性能の向上をもたらし、またGT500のアグレッシブさのベースになっている。

▲20インチホイールに最大級のローターサイズを備えたブレンボブレーキを装備している。

▲空力性能を重視したデザインを採用するリアウイング。

▲アメリカンマッスル最後の大物には、大口径のエキゾーストシステムがよく似合う。

 さて、そんなシェルビーGT500の2022年型ヘリテージパッケージである。1967年型初代シェルビーGT500が当時のル・マンでの1-2-3フィニッシュを飾り、その55年後のシェルビーGT500が今もなおストリートリーガルにおける最もパワフルな車両として存在していることを記念したヘリテージモデル。

 まずボディカラーがブリタニーブルーと呼ばれるカラーリングで、そのボンネットフードとサイドにウインブルドンホワイトによるレーシングストライプが描かれている。

 このブリタニーブルーは、光の当たり方によってブルーにもグレーにもシルバーにも見える非常に綺麗なカラーリング。そしてホワイトのレーシングストライプとブラックホイール&赤いブレンボブレーキのトータルなバランスが見事に優れた逸品。

 基本性能の変化はないが、これまでに見たGT500におけるベストなボディカラーと言っていい。ちなみにこのヘリテージパッケージは限定モデルだから一段と数が少ないのは購入者の特権と言えるだろう。

▲ブリタニーブルーのボディカラーにウインブルドンホワイトのレーシングストライプがよく映える。

▲ボディサイド下方にもウインブルドンホワイトのストライプが描かれている。

▲全体的にレーシーかつ洗練された室内空間が構築されている。スエード素材のステアリングがGT500の証。

▲シフトノブが廃止され、7速DGTミッションはロータリーギアにて操作する。

 ということで、そんな限定モデルの実車であるが、全体的な迫力が凄まじい。いわゆるライバル車となるチャレンジャーヘルキャットとは正反対の超攻撃的スタイル。アグレッシブな空力パーツによる視覚的効果も高く、そのモンスター度がそのままスペックに直結していると言っていい。

 一方、室内に目を移せば、肉厚のレカロ製シートが目に入る。まるでレーシングカーといわんばかりのホールド性に驚きつつエンジンを始動すれば大排気量V8がいとも簡単に目覚める。

 レーシーなエキゾーストノートを響かせながらアイドリング時から発する野太いV8エンジン、そしてロータリーギアシフトを回し「D」レンジへ。

 760hpという大パワーをフォードGT譲りのDGTで操るアメリカンマッスル最後の大物。既存のマスタングやライバル車とは次元の違う速さが得られることは間違いなのである。

 なお、この車両を直輸入しているスペース横浜には、このカラーリングの他にブラックのGT500も在庫している。スペース横浜に関しては、このGT500に関して2020年の発売から15台もの個体を直輸入し販売&メンテナンスしてきた経緯があるから、まるでレーシングカーのような基本スペックを備えたシェルビーGT500を購入するにはうってつけのショップであると言えるのである。

▲パドル操作による変速はフォードGT譲りのレーシーナーもの。それだけでも他のアメリカンマッスルとは一線を画す。

▲油温、油圧計が装備されているのも高性能車ならでは。

▲一段と洗練されたレカロ製スポーツシートのホールド性は最強の名に相応しい代物。

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