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短命に終わるも、今なお魅力的なフルサイズSUV

クライスラー アスペン

CHRYSLER ASPEN

クライスラー ブランド初のフルサイズSUVがアスペンである。ベースとなるのは2代目ダッジ デュランゴだが、インテリアなどは独自のラグジュアリー路線でまとめられている。タホやエクスペディションなどのライバルたちに対してアドバンテージはあるのか?

更新日:2012.02.01

文/石山英次(ishiyama eiji) 写真/田中享(Tanaka Susumu)

取材協力/レアルトレーディング TEL 0429601611 [ホームページ]

惜しまれつつも短命に終わったフルサイズSUV

 クライスラー ブランド初のフルサイズSUVがアスペンである。ベースとなるのは2代目ダッジ デュランゴ(04年登場)で、06年に発表され、07年に登場。09年にはハイブリッドモデルが追加されるなど、かなりの意欲作だった。

 アスペンは5100×1930×1869ミリというフルサイズボディに、4.7リッターV8と5.7リッターV8ヘミの2機種が搭載され、また2WDと4WDがチョイス可能だった。インテリアは、ベースとなるダッジデュランゴとは比較できぬほど豪華であり、デザイン、装備、性能等どれをとってもライバルとなるタホやエクスペディションに劣るものではなかった。

 アスペンは、09年にダッジデュランゴ共々生産終了となってしまい、実質3年間のみの製造だったが、その後もクライスラー製フルサイズSUVを求める声が後を絶たなかったのは、アスペンの出来栄えによるものだろう。
 ちなみに余談だが、アメリカの金融危機(2007年)に端を発した世界的不況から、クライスラーが連邦倒産法の適用申請をしたのが2009年。つまり、アスペンの登場時期周辺から経営状況が悪化し、生産モデルの整理という不運な状況に陥り、早期の生産終了を迎えただけであり、アスペン自体に問題があったわけではまったくない。

タホは5.3リッターV8エンジンでエクスペディションが5.4リッターV8エンジンを搭載している中、アスペンには、5.7リッターV8ヘミが搭載される。しかも「ヘミ」だ。このエンジンはノーマルでも非常にパワフルで十分に楽しいエンジンだが、まだまだ余力を残している感じもある。

インテリアのベースも基本ダッジデュランゴだが、メーター周りやコンソール周辺の装飾が豪華になっており、全体として華やかな雰囲気を醸し出している。シルバーのメーター計器も非常に似合っている。中央の時計もかつてのブルガリほどではないが、インテリアに華を添えている。

小物入れやカップフォルダーなども充実している。

一見するとボイジャーなどに通じる、比較的大人しいSUVを想像するかもしれないが、実際に乗るとV8ヘミを生かした熱い走りが堪能できる。乗った筆者が一番驚いたほど、だ。

背の高い300Cさながらの走り

 試乗モデルは07年型の2WD車。5.7リッターV8ヘミエンジン搭載(335hp)の約3.5万キロ走行車である。車両価格は288万円という。シルバーのボディカラーにグレーのインテリア。ステアリングやダッシュ周りに明るい色のウッドが貼られ、全体的な質感がかなり高い。兄弟車となるダッジデュランゴのインテリアは質素な雰囲気だったが、アスペンにはそういった傾向は一切ない。

 ドア開けてみる。そのドアの重さにまずビックリする。最近の国産車やアメ車においても味わえない重厚なドア。ガチャっと閉まり、そのドアの開閉に感動する。シートに腰を下ろしステアリング位置を合わせる。目の前にあるメーターの雰囲気は近年のクライスラー系に通じるもの。そう、この重厚なフィールやステアリング&インテリアの雰囲気は300Cそのものだった!(個人的な印象だが)

 エンジンをかけいざスタートする。再び驚くのがステアリングの硬質感&重厚感。SUVとは思えぬ程シッカリしたレスポンス。そしてアクセルひと踏みの出だしの勢い。まるで背の高い300Cのごとく高剛性なボディが圧倒的な瞬発力を見せる。流れの良い幹線道路においてはSUVであることを忘れるほど軽々走るのだ。その際のエンジンもスポーティそのもの。「クォーン」とマッスルさながらのサウンドに、正直燃費走行などは期待できない(笑)。

 アスペンは、一見するとクライスラー ボイジャーなどに通じる面持ちからか、比較的大人しいSUVを想像するかもしれないが、実際にはそうではない。どちらかというとその特徴は、300Cそのものと言っても過言ではない熱い「走り」にあり、そこにおいてはタホやエクスペディションもまったく歯が立たないだろう。

 試乗を終え各部の撮影のために居住スペースの確認をしたのだが、この部分においてもかなりの実力の持ち主だった。シートアレンジが多彩であり、使い勝手も良好。各部のクオリティにおいてはライバルたちになんら劣らないことが改めて確認できた。

グレーの分厚いレザーシート。座り心地は申し分なく、中古車としての質感としても、かなりキレイな状態である。インパネ周辺の状態やこのシートから推測して、かなりの程度を維持しているといえるだろう。

セカンドシートは、ドライバーズシート以上にキレイであり、ほとんど使った形跡が見当たらないほどだった。インテリアの質感というのは、中古車で一番気になる部分であるだけに、このアスペンのオススメ度はかなり高い。

サードシートもセカンドシート同様、使った形跡なし。シートアレンジも多彩であり、フルサイズSUV特有の広大な居住空間を生かした快適なドライブが可能であろう。

アスペン所有者がいる経験値の高いショップ

 唯一ネガがあるとすれば、人気面などにおけるネームバリューの低さかもしれない。それと並行車ゆえのメンテナンスへの不安。前者においては実際に試乗して、その良さを確認してもらうしかないが、後者においては販売元のレアルトレーディングのスタッフが有力な情報を与えてくれた。レアルトレーディング内のスタッフにもアスペンのオーナーがおり、すでに3万キロ以上の距離を刻んでいるというが、これまでにトラブルなどは一切なく、年3回のオイル交換のみで、まったく不安なく乗り切ることができたという。

 また同社独自の保証体制も非常にシッカリしており、不慮のトラブルに対しても出来うる限りの対応をしてくれると言うから安心感が高いはずだ。

 パワフルなSUVということで、同年代にはグランドチェロキーSRT8なる超高速系SUVも存在するが、アスペンはどちらかというとアメ車系フルサイズSUVの進化版であり、コラムシフトとV8エンジンを堪能しつつ、時に300Cばりのエンジンパワーを見せつける! そんな使い方が似合うフルサイズSUVである。同年代のタホ等の中古車と比較すれば、明らかに安価であり、それでいて性能は確実に上回るのだから、手頃なフルサイズSUVを求める方には一見の価値ありだろう。

室内のシートを三列目まですべて使用した状態でも、かなりの荷室スペースが確保できている。通常ならこれだけでも十分な範囲だろう。

セカンド、サードシートを倒した状態では広大なスペースが確保できる。シートを倒すのも簡単であり、操作性も良好。

三列目シートは、2:1の分割シートになっている。

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