アメ車には、「5年スパンの『進化』の法則」というものがある。2000年のトレイルブレイザーにはじまって、2005年のダッジマグナム、2010年のカマロ、そして2015年のアルミボディを纏ったフォードF150 etc。
どれもその時代のアメ車を象徴するクオリティカーとして多くの人々を驚かせる。この先5年後の2020年頃には、フォードGTやブロンコ、ジープワゴニア等が復活を果たし、アルミボディのアメ車がぞろぞろと増えて、さらにはコルベットが念願のミッドシップカーになってと…、さらに二段ほど今よりレベルが上がったアメ車が見られるはず…、なんてことを期待するわけである。
そんな中で2004年型ダッジラムSRT10と2006年型シボレーSSRを取材した。どちらも2005年前後に登場した、アメ車バブル的な時代に生まれ存在だけに、非常に凝った作りをしているのが特徴である。かたやバイパーのV10エンジンを積んだモンスタートラック、もう一方は トラックの荷台を持ったオープンカーである。
しかもオープンの仕組みは、その当時のGMトップモデルたるキャデラックXLRと同様のハードトップを備え、エンジンにはC6コルベットに搭載されていたLS2V8が搭載される等、ちょっとしたファニーカーの域を超えている。まさに崩壊前のバブル状態時に生まれた『名品』と言っても過言ではないのである。
ということで、トラックの姿をしたちょっと異形なモデルとして、さらには裏バイパーvsコルベットとして試乗させていただいた。
ダッジラムトラックを象徴するデザインとして、今なお系譜を引く。このデザインが現行トヨタタンドラのスタイルに影響を与えたというのは非常に有名な話。
過去GMに、454SSというハイパフォーマンストラックがあったが、ダッジはバイパーというスーパーカーのエンジンをそのまま搭載した。これこそバブル時代をもっとも象徴している産物といっても過言ではない。
単なるトラックに、この眩しすぎるエンジンが搭載されているなんて、夢のよう。このアメ車版スーパーカーには、8.3リッター V10 OHVエンジンが搭載され510hp、最大トルク525lb-ftを発生させ、6MTで操作する。めちゃくちゃ楽しすぎるサイコーの1台である。
まさに裏バイパー対コルベット対決。両者ともに今現在でも一流のパフォーマンスを感じさせ、さらに出来がいいことに驚かされる。
ダッジというブランドネームとヒストリー、そしてデザイン&エンジンなどが醸し出す迫力が伴って、熱狂的なファン層を持つダッジラムトラック。中でもSRTシリーズは、2004年から2006年までの3年間存在した超ハイスペックなマシンであり、世界中のスーパーカーオーナーをも虜にしていたほどの人気マシンであった(本国でもランボルギーニオーナーのセカンドカーとして人気を博したという)。
感覚としてはまさに「荷台のついたバイパー」が相応しく、エンジン、ミッション、デフといった主要メカには、バイパーのものをそのまま流用していたのである。
搭載されるエンジンは8.3リッター V10 OHV。まさしくバイパーのそのもののエンジンであり、パワーは510hp、最大トルクは525lb-ft。当時レギュラー(シングル)キャブは6速MTのみの設定となり、逆にクワッドキャブでは4速ATのみとなっていた。ホイールは22インチで、ブレーキはブレンボ化されるなど、ハイスペックの名に恥じない強化品が各部に装備されていたのである。
インテリアは、普通のラムをベースにメーター周りがこれまたバイパー譲りのパーツで構成され、シフトレバーはハースト製。シフトフィールはトラックそのものだが、走り出すとバイパーを運転している気になれるから不思議である。
全体的に大柄人向けに作られたような印象の調整式シート座り、スターターボタンでエンジン始動。その一瞬から緊張感がみなぎる。何せエンジンがバイパーである。その爆音サウンドもバイパーそのものであるから、何とも刺激的なのだ。だが、着座位置はトラックである(高いということ)。そのアンバランスさがお見事!
室内からのドライバーの視界は意外にも良く、深めのクラッチペダルを踏み込んでいざ発進。実際には、クラッチさえ踏み込めれば、つなぎはいとも簡単であり誰でも普通にスタートできるだろう。それほどのとてつもない低速トルクであり、極端な話、慣れればクラッチだけの操作でも(アクセルを煽ることなく)走ることは可能である。
しばらく走り、ちょっと手馴れたところでアクセルオン。さすがに車重のあるトラックだけあって、ホンモノのバイパーのようなワープ感覚は味わえないが、だがV10のフィーリングと加速感は圧倒的である。しかも目線が高いからか、体感速度以上に速く感じるから不思議である。これまた感覚的な話で恐縮だが最新のカマロ&マスタングあたりのV8モデルでさえも、コイツの後塵を拝するに違いない。重量級のトラックとはいえ、それくらいの速さは確実にある。
インテリア全体はラムトラックのままだが、メーターやシフト、そしてクラッチ等がただならぬ迫力を物語る。ピラーには、油温計が装着される。比較的大柄なシートとは裏腹に、走りの印象はタイトであり、ドライバーを熱くさせる。
シフトレバーはハースト製でシフトフィールはトラックそのものだが、ゲートは明確でストロークは大きいが、トラック全体のフィーリングとマッチするだけに、運転していて違和感を抱くようなことはまったくない。それでも走り出すとバイパーを運転している気になれるから不思議である。
このクルマの唯一なネガは、クラッチペダルの踏み込みが深いこと。足の短い筆者ではシート位置を全開で前にセットしないと踏み込めない(笑)。だがペダル自体はそんなに重くはないので、操作性は悪くない。とてつもなく強烈な低速トルクの恩恵もあって、慣れればクラッチの前後操作だけで発進が可能となる。
重量級のモンスターだが、最新のカマロ&マスタングあたりのV8でさえも、加速競争だけならコイツの後塵を拝するに違い。それほど速い!
一方足回りは、街中を普通に走る程度(プラスαの速度)では非常にクイックだ。ロール感もなく安楽な室内空間とは真逆な非常にタイトな乗り味を提供してくれる。しかし、速度域が高くなるにつれ前後ピッチングやロールが感じられ、さすがにトラックとしての物理の壁にぶつかってしまう。だが個人的にはそのアンバランスさが非常に面白いと思う。安易な言葉だが、「アメ車っぽい」じゃない。
じゃじゃ馬な感じをトラックで演出しているところもそうだが、イマドキの落ち着いたクルマには無い感じがたくさんある。それに、「ダッジ」に「ラム」に「バイパー」に…etc、どれも一時代を築いたブランドネームだし、それらが一堂に会した夢のようなトラックとしての希少価値がなんともソソる。
確かに激しい走りをすれば、トラックとしての限界も見えて来るかもしれないが、正直われわれ一般ドライバーのレベルでは、ノーマルでも十分に楽しめる。というか、6速MTが楽しすぎる。
感覚としては、まさにスーパーカーを所有する感じに近いのではないか。個人的には普通のバイパーよりもずっと気を遣わずに乗り回せるし、これなら家の近所を走るためだけにでも所有したい。何より「特別感」が嬉しいし、「Theアメ車」としてのオーラがあって非常に好みであった。
ホワイトメーターを注視しながらMTを駆使してV10を操る…。最高のドライビングプレジャーである。2速でレッドゾーンの6000回転まで引っ張れば敵なしの加速感。
スエードとレザーのツートーンシートは、日本人には少し大柄に感じるが、質感等は悪くない。SRT10の雰囲気にもマッチしている。
22インチホイールにブレンボブレーキを備えた足回り。普通に走る程度では十分に事足りる。余談だが、本国でもこういったノーマル状態での出物はほとんどないというから、このフルノーマル状態のSRT10の価値は高い。
家の近所を走るだけでも熱くなれる。まるでスーパーカーと同様の資質を持っているラムSRT10。速度域が低くても楽しいという稀有な魅力の持ち主である。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES