1989年デトロイト、そこで開かれた北米インターナショナルショーに「ダッジバイパーRT/10」と名付けられた巨大なロードスターのプロトタイプが突然、出品された。これがバイパーの最初の姿である(その10年後にプリムスプロウラーがデビューする)。
ここで好評を得たことに自信を持ったクライスラーは、バイパーの生産化を決断。彼らは、コブラの生みの親・キャロルシェルビーをアドバイザーに迎えるなどして開発に取りかかり、92年1月のデトロイトショーにて市販モデルを発表した。
ダッジバイパーRT/10がその後、ダイナミックなスタイリング、比類なきパフォーマンスによって、たちまちアメリカンスポーツカーフリーク達のハートを射止めたのはご承知のとおり。
そのバイパーが10年後の2003年、フルモデルチェンジを受けた。RACE & TRUCKの意味を持つRT/10に対して、ニューモデルはSTREET & RACING TECHNOLOGYの頭文字を取って「SRT-10」と名付けられた。ちなみに10は10気筒エンジンを意味している。
このモデルチェンジに際してクライスラーPVO(パフォーマンス・ヴィークル・オペレーション)は、全米のバイパーオーナーにアンケートを取り、リサーチを行なった上で開発したという。
そこでのモデルチェンジに対するリクエストは、「さらなるパワー、容量の大きなブレーキ、ボディの軽量化…」だったという。つまり、彼らは時代の流れに即した快適装備満載のスポーツカーよりも、第1級の動力性能を備えたスーパースポーツカーとしての道を選んだのである。
クライスラーは、人々の要望に敢然と向き合い、第2世代のバイパーを造り上げた。そのパフォーマンスは強烈のひと言である。
搭載されるV10エンジンは、ボア&ストロークともに増加して505キュービックインチ、すなわち8277cc(8.3リッター)に排気量を拡大し、新設計のアルミブロックや吸排気系の見直しにより510hp、トルク525lb-ftを発生させる。コイツはとにかく強力で、サーキットでも不用意にアクセルは踏めないという代物だった。
一方、先代のアグレッシブなスタイリングは踏襲され、リファインを重ね洗練されたデザインに生まれ変わった第2世代バイパーは、大阪出身の日本人デザイナー、鹿戸治氏の手によるものだ。
コンバーチブルということで、ボディ剛性も気になるところではあるが、SRT-10では、シャシーが徹底的に見直され、ねじり剛性で約30%ものアップを果たしている。それでも車重は先代同様の1536kgに収まっているいるわけだから、実質軽量化されたも同然だろう。
ブレーキにはブレンボ製2ピストンキャリパーに14インチローターを採用、さらにフロントにはブレーキクーラーが設けられ、耐フェード性も格段に向上している。SRT-10の510hpというパワーを考えると、ブレーキに限ってはやり過ぎということはないだろう。
この第2世代のバイパーは、バイパーフリーク達によるリクエストとクライスラー首脳陣達のスポーツカーに対する情熱とが見事に合わさって具現化されたスーパースポーツカーである。しかもコルベットほどのバランスの良さではないにしろ、重いV10エンジンを搭載していながらも、スポーツカーとしての資質の高さを備えた、ある意味レーシングマシンといっても過言ではない造りを実現しているのである。
バイパーに関しては、初期型RT/10のイメージが多分にあり、アクセルを強く踏み過ぎると簡単にテールがズルっと滑るというあの瞬間(笑)をいつも思い出す。過去に一度経験したことがあるのだ。
その昔、某ショップのブルーのRT/10に同乗試乗した際のこと。天候は雨。環七の轍に溜まった雨水と格闘して、さらにテールを右に左に振りながら走り回ったあの日のことは多分、一生忘れない。
だからバイパーに関しては、たとえ一般道の試乗でさえも自分の技量で扱える代物ではないから気をつけろ、不用意にアクセルを踏むことだけは絶対にしちゃいけない。常にそういう思いに苛まれる。しかも、SRT-10である。一瞬たりとも油断はできない…。
PTクルーザーあたりにも採用されているものと同じようなデザインキーとリモコンに一瞬ホッとさせられたが、実物と対峙するとボディのシルエットの抑揚に驚き、アイドリングの音量に完全にヤラれた。間違いなく爆音である。ランボやフェラーリと同じか、いやそれ以上か。そんな印象である。
だが、恐る恐る走り出したバイパーだが、意外にも乗りやすい。思わず「乗り心地がいいな」とつぶやいてしまったほどだ。クラッチの重さも常識的なレベルだし(ペダルの踏み込む量が多いが)、硬質なミッションに関しては、違和感どころか、節度感と剛性感が非常に高く、無駄なシフトを繰り返したくなるほど気持ちいい。
8.3リッターV10エンジンが生み出す強烈な低速トルクは、2000回転も回していればすべてがこと足りるから、さらにボディ両端の身切りが良くなっているからスーパースポーツとしては存外に運転しやすく、「不用意に踏むべからず」という戒めが段々と揺るんでくる。ブレーキが低温状態でもグッと効いてくれることも手伝って、見通しのよい直線でついにアクセルオン。
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