TEST RIDE

[試乗記]

今、もっとも人気上昇中のモデルにレーサーが試乗

ダッジ バイパー (DODGE VIPER) vol.2

走る喜びに満ちた抜群のモデルとは?

世界中の中古車の価格沸騰を目の当たりにして、アメ車の中で今もっとも注目度の高いホットモデルに試乗。 レーシングドライバーである古賀琢麻氏が旧バイパーSRT10とACRを同時に「公道」テストしたのである。

更新日:2015.12.03

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

中古車として価値が劇的向上中

 世界中の中古車の価格が高騰している。特に空冷ポルシェの人気ぶりは半端ではない。3、4年前までは200万円を切っていたモデルたちが、今や同じコンディションにもかかわらず700万円はザラである。

 一方で、フェラーリF355の人気が高まりつつあるという。MTモデルで8連スロットルを装備したレーシングエンジン搭載の非常に美しいデザインを有している90年代の名車である。

 これらに共通することは、決して「速さ」だけでの人気ではないということである。当然だが、速さでは最新モデルに敵うはずもなく、パワーや信頼性においてさえも及ばない。にもかかわらず、これだけの人気を博しているのはなぜか?

 おそらく、運転する喜びや醍醐味をダイレクトに味わえる稀有な存在、ということなのだろう。また2020年に開始される自動運転とやらに対する偽らざる気持ちの表れではないか。もしくはプリウスを代表する燃費競争マシンが今後一層増えてくることに対する事前の予防措置とか。

 プラスして世界中からMTモデルが続々と姿を消し、一部のモデルを除いてほとんどの車両がATのみになっていくことも、同様の危惧を助長しているはずである。

 「今のうちに手に入れておこう、そのうち買えなくなるし、買えてもとてつもなく高価なものになっているはず…」。そんな気持ちも重なって、日本からも優良なコンディションの中古車が続々と海外へ流失してしまっているのである。

 で、そんな中古車戦争が起こっているさなか、アメ車でもある特定の車両の争奪戦が起こっているという。それがバイパーである。具体的に言えば、現行モデルではなく旧SRT10およびACR。

 ACRにいたっては、彼の地米国でも羨望の的ということで超希少車の仲間入りを果たしたというから恐ろしい。現行ではチャレンジャーヘルキャットの初年度モデルが一時プレミア付きで爆発的な人気をもたらしていたが、それでも生産車両は1600台を超えていた。

 だが、ACRに至ってはその1/10もないから凄まじい。ちなみに、いまもしACRを所有しているなら絶対に手放さない方がいいだろう。10年後果たしていくらになっているか? 想像するだけでも鳥肌がたつはずである(笑)

ナスカードライバーでもあり、米国車開発のテスターをも務める古賀氏。プライベートでも仕事上でもかなりのシェビーフリークということだったが、実際に乗るとダッジバイパーにもいたく感心されていた模様。

HREを履いたグレーの2009年型SRT10。毒蛇の名にふさわしい、特有のスタイリングが旧モデルの特徴。エアロ等の装飾はまったく必要ない。

エンジンフードのエアインダクションやフロントフェンダーサイドのベンチレーション、さらにはサイドエキゾーストは、バイパーの造形美を語る上でも外せないポイントであろう。

公道で操る喜びがダイレクトに味わえるモデルたち

 ということで、2台のバイパーに試乗する。1台は2009年式のSRT10。HREのホイール以外はフルノーマル。一方もう1台が2010年型のACR。ちなみにこのACRとは、American Club Racer の略で、ノーマルのバイパーSRT10をベースに軽量化とエアロダイナミクスの向上、さらにレーシーなサスペンションを採用することで、SRT10の戦闘能力を一段と高めたスペシャルモデル。0〜96km/h加速は4秒以下、最高速は325km/hの実力を誇り、史上最速のバイパーとして認知されている。

 ACRは2007年のロサンゼルスオートショーで発表され2008年デビュー、その後毎年改良を加えながら2010年モデルまで存在。2010年モデルにおいてはショートストローク化されたシフトが採用され、リアウイングの設計見直しがなされたことで抜群の完成度を誇っている。

 このACRに搭載されるエンジンは、ストック同様の8.4リッターV10 OHVエンジン。スペックもストックモデルと同じ600hp、最大トルク560lb-ftを発生させる。

 つまりACRは、エンジンポテンシャル的なアップデートがほとんどない変わりに、エクステリアでのカーボン製フロントデュフューザー、カナード、GTウイング等でACRと分かるルックスを形成しており、さらに抜群のセンスを誇るボディカラー(ツートンカラー)でノーマルとの差別化を図っているのである。

 とはいえ、これらを装備したACRは、ノーマルモデルを遥かに凌駕するポテンシャルを発揮する。その一例が世界最高峰の難所を持つニュルブルクリンクサーキットでのラップタイム。

 2008年当時、シボレーコルベットC6 ZR-1が叩き出した7分26秒4を大幅に短縮した7分22秒1というラップタイムを記録し、ニュルブルクリンク市販車最速の称号を取得。さらに2010年モデルのバイパーSRT-10ACRにおいては、それまでの記録を10秒近く更新する7分12秒13を記録したのである(ラグナセカでも最速ラップ保持)。

 そんなスーパーマシンに、稀代のレーサー古賀琢麻氏が試乗した。以下、古賀氏のインプレである。

搭載されるエンジンは8.4リッターV10 OHV。600hp、最大トルク560lb-ftを発生させる化け物エンジン。ガソリンエンジン車史上最大の8.4リッターが生み出す豊潤な低速トルクは、2000回転も回していればすべてが事足りる。街中での柔軟性も確認済み。

ドライバー側に向けられている計7つのメーター類。タコメーターは7000回転まで目盛られ、速度メーターは220マイル(355km/h)まで刻まれている。エンジンは、赤いスターターボタンにより始動し、爆音の中まるで普通の乗用車を転がすかのごとく安易に発進することができる。

強大なパワーが伝わったとしてもビクともしない屈強なミッションは、剛性の塊のようでかつゲートが明確で操作しやすいので意識しないでもギアはガンガン吸い込まれていく。しかもシフトは速度を上げるほどシックリくる。

乗り心地も操縦性も普段使いが十分に可能

 まずはグレーのSRT10。この時代のバイパーはエンジンスタートがキーではなく、すでにプッシュボタン式。まるで「コックピット」のようなインテリアの中においては、戦闘機のミサイル発射ボタンのような雰囲気である。

 またABCペダルの距離間、そしてステアリングのタッチからして、クラッチもかなりヘビーなモノを想像していたが、びっくりするほど軽くて、ストロークが深い。ただ、1速に入れてからの動き出しは、めちゃくちゃ扱いやすい。

 僕はかつて、普段の足にカマロやコルベットZ06を使用していたし、今はC7に乗っているが、このバイパー、低速で街乗りしているだけならカマロよりも全然扱いやす。ただ、これは 2000回転ぐらいまでの話しであって、2500回転を超えて2速から3速にシフトアップした時点で、いきなりスイッチが入っちゃった感じで一気に豹変する。

 そしてそのまま3速、4速、5速とシフトアップしていくと、極太なトルクを感じながら、自分でもアドレナリンが分泌されるのが分かるぐらいの高揚感に満たされる。この加速感はホントにヤバイ。レーサーの僕をしてそう感じさせるのだから凄まじい。

 最初は、あまりの扱いやすさに正直「大したことないかも」と思っていたが、明らかに間違いだった。

 しかし、この加速感は危険を伴う感じではなく、極めてスムーズ。少なくとも直線加速においてはぜんぜん危険じゃない。けど、コイツを曲がりで使うには …。

 バイパーを語るとき、どうしてもエンジンばかりに目がいきがちだが、それ以外にも駆動系の作りがかなりシッカリしているし、足回りも、バンプを乗り越える際のサスペンションの動きのしなやかさが特筆モノ。今回の車両にはHREホイールが装着されていたことも見逃せないが、見た目以上に乗り心地がマイルドなのに驚いた。普段使いするならSRT10で十分である。

エクステリアではカーボン製フロントデュフューザー、カナード、GTウイング、リアバンパーデュフューザー等でACRと分かるルックスを形成している。さらに抜群のセンスを誇るツートンカラーのボディカラーを採用することでノーマルモデルとの差別化を図っているのである。

大型リアウイングが装着されているが、2010年モデルでは設計が見直されている。リア側から見た時の迫力も凄い。

2010年型はACRラストイヤーモデルということで、ステッカーが貼られている。最終出荷33台を示す1:33ステッカー。ちなみにこの車輌は17台目となる。

腕に自信のない方は乗らない方がいいかも

 一方でド派手なACR。リアウイングのデカさからしてタダモノではない雰囲気を発しているが、実際に走り出してからも、そのストイックな印象は変わらない。「これ、このままSCCAレースにエントリー出来きるわ」って思ったくらい。

 ミシュランのカップタイヤが装着されているというのもかなり大きく影響しているが、ハンドリングに遊びというか無駄な舵角がまたっくない。ちょっと大袈裟にいえば、「よそ見してたら、レーンチェンジしちゃった」ってくらいシビア。

 最初からセットされているKWのコイルオーバーとのマッチングが良く、サスのセッティングにかなり時間をかけているなあという印象。だからこそ、このサスのおかげで、高速からフロントダイブするようなハードブレーキング時でもフロントの荷重が抜けずに、タイヤのグリップレベルをドライバーが感じやすいセッティングになっている。

 ACRに乗って思ったが、バイパーは見た目の印象とかなり違って、実際にはコーナリングマシンである。特にACRはコーナーでの旋回スピードを保つというか高めるというか、そういったことを意識してセッティングされたクルマである。だからこそのニュルでのレコードタイムなのかも。

 基本コンセプトが「レーシングカー」なのだろう(だからこそのハンドリングであり空力なんだと)。ということでバイパーの発想とは、スポーツカーではなく、スーパーカーでもなく、「公道レーシングカー」なんだと思う。

 そういう意味だと、腕に自信のない方は、無理して乗らない方がいいかも(笑)。あまりのダイレクトなドライブフィールに、アクセルを踏み込むよりも恐怖心の方が先に出てしまい、十分に楽しめないと思うから。それにドライバーのミスにも忠実に反応してしまうしね。

 でも逆に、サーキットまではいかなくても、公道でレーシングフィールを味わいたいなら、バイパーACRは最高の1台だろうとも思う。

 余談だけど、バイパーをコルベットと比較される方もいるかもしれないが、この両者はまったく比較対象にならない。コルベットはロードカーを突き詰めて「速さ」を求めているクルマ。一方のバイパーは前述した通り公道レーシングカー。

 仮に同じ場所を走って似たようなタイムが出たとしても、両者のアプローチの仕方とフィーリングはまったく違うわけだから、比較すること自体にあまり意味がないのである。

エンジンは、ストック同様の8.4リッターV10 OHVエンジンを搭載するACR。スペックもストックモデルと同じく600hp、最大トルク560lb-ftを発生させる。

ブラックとレッドで統一されているボディ。全体のコーディネートを引き締めるホイールはSRT純正の軽量ホイール。レッドにペイントされていることが、より一層バイパーの性能を物語る。純正でミシュランのSタイヤが装着されている。グリップはかなり高いので結構ラフにアクセルを踏めるが、雨天時には気をつけたい。

インテリアの造形的には変わる所がないが、各部の意匠は若干変わっている。特にメーター周りはレッドの縁取りで飾られ、ステアリングやシフトノブもレッドのステッチが加えられ、ボディ全体とのコーディネートがなされているのである。



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>> ダッジ バイパー (DODGE VIPER) vol.1 を見る

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