2010年にリリースされたフォードF150 SVTラプターは、フォードのベストセラートラックたるF150をベースに、フォードの特殊車両開発チーム「SVT」(スペシャル・ヴィークル・チーム)が設計したオフロード向け(デザートレース)のスペシャルモデル。
SVTといえば、あのフォードシェルビーGT500を担当したチームでもあり、彼らの作るマシンのキレっぷりはアメ車界業界随一。
少なくとも、2010年当時の三大メーカーにおいて、彼らほどの腕利きはいなかったはずだ。デザイン、パフォーマンス、そしてドライバーの琴線に触れる感覚的性能は圧倒的であり、他の追随を許さいない。
余談だが、2010年当時といえば、GMは5thカマロのデビューでギリギリだったし、チャレンジャーにおいても6.4L 392デビューが精一杯だった。
だからこそ、500hpオーバーのシェルビーを作り、その上で400hpオーバーのピックアップトラックを作ったフォードは、他メーカーの脅威だったに違いない。
そんなラプターは、アメリカが誇るF-22戦闘機と同じ「RAPTOR」を名乗り、オフロードを高速で駆け抜けることを目的としたレーシングマシンであった。
厳密にいうと市販車は、あくまでも市販車ということでディチューンされてはいるのだが、ひと昔前のスカイランGTRのような存在といえばわかりやすいか。
GTRとは、スカイラインという単なる4ドアセダンをベースとした、サーキットにて常勝を目指した機能的なクルマ。一方でラプターは、単なるピックアップトラックをベースとした、オフロードで勝てるクルマを目指した機能的なトラック。
ということで、カタチや目指した場所は違えど、両車の「志」は同じと言っても過言ではない(レースフィールドを思わせるオーラがある)。そして実際に乗ってみて、改めてアメリカンピックアップトラックの奥深さを知るのであった。
ラプターは、ベースとなったF150トラックと比較すると、ブリスターフェンダーによって7インチのワイドボディとなっている他、サスペンションを全面的に変更し、アルミ製大型ロアアームを採用するなどしてロングトラベルのサスに改良。数値的にはフロント11.2インチ、リア12.1インチ拡大されている。
そのうえ名門フォックスレーシングのリザーバータンク付きショックアブソーバーを装着して、起伏の激しいオフロードを走破するためのストローク量拡大とバネ下重量の軽減を図っているのである(まさに本気の証)。
さらに地上高クリアランスも圧倒的であり、アプローチアングルは30度、デパーチャーアングルは22.7度といった数値を誇り、実戦的装備を備えているのが特徴である。
搭載されるエンジンは、2種類。デビュー当時は5.4リッターV8とオプションの6.2リッターV8と2種類のエンジンセレクトが可能だったが、2012年からは6.2リッターV8のみとなった。5.4リッターV8は320hp、6.2リッターV8は411hpを発生させ、ともに6速ATが組み合わされていたのである。
またボディ形状は、観音開きドアを備えた「スーパーキャブ」のみだったが、2011年からは、4ドアの「スーパークルー」が追加されている。
取材車は2011年車の4ドアスーパークルーであり、搭載エンジンは6.2リッターV8エンジンである。
ドアを開きシートに座った瞬間に目に入るセンターマーカー付きステアリングを見た瞬間から一種独特のムードに包まれる。シートは電動調整機能付きであり、ステアリングとシート位置を調整後にブレーキペダルの位置まで電動で調整可能であり(さすがレースカー)、足の短いアジア人にもまさにベストポジションが得られるようになっている。
その状態からの前方の見晴らしは、痛快のひとこと。左ハンドル仕様だからドライバーの右前への見切りがまったくわからない(笑)。ボディが大きすぎて、ブリスターフェンダーのせいもあるが、慣れるまでに若干の恐怖感が伴うのである。
だが走り出せばわかるが、一般道での走りは意外にも楽だった(笑)。なぜなら、車体の横幅の感覚がまさに一車線分まるまるだから、車線の左側ギリギリを走っていれば、とりあえず車線内に収まっていることがわかったからである(でもそのくらいデカイ感覚がある)。
ただこれまた乗ればわかるが、足回りのセッティングが抜群によく、車高等もノーマル状態であるにもかかわらず、ほとんどロールしないでコーナリングが完了できてしまい、なおかつ前後ピッチングもほとんどなく、ドライバーが感じるフルサイズピックアップトラックの動きではまったくないから、無駄な動きがないぶん、非常に走りやすい。
くわえて、路面からの衝撃を圧倒的なサスペンション力でいなしてしまい、ラプターはデカいアーム類で囲まれたアシを積極的に動かしながら走るから、ちょっとした凸凹なら飛び越えてしまうほどのクリアランスとバネ力によって、まさに無敵感覚に襲われる。めちゃくちゃ気持ちいい走行感覚なのである。
ボディの大きさやデザインも含め、すべてにおいて「迫力」という言葉で満たされるラプター。乗っているうちに、自分が強くなった気がするほどだから、その効果は圧倒的だ。
搭載エンジンの6.2リッターV8は411hpということで、パワー感は十分である。とはいえ車重も十分にあるから、マッスルカーのような速さはないが、ピックアップトラックであることを加味すれば、恐ろしく速いのは間違いない。しかも圧倒的なコーナリング性能を伴ってだ。
同時にV8サウンドが、マスタング譲りのように、たまらなくいいのが嬉しい。誰かが言っていたが、「SVTの作るクルマにハズレなし」とはまさに名言であり、走れるクルマが欲しいオーナーには、きっと満足してもらえるに違いない。
なお、海辺をゆったり走りたいからとピックアップトラックを求めるなら、ラプター以外の選択肢をオススメする(笑)。
それにしてもアメリカのピックアップトラックは面白い。いまだ質実剛健を目指した旧テイストのピックアップがあるかと思えば、トラックのカタチをしているのに乗用車的なフィールを目指したものがあったり、一方でひと昔前にはキャデラックやリンカーンといった高級ブランドメーカーのトラックバージョンがあったり、わざわざ砂漠を走るためのスポーツトラックがあったりと…、まさに百花繚乱。
ラプターはこうしたトラック文化から生まれてきた生粋のレーシングマシンなのである。
ちなみに次期型ラプターがもうじき登場するが、搭載エンジンは3.5リッターV6のエコブーストターボである。しかも10速ATとも言われている。もちろん、最新のハイテクマシンが好みって方がいるのも承知だし、「最新こそ最高」との考えも嫌いじゃない。
だが、この旧V8搭載マシンに乗ればわかるが、これでも十分に速いし楽しいし、V8の程度良好なタマが手に入るうちはまだまだ旧ラプター押しを続けたいと筆者は考える。
実際に中古車市場では、この旧V8搭載のラプターが人気高であり、アメリカ全土でも中古車の価格がかなり高騰しているというから驚きであるが、ラプターの価値が知れ渡っている証拠でもあるのだろう。
なお、フォード車の新車販売に定評のあるBCDだが、そうした新車販売とは別に中古車に関しても確実な実績がある。とくに今回のような少数派のハイパフォーマンスモデルにおいては、常にアンテナを張り巡らせており、状態のいい個体を積極的に集めている。
そもそもラプターにおいては、新車時から販売しておりクルマの素性をシッカリと把握しているだけに、中古車の直輸入においても状態の見極めが徹底されているから安心感が高いのである。
ラプターは、歴史に残る超ハイパフォーマンスマシンだけに、フォード車を知るアフターフォローが利いたショップでの購入がキモとなるのである。
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