1994年型フォードブロンコは、歴代ブロンコの中で第5世代目のモデルとなる。1987年~1991年型までの第4世代、そして1992年~1996年型の第5世代となり、この第5世代をもってブロンコの歴史は幕を閉じた。
ブロンコのベースとなっているモデルは、ピックアップトラックとして世界一の販売台数を誇っていたフォードFシリーズ。F系トラックの荷台にシェルを付けたような感じの2ドアSUVだ。だから、今見ても非常にスタイリッシュで雰囲気がある。90年代当時にタホに2ドアモデルがあったが、そのフォード版とでもいえばわかりやすいかもしれない。
搭載されるエンジンは、5リッターV8。そして5.8リッターV8の二種類。この車両に搭載されているのは5.8リッターV8であり、200hp、最大トルク300lb-ftを発生させる。そして4速ATと組み合わされる。
このエンジンは、基本的には旧アメリカンなタイプのエンジンであり、高回転域での使用はまったく考えられておらず、ひたすら低速域での分厚いトルク感が身上のアメリカンV8である。
取材車両は、2015年に当時熊本のショップで購入されたオーナーさんがエイブルに持ち込み、その後整備等をずっとエイブルが担当してきた車両であり、それから二度の車検や定期点検&タイヤ交換等を行ってきたという。
エイブルにしてみれば、自社で販売した車両ではないが、その後約3年半にわたり車両の整備に関わってきただけに、車両コンディションについて把握している車両と言っても過言ではない。で、昨年オーナーさんが手放すということでエイブルが買い取り、各種整備や調整を行い、現在に至る。
聞けば「大きな修理としてはエアコンですね。昨年の猛暑でエアコンがパンクしまして、それを全部直し、クリアにしました。それ以外は非常によく出来た車両ですねので、手放すときは『ウチに』と弊社で買い取りをいたしました」とエイブル代表の原社長。
この車両は、走行距離が約13万600キロと距離だけ聞けば「結構走っているね」と思うかもしれない。筆者もそうだった。だが、昨秋にエアコンを直し、それからもちょくちょく走っているということで、長年中古車置き場に埋もれていた車両をオコしたものではまったくない。クルマは置きっぱなしよりも走らせていたほうが調子がいいに決まっているのだ。
で、社外品のショックにリフトアップ、さらにオーバーフェンダーにて足回りのセッティングが施されており、ショックはツインショックになっていて、想像以上にシッカリ作られている。エイブルの原さんが買い取したのも、こういった細かい箇所をチェックしてのことだろう。
それに、年式よる中古車として劣化はもちろんあるし、細かい小キズもまったくないとはいわないが、室内のシートや天井や荷台のライニング等は非常にクリーンで生きており、こういう部分に中古車の「負」の部分が反映されることが多いだけに、この車両は距離の割には大切かつ丁寧に扱われてきた感を覚えるのである。
それにしても、フルサイズSUVとしては珍しい2ドアモデルだけに、ボディデザインには古き良きアメリカ的な濃度が充満しているといっていい。リアドアの「FORD」のロゴも抜群な雰囲気を醸し出すし、90年代とはいえ、最新車両のデザインにはまったく皆無の角張ったスタイルがオーナーの所有欲を満たすはずである。
また、デザインだけでなく、「ガチャッ」と閉まる硬質なフレームボディや重いドアにもアメリカが詰まっていると思う。
この車両、リフトアップされているだけに、いちいち乗り降りがめんどくさい(笑)。だが、そのリフトアップの見晴らしの良さが、街中を走ったときにまた別の思いを起こさせる。なぜか強くなった気がするのは気のせいか。「なんならぶつけてやろうか(笑)」。そんな思いをさせるのも、フルサイズの大きさと見晴らしの良さに伴う強くなった気がもたらす現象か。
実際にシートに座りドライブすると、最初は大きさに若干戸惑うが、すぐに慣れるし、狭い街中でも2ドアだけに曲がりの内輪差等を気にする必要もほとんどなく、慣れれば結構普通に走らせることが可能である。しかもサイドミラーがSUVだけに大きく視認性も良いために、最新のチャレンジャーやマスタングの方が余程視界の狭さにて苦労するのではないだろうかと思うほどである。
足回りも、ブレーキは想像以上によく効き、ハンドリングは、これまた想像以上に若干デッドな部分が少ないステアリング反応であり、コーナリング時は社外のショックによる制御が効いているのか、ロールは非常に少なく、安定性を欠くことはほとんどない。
とはいえ、原氏が言っていたが、「カッコ重視」を優先したこともあるのか、もともと装着されているタイヤサイズが大きいことから、エンジンパワーを殺してしまっている部分もあり、出足の加速で若干物足りなさを感じることがあるかもしれない(嫌ならタイヤサイズを下げればかなり変わるらしい)。
だが、一度加速してしまえば、独特のビートを刻むV8サウンドが楽しめるし、まったく普通に走るだけに、気にならなければ今の仕様でも十分に面白いと思う。
ブロンコは小刻みに世代交代をしているが、今回取材している第5世代とその前の第4世代とでは中身はほとんど同じであり、1980~1986年型の第3世代と比較してもガワは変わっているが、中身はそう大きくは変わっていない。
だから、古さを感じさせるのだろうが、逆に1994年といった年式でも70~80年代の「味わい」のようなものが体感できる。だからあえてその味わいが欲しいと思うのならば、90年代のブロンコに乗ってみるのも良いのではないだろうか。
しかも、この年代のブロンコも、見た目のスタイルからしてアウトドア風な風情であり、現代の街中SUV=CUVというジャンルのクルマたちとは全く異なる、「ザ・アウトドア」的な存在だから、自分自身のライフスタイルを演出するために欠かせないアイテムともなりうるはずである。
とはいえ、ひとつ理解していて欲しい部分もある。たとえば、この車両が150万円としよう。で、この車両価格で購入したからといって、「まったく壊れない」というようなことは絶対にないということである(絶対に壊れるとも言えないが)。
ここ最近、編集部にもかなりの問い合わせがあるのだが、ちょっと大袈裟な感じでいえば、「いくらで購入したって、中古車には中古車なりのリスクがある」ということである。かりに300万円で購入したって、購入の翌日にエンコすることだってあるのが、中古車である。確実に壊れるということではなく、そういう可能性を秘めているということである。
しかも、アメ車販売のプロであっても、車両の中身を100%見抜き、管理し、整備することは無理である。
だから大切なのは、何か起こったときに「どうするか、どうしてくれるか」であり、その部分でエイブルさんの車両は信頼に値すると筆者は思っているのである。
このブロンコが壊れやすいということでは全くないのだが、「完璧なモノが買える、しかも国産トヨタ車並みの安定性で」と思われているなら、日本全土にある中古外車自体の存在がなくなるはずである。
で、そうした認識のもと、エイブルにていろいろ確認すれば、購入前の覚悟や購入後の対応等をすべてクリアにしてくれるし、すべてを承知の上でブロンコとの楽しいアメ車ライフが送れるはずである。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES