TEST RIDE

[試乗記]

古典的な風味が味わえる絶品セダン

2006 マーキュリー グランドマーキー

知る人ぞ知る的なマイナーセダンをエイブルで発見

昔、何度も乗っていただけに、今、このレベルの個体が現れたことに驚く。マイナーなアメ車だが、絶品セダン。その名もグランドマーキーに試乗した。

更新日:2020.05.29

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 0448571836 [ホームページ] [詳細情報]

超マイナーアメ車だが、絶品セダン

 懐かしのマーキュリーグランドマーキー。この年代の車両は、雑誌編集者時代に近鉄モータースで正規輸入されており、広報車を借りた経験が多々ある。

 実際、他ブランドの最新車や国産広報車が借りられるなか、当時われわれ編集部は積極的にグランドマーキーを借り出していた。一体なぜか。

 それは素晴らしく快適でドライブしていてめちゃくちゃ心地良かったから。

 2006年と言えば、一部のアメ車は欧州車指向を強めており、たとえばクライスラー300CやキャデラックSTS、コルベットC6といった改革途上のアメ車たちが次々と発表されていた時期であり、一部のアメ車ファン以外の方々にも「これなら乗れる」と、アメ車が一般的にも認められ始めた時代だった。

 要するに、ボディと足とハンドリングがシッカリしたという評価なのだが、一方でそれは、それ以前のアメ車の個性をうち消してしまっていた。いわゆる「ふわふわした乗り心地」である。

 個人的にもその「ふわふわした乗り心地」というのは大嫌いであり、90年代のアメ車の「ふわふわ」は正直体にまったく合わなかった。

フォードとリンカーンの中間ブランドとして誕生したマーキュリー。そのマーキュリーのトップセダンがグランドマーキーだった。取材個体は2003年から2010年まで存在した4代目モデルの2006年車。地味な見かけだが、乗れば驚きのフィールを醸し出す。

見た目の印象としては、フルサイズではあるが、今の時代だとそれほどの大きさは感じない。くわえて派手なデザインでもない。それでも大型セダンとしての乗員の快適性は格段に高い。

フォード系セダンにハズレなし

 だが。グランドマーキーは、ふわふわしているのに一本筋の通ったコシがある。すなわちサスペンション制御が非常に巧みだった。

 もちろん速度域のレベルによって感じ方は異なるが、それでもわれわれが日常的に使用する50から100キロ程度での走りなら、快適さと柔らかさとコシの強さが共存しており、ちょっと大げさにいえば、その当時の理想とするアメ車の姿が感じられたのである。

 その頃の合言葉が「フォード系セダンにハズレなし」。あくまで超個人的な印象だったが、当時のリンカーンタウンカーもずば抜けて素晴らしかったし、クラウンビクトリアだって運転して心地よかった。もちろん、このグランドマーキーも。

 理想の姿なのだからこのままで、モデルチェンジする必要すら感じなかったのだが、それと「売れる売れない」は関係なかった…。

 はっきり言えばマニアックな好みであり、当時のブームは「ドイツ車的アメ車」であったから、残念ながらその当時のグランドマーキーには将来性がなかったのである。

 ということで今回、偶然にもその当時のグランドマーキーということで驚いた。しかも2006年型の約4.4万キロ走行車。すでに14年前の車両であるが、走行距離の少なさと程度の良さが際立っている。

搭載されるエンジンは4.6リッターV8。このエンジンは低速域から十分なトルクを発生させ、過不足なく大きいボディを走らせる。日本の交通事情だと、一般道の40~60キロ程度の速度域くらいがこれまた絶品。オルタネーターが新品に交換されている。

超シンプルなインテリア。ウッドとレザーを使用しているにもかかわらず派手にデコレーションされていないのも当時のアメ車らしくて素敵。社外のナビが今風なのはご愛嬌。ナビはあっても困らない。

シンプルだがフォントが大きく視認性が良いアナログメーター。高級セダンらしさはないが、実用性に長けているのがこの年代のポイントである。

運転席からの視界が良いからフルサイズセダンと言えども街中走行でも臆することなく使用できる。街中をたらたら走っていても気持ち良い。

懐かしベンチシート&コラムシフト

 超久しぶりに見たグランドマーキーは、フルサイズであるが今の時代で見ればそれほどの大きさは感じさせない。

 ちなみに、ボディデザインはまったく垢抜けていない(笑)。超地味。

 くわえて乗っても大きさを感じさせず、相変わらずシートとステアリングの調整もずば抜けて良好で、座った瞬間に当時を思い出した。

 もう少し言えば、着座位置とダッシュボードとボンネットフードの高さの位置決めが適切で、視界がいいから動かしやすく、動かしやすいからアメ車といえども安楽に運転できる。

 今は懐かしの4速コラムにベンチシートの組み合わせが本当に快適であり、この具合の良さが今の時代に味わえることに感動を覚える。

 室内は、ウッドとレザーを使った超シンプルな内装。そしてふかふかのシートタッチに、走り出した瞬間のふわふわした乗り心地に、スローだが思った通りの切れを体現するステアリングレシオに、最近のアメ車にはない驚きの心地良さが隠されており、今の時代だからこそ超新鮮である。

 それいでいて、ちょっとした段差やコーナーでは不快なロールやピッチングを感じさせずに粘り、ブレーキもちょっと硬い感じを残しつつもシッカリ効くレベルのものなので、「この時代のアメ車いいじゃん」と再び当時の感動が蘇った。

 搭載されるエンジンは、4.6リッターV8。230hp程度のパワーだが低速域から十分なトルクを発生させ、これまた昔馴染みの4速ATがいい味を醸し出している。

 決して速いわけではないが遅いわけでもないし、パワフルでもないが、なぜだか不足も感じないから、ちょうどいい塩梅。くわえてV8だからフィールは良好なので、満足度は極めて高い。

4速のコラムシフト。この時代、一度シフトを「D」レンジに入れてしまえば、止まるまでシフト操作はいらない。同時に足元やセンターコンソール付近がやたら広いのもこのおかげ。

シートには若干使用感が出ているものの、大きなヤレがないのがこの個体の特徴。またベンチシートだから前3人乗車。

リアの足元スペースも驚くほど広い。リアもフロント同様に3人乗車。合計6人乗車のフルサイズセダンとなる。

現代の交通事情に難なく対応可能

 それいでいて2006年当時の車両であるわけだから、旧車っぽさ(整備的な不安)があるわけではないので、車両の扱い方に慣れてさえしまえば、現代の交通事情にも十分に対応する性能は持っている。

 世間一般的には今の時代、「SUV一辺倒」と言われているが、あえてまだこうした旧タイプのアメ車セダンに興味があるなら、オススメのマシンと言ってもいいかもしれない。

 シートやシフトといったオーナーさんが触れていた部分には、若干のヤレがあったものの、また大型モニターのナビがセンターコンソールに装備されてはいるものの、それ以外はフルノーマルであるのも嬉しい。また中古車の確認に必要な、エンジンやミッション、ボディといった中心部分に大きな弱点がないのがオススメできる理由である。

 取材したエイブルでは、現時点でも90年代後半のカプリスセダンやビュイックロードマスオーナーさんが出入りしているし、そうした年代のセダンやワゴンが欲しい方には、頼りになるショップであるということも付け加えておこう。

 この車両が、もしも高年式のアメ車たちに囲まれて展示されていたならば、あまりオススメする気にはならないが、エイブルのような80年、90年、2000年代のアメ車が販売の中心、もしくは車両整備を行っているショップだからこその車両と言ってもいいだけに、興味がある方は実車を見てみることをオススメする。

2006年型のオーナー下取り車で約4.4万キロ走行車。室内に社外のナビが装着されている以外はフルノーマル。恐くこんな程度の車両は今後見つからないだろう。

ザ・セダン的な恐ろしいほど大きいトランクルーム。屈めば大人二人が余裕で入る。今の時代にこれほど大きなトランクを有するセダンはない。

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